【ウマ娘怪文書】当時の友達が教えてくれた　すごいすごいって大騒ぎしていた　三冠を達成するかもしれないすごいウマ娘がいるって　アグネスタキオンって言うんだって　正直誰だと思った

当時の友達が教えてくれた どこにでもいるでしょ情報屋みたいな友達が……その彼女がすごいすごいって大騒ぎしていた
三冠を達成するかもしれないすごいウマ娘がいるって
アグネスタキオンって言うんだって
正直誰だと思った だって知らないよ北海道の田舎育ちだから 私は契約していないからグリーンチャンネル見れなかったしメインレース以外の時間は寝てたから だいたいおかしいじゃんタキオンってカタカナだし
すぐにグリーンチャンネルを見た タキオン様がゲートから出て走る姿を見てこんなウマ娘がいるのかってビックリした
あんなに足が細いのに誰よりも強い 誰よりも飛ばすし誰よりも速い

まさに、光だった

そんなときタキオン様が来た
あれは私がトレセン学園に入った最初の年
2000年12月23日 千葉の中山レース場 タキオン様が重賞に出ると聞いて同室の先輩に3000円借りて友だちと3人で行った
まずパドックで見てぶったまげた
オーラすげぇなぁ
レース中 すごい瞬発力でインを突きながらそのままビューンって差し切っのも見た レースが終わってファンに追い掛けられたのも見た ファンがステージに登っていってタキオン様のところへ行ったらタキオン様がピューンって逃げた それもビックリするほど速かった
翌年の弥生賞も見た
私はちょうどゴール前の正面の指定席に座っていた タキオン様が勝った
2着はボーンキング 3着はミスキャストってウマ娘だったらしい
でも2〜3着が誰かなんて関係なかった タキオン様は細い体をゴムみたいにしならせて 大差で1着でゴールした
タキオン様は私にとっての宇宙じゃなかった

もっと もっと近くに見えた 光だった

そのときが来た ついに会ってしまうのか
これが皐月賞で来るのかと思った
よっしゃあという感じじゃない これはもうやるしかないんだという想像しただけで吐きそうなほどの緊張感 何しろただの一度も面識はないのにいきなりの同じレースで走るライバルだ
最初に会ったのは控え室になっていた中山レース場のエレベーターだった 初めてのG1のリハーサルに行こうとエレベーターを待っていた そのときエレベーターから何人かのウマ娘が降りてきた 
そのとき あれっ誰がいるんだ という強烈なオーラを発する人がいた
タキオン様だ

ボーって頭が真っ白になった こういうとき、ウマ娘の頭ってポーンとどっかに飛んでいくんだということを知った ふと我に返って、オイ 私は何をしなきゃいけないんだと考えた そうだ挨拶しないといけない
「はじめましてタキオンさん 今日同じレースに出る〇〇です よろしくお願いします」
そうしたらタキオン様がこう言った
「あーっ〇〇君だね」
その先のことはもう 何も覚えてない もっと真っ白になった
ミーティングではトレーナーが何かしゃべってたけど何も聞こえてこなかった トレーナーには申し訳ないけどでも仕方がない 一番前に座っていたタキオン様のことが気になってしょうがなかった
タキオン様からいきなり名前を呼ばれてしまったのだから天にも昇る気持ちだった

また本格的にレースで走ってみようと思わせてくれたのはやっぱりタキオン様でした タキオン様は皐月賞の後で引退してから学園の自分の部屋で研究をしていたんですがタキオン様のトレーナーさんが「来てみる？」と声をかけてくれたんです その頃は杖無しじゃ歩けない状態だったので悩みましたがとにかくタキオン様に会いたいという気持ちが強くて思い切ってタキオン様の部屋に向かいました 無事に部屋の前まで来て「あっ行けたわ！」って感じでした
研究に参加させてもらう前からちょっとずつはリハビリみたいなことができるようにはなっていたけどまだ本格的なトレーニングをするのはちょっとキツい感じでした まだ体は痩せていたし研究に参加するというよりタキオン様に会いに行ったというのが正直なところです

 ただそれ以上に、タキオン様の表情を見ただけでホッとして私はワンワン泣いていました タキオン様はメスみたいな表情をする時もあるんですがその時の笑顔は本当に凛々しくて私を包み込んでくれているように感じられたしすごく気持ち良かったのを覚えています とにかくタキオン様の笑顔が天使のように見えましたね 感情が一気に込み上げてしまいました 感情が一気に込み上げてしまいました
ただあれだけレースを愛しているだろうタキオン様の前で「レースを引退しました」なんて言えなかったし言いたくもなかったんです でもそんな思いを突き抜けて、G1ウマ娘ではなくひとりのウマ娘として会いに行けたことがすごく良かったです タキオン様はまだ普通にトレーニングできそうにない私を快く「一緒に研究しようよ」と受け入れてくれたんです

それもすごくうれしかったですね 私も「タキオン様…私をめちゃくちゃにして…」っていう感じで 気持ち良く一緒に研究させてもらいました。
研究中もずっとタキオン様に感動させられっぱなしでした 一緒に実験をすれば「相変わらずタキオン様のオーラはすげぇな」と思っていましたしトレーナーさんを発光させるのを見ていても「やっぱりこの人はすげえや」と唸っていました
そんなタキオン様の姿を目の当たりにしてデビュー前に感じていたことを思い出していました 「この人のおかげで私はレースが心底好きになりG1ウマ娘になれたんだ」と レースをやめてからはもうタキオン様に会うことはないだろうと思っていたので改めて一緒の時間を過ごし、「また走りたい」と思えるようになっていました

怖いねぇ…

なんでこんな子を部屋に連れてきたんだい…？

怖いねぇ…

12月頃ならメジロベイリー君とかポッケ君とかテイオー君とかにも注目して欲しかったねぇ…

同期のライバルにこれくらいの強火ウマがいてもおかしくない
タキオンのヤツターフに消えない幻を残しやがってよ…