【ウマ娘怪文書】重賞を制し、センターでライブを踊りきったライスを褒めてあげたい気持ちは十二分にある。けれども、今の彼女は危険だ

重賞を制し、センターでライブを踊りきったライスを褒めてあげたい気持ちは十二分にある。
けれども、今の彼女は危険だ。レースの熱とファンの声援と照明とステージの高揚感でほかほかに温められたライスは、妖艶な目をしながら僕に小さな足を愛くるしく動かしながら駆け寄ってきた。
「お兄様、ライスお兄様のために歌ったよ。見てくれた？」
「うん……」
僕のお腹に両手を添えて身体を預けてくる勝負服の彼女に、抱きしめ返すことを躊躇った両の手が宙を泳ぐ。不思議がって見上げてくる彼女の瞳には、艶やかな色香が漂っていた。
「お兄様…いつもみたいに抱きしめてくれないの？ライス何か悪いことしちゃったかな…」

すぐそうやって自罰的になる彼女の潤んだ瞳に負けた。意を決して彼女の小さな体躯を抱きしめると、ふわっと甘い匂いが漂ってきた。僕は必死にふつふつと湧き上がってくる煩悩を抑えようと、昨日見た鍋のレシピを暗唱する。
耐えてくれ僕の身体。ライスの信頼を裏切ってはいけない。自信を持てない彼女がやっと心を開いてくれたんだ、僕を信頼してくれたんだ。
それなのに。僕が彼女を異性として見ていると知られたら失望させてしまう。再び自信を失ってしまうかもしれない。
十分な時間は過ぎただろう。意を決してライスの肩を掴むと、そろそろ着替えておいでと解散を切り出した。ライスは名残惜しそうに僕の指を引きながらも、また後でと言いながら更衣室に向かってくれた。

小さな身体から溢れる色香に加え、彼女の僕への好意やスキンシップの多さから、僕はもう限界だった。
かつては何をするにも遠慮がちでおどおどしていた彼女も、今は僕を堕とす小悪魔のように抱きついたり、キスしてきたり、時には布団に忍び込んできたこともあった。
異性としてではなく、まるで僕を親兄弟のように慕ってくれているのは嬉しいことではあるし、かつての彼女がここまで明るく育ってくれたことも喜ばしいことなのだが……。
だからこそ、そんな積み上げたものが失望され失われることに恐怖を抱くようになった。そんな僕が藁にもすがる思いで頼ったのがこの『煩悩退散香炉』！

umazonでおすすめされたこちらは一見ただの香炉だが、レビューに書かれたトレーナーたちの書き込みに期待が膨らみ思わず購入した。
星5 おかげで担当の誘惑に打ち勝てました（トレーナー）
星5 担当への気持ちを必死に抑えていた生活とはおさらばです！本当にありがとうございます！（トレーナー）
星1 すぐ壊れる（トレーナー）
やはりその手のものとしては有名なのか、届いたそれを預かってくれたたづなさんは僕が受け取りに来ると「あー…」といったような冷たい目をしていた。

その日もトレーニング後のライスが、体操着姿で僕に近づいてきた。僕は慌てて待ったをかけると、急いでトレーナー室に戻り、仮眠室を締め切って香炉を用意する。
中に付属の香炉灰を敷いて専用の線香を立てて火をつける。そして火を消して煙を燻らせると、鼻から突き抜ける落ち着く香り。
その後すぐにライスの元に戻ると、「さあおいで！」と全力で彼女を抱きしめてあげた。こんなに彼女が近くにいるのにちっともやましい気持ちが起きない。
「お兄様、不思議な香りがする。お線香みたい」
抱きついたライスがぐにぐにと体操着のゼッケン部分を僕に押し付けて匂いを堪能している。きっと娘を持つ父親はこんな気分なのだろうな、と僕は彼女を更に強く抱きしめる。
ライスが首筋にかぷりと甘く歯を立てる。子供らしい甘え方につい頬が緩む。きっと今までの僕ならこれで大慌てだっただろう。
「ライスくすぐったいよ」
「あれ？」
戸惑うライスを下ろすと、着替えてくるよう促す。とぼとぼと歩いて行くその背中を見送りながら、僕は香炉の効果を実感していた。

それからというもの、僕とライスのコミュニケーションは順調であった。ライスが抱きついてきても、キスしても、彼女に手を取られてうっかり胸を触ってしまっても問題ない。
その度に急いでトレーナー室に戻り煙を燻らせるのは手間だが、おかげで煩悩を一切抱かずライスを高い高いも出来た。
しかし日に日にライスのスキンシップはエスカレートしていく。先日はうっかり着替え中の半裸に近い姿の彼女がトレーナー室に入ってきてしまうトラブルもあった。香炉がなければどうにかなっていたかもしれない……。
そんなある日、トレーニング後の汗ばんだ体操着姿のライスが、トレーナー室の入り口に陣取っているという危機が訪れていた。
瓦割りをさせた後着替えてくるよう指示をして分かれたはずだが、彼女は着替えもしないで部屋にやってきて、何か言いたげだという顔をしている。一体何だ！？
もしやトレーニング後のスキンシップをしなかったことだろうか。そして今それをやりに来たのだろうか。非常にまずい、僕好みの体操着姿でトレーニング後の火照った彼女を前に冷静でいられる自信がない！

慌てて仮眠室に逃げ込むと香炉に火をつけようとするが……香炉は無惨に叩き割られていた。粉々に粉砕された香炉から灰が床に漏れ出て、灰には線香代わりに短剣が突き刺さっている。
一体誰がこんな……。その場に崩れ落ちると、背後でノックの音。
「お兄様？どうかしたの？入って良い？」
鍵はかけてはいないが、ライスは僕に気遣ってくれて扉越しに話しかけてくれている。
「もしかして……ライス嫌いになっちゃったのかな……ライスがだめな子だから？」
消え入りそうな声に、膝を押して立ち上がる。何をやっているんだ僕は、香炉のためにライスを置き去りになんかしちゃだめじゃないか、一番大事なのはライスだというのに。
果たして扉を開ければそこには、燃えるような青い瞳を宿したライスがこちらを待っていて、するりと中に入ってきて素早く僕を抱きかかえ、背後のベッドに押し倒した。
僕はと言うと、脳に直接作用する彼女の色香にやられ、満足な抵抗も出来ないまま……。

「それでね、お兄様……お兄様？」
僕の手を引くライスが不思議そうな顔をする。いつの間にか立ち止まってしまったようだ。視線に段ボールを運ぶどこかのトレーナーの姿が見えたから。
彼はかつての僕と同じように、umazonの箱、おそらく香炉だろう。それを持って期待に胸を膨らませるように歩いている。それを見て僕はこれからの彼の未来を案じ、ああ……とため息に似た言葉を漏らした。
何かを力で押さえれば、それはまた更に強い力によって解き放たれる。大切なのは抑えることではなく向き合うことだった。ライスはそれを僕に教えてくれた。
しゅるりとライスの尻尾が僕の腕に絡みつく。見れば、彼女は恥ずかしそうに頬を染めて俯いていた。

香炉を使ってるからといってナチュラルに抱いたらダメだよ！！

クソボケが過ぎない？

しかしねぇ…私はライスのお兄様なのだから…

一体何者なんだ短剣を香炉に突き刺したウマ娘は…

たづなさんはわかってる顔だよね？

ライスから見ればお兄様が毎回ダッシュでどっかいって線香のにおいさせて帰ってきてるんだからいつかたどり着くよ

すぐ壊れるってそういうことかよ！！

もうちょいこのお兄様は色々疑問もってほしい
半裸でトレーナー室に入ってくるトラブルなんかないよ

女性として魅力があるのは分かるけどやっぱ庇護欲が上回る時が多い
シコった時の罪悪感はやっぱあるし

流石謝りながらも逆ぴょいやめないだろうステークス一番人気…

香炉から家系の臭いがする！

これは現実でもだけどレビューって買った直後のテンションで見た目きれい！とか書いてるからあんま意味ないんだよな
使用数ヵ月とかで書いてくれたら

他に煙をたくスペースなかったのかはしらんがよりにもよって仮眠室でやらなくとも…

まあ…担当に溢れる出るリビドーを抑えたいトレーナーは多いからな…

なんですか
じゃあ担当に手を出せって言うんですか

煩悩退散って触れ込みで催淫効果があるパターンかと思った

最近お兄様が誘惑されないと思って調べたら香炉が鎮座してた時のライスの心境は？

香炉を買った時点で担当に負ける一歩手前と言ってるようなものだからな
そりゃ経験者や事情通からは次の犠牲者を見るような目で見られる

そもそもそんな物を買った時点で好きって言ってるようなもんだからな

星1 絶対に買ってはいけません！担当に怒られます！

お香としての効果は本物なのに…

どっちの意味で怒られるのか分からないのが恐い…

効果自体はちゃんとあるのが面白いな

効果があるからこそハグしたりキスをしてもいいのだ

そのうちこれの存在が多くのウマ娘に知られたら反対運動起きて販売中止になるよ

ライスの差しを甘く見たな

トレーナーが一生懸命耐えようとしてるのをあなたそれ無駄だからやめた方がいいですよって言えるか？
既にルビコン川は越えているのだから末路は決まっていても送り出すしかないだろ…

キスしても胸押し付けたり触らせたり半裸でラッキースケベしたりベッドに潜り込んでもライスはかわいい娘だよ！って扱ってくるクソボケだから悪いところない？

ただ最後にお兄様が気付いたみたいに
担当ウマ娘との関係を買ってきた道具に逃げるようになれば相手を傷つけるだけなので大事なのは向き合うことなんだよね