彼女に惚れ込み、輝きを追い求め、ついには世界を制覇する夢まで見せてくれた。ただの押しの弱いトレーナーが、シリウスシンボリのトレーナーになれた。
だから、何か彼女に恩を返したい。そう思い至るのはとても自然なことだろう。
それでいて、出来れば何かサプライズも加えたい。そう思ってしまうのも仕方のないことだろう。シリウスの喜ぶ顔と驚く顔が見たいのだ。
しかしいざ計画を考えてみると中々に難しい。彼女が喜びそうなプレゼント、そしてサプライズ。ベタなところで言うと高級レストランへの招待なんてプランが浮かんだりするが、俺が調べて思い付くような場所はシリウスならとうに知り尽くしていても不思議ではない。サプライズ演出の筈が気付いたらシリウスにエスコートされていた、なんて未来も有り得る。
悩ましい。実に悩ましい問題に云々と唸っていると──「我が校の誇るトレーナーの眉間に深い皺とは。穏やかではないな」
トレセンのカフェテリアでタブレットを前に悩んでいたのが目立ってしまったのか。シンボリルドルフに声をかけられた。
「何っ!? まさか遠征のダメージが!?」さらにルドルフの背後からヒョコりと小さな影が二つ。理事長と佐岳さんだ。俺は一つ苦笑して、大した問題じゃないと告げた。
「いやいや、そういう大それた問題じゃないというか……俺の個人的な話ですよ。そうだ、何かオススメのレストランがあれば教えてもらえませんか? 雰囲気のあるところを探していて」
「……ほう?」「……ああ。もしかして、君は……!」
シンボリルドルフが目を細めた。佐岳さんも遅れて頬を朱に染めて口に手を当てた。理事長は首を傾げている。
察しの良いシンボリルドルフのことだ。もしかしたら声をかける前から俺の悩みにも気付いていたのかもしれない。俺の手元のタブレットにはいくつかピックアップした高級レストランのデータが映っている。
「はい。シリウスに想いを告げようと思っています」
今までの感謝と、これからも宜しくという想いを──と。
この場にシリウスがいないのが救いだ。こういうのは気恥ずかしく、照れが出てしまう。俺はじっとしていられなくて、目線を逸らして頭をかきながら彼女達に助力を乞うた。
俺とシリウスは、とあるホテルのレストランに来ていた。「……それにしても、アンタがこの店に誘うとはな。どんな魔法を使った?」
「色んな人に協力してもらって」
通常ならば半年以上は予約で待つ、との評判の店。さらに最も夜景が楽しめるベストポジションの席。佐岳さんたちが手回しをしてくれたらしく特別に席を用意してくれたのだ。いくら頭を下げても下げきれない。
運ばれてきた料理の数々も流石の値段なだけあった舌鼓を打つばかり。シリウスの手で舌が肥えていなかったら驚きばかりでみっともない姿を見せてしまったに違いない。
「それで──わざわざ私にこの服を着せたんだ。食事を楽しんで終わり、じゃないだろうな?」
「ああ。今日のこと──いや、俺たちの今後を考えたらそれ以上のドレスコードは無いと思って」
シリウスが着ている服は深緑の勝負服。これからも宜しく頼むという気持ちを伝えるのに、それ以上の服はないと思った。
「これからも、俺と一緒に歩んで──いや、その後をついて行かせてほしい」
彼女に小箱を差し出して、開いて見せるはダイヤモンドの指輪。これはシンボリルドルフからのアドバイスで用意したもの。
レストランを抑えられたので後はプレゼントは何がいいかと悩んでいたら──
『うーん……なんだろう……これからも長く……俺たちの関係を形にできそうなものと言ったら……』
『気を衒う必要はないさ。王道はやはりダイヤモンドの指輪だろう。良い店を知っている、紹介しよう』
と、そんなやり取りがあって用意したものだ。安い物ではなく、給料三ヶ月分が吹っ飛んだがシリウスに想いを伝えるには丁度いいだろう。
シリウスが口を開くのを待っていると──言葉の代わりに、そっと左手を差し出してきた。
「……あ! ああ……!」
流石に言われなくても分かる。俺は指輪をシリウスの指に嵌めようとして──ここで一つ、やらかしに気が付いた。サイズをきちんと測っていない。しかしここで彼女の指に合わなかったり、何度かリトライするのはあまりにも恥ずかしい。
俺はシリウスの指を──人差し指、中指、薬指を見比べ……そっと慎重に、薬指に嵌めた。
「……」
シリウスが目を細めてじっと薬指を見つめる。綺麗な顔に胸がときめくのを感じる。綺麗だ……なんて、思わず小さく呟いてしまった。今更ながら頬に熱が集まる。
後は一言──シリウス。これからも宜しく頼むよ、と。そう告げて、デザートを一緒に食べて、今日のサプライズディナーは終わり。
多分、それなりに成功はした筈だ。
さらに口内に何かが捩じ込まれる。押し返そうとする。無理だった。絡め取られた。口の中がシリウスの匂いで満たされていく。折角のディナーの味が記憶から吹っ飛んでいく。
「……上出来だ。子犬にしてはな」
「し……シリ、ウス……?」
口を離したシリウスは立ち上がり、俺と腕を組む。もうこの場に用は無い。そう言わんばかりだ。
「ちょ、ちょっと待って! まだデザートが──」
「これ以上に甘美な物があると思うのか?……だったら、教えてやるよ」
部屋も何も、今日はディナーで解散のつもりだったからレストランしか予約していない筈だ。予約は佐岳さんに任せっきりだが──
「かしこまりました」
「!?」シリウスがスタッフに声をかけると、そのままエレベーターまで案内された。
驚きが隠せないまま、シリウスに引っ張られてエレベーターに乗せられる。そしてドアが閉じる瞬間、俺は見た。
レストランの他の観客に混ざって、こっそりと俺たちの様子を見ていたらしい佐岳さんたちを。そして、グッと親指を立てて俺たちを見送る彼女達の満面の笑みを。
「心配しなくてもアンタは永遠に私の子犬だ……だが、上手におねだりできたご褒美だ。たっぷりと可愛がってやるよ……」
果たして、俺はどうなってしまうのだろうか……シリウスの火照った体温を感じながら、エレベーターが最上階まで昇っていくのをただ待つのだった──
凱旋門シナリオリンクは育成3年間の後的な感じでプレイした
担当ウマ娘のことになると常識さえ抜け落ちかねないのがトレーナーってやつなんだ
あぶないところだった…
一歩間違えたら殺されるルートを初見でクリアした…
というかだな左手の薬指に指輪をはめる意味を理解して無いのはさすがに常識が無いとかそういうレベルではない
他のトレーナーならともかく仔犬だぞ?
言われてみればそうである
気弱で勉強しか取り柄のない仔犬に輝かしい現在…!
テンパってて気付いてないんだ
あ!やべ!指輪のサイズが聞いてない!?サイズ合いそうな指どれだ?…小指!ふー…サイズ合ってて良かった良かった…みたいな感じだぞ多分
ここで何事もなく帰ったら多分後になってアレもしかしてマズった?って気付いたかもしれん
噂が十分に広がった頃に自分のトレーナーに同じレストランでのディナーに誘われるエアグルーヴ
エアグルーヴと楽しい一時を過ごした
よし!帰るか!
のでエアグルーヴの方から起こした
ハッピーエンド
ごはんおいしかったな
よろこんでくれたうれしいぞ
かえるぞごす
……ごす?
プレゼントは指輪がいいって同じウマ娘のルドルフに聞いたから張り切って用意した!
満足してもらえたみたいで良かった!
…いきなり襲われた!?
トレーナーが担当の子にプロポーズするアドバイスが欲しい
なんて言うわけないでしょう…無いですよね?
このノリだとたぶん子犬に主導権なくてシンボリ家で披露宴の調整される
丁度左手の薬指にぴったりのサイズだった
困った
なら何も問題ないじゃないか
ユーアーパピー❤️