担当ウマ娘の出場するレースに同行するのはもちろんのこと、時にはライバルの視察のために足を運ぶことになる。
だが今日は担当ウマ娘が出るわけでもなくライバルを見に来たわけでもなく、レース場でレースを見たいという頼みを聞いての事だった。
「やっぱりレースは現地で見るのが一番いいわね~」
"ここで良かったんですか?"
「ええ、ただ自分の目でレースを見たかっただけだから。どんな子でもどんなレースでも大歓迎」
家を出る前、どこの競バ場がいいか聞いたときも日帰りできる場所ならどこでもいいと言われ疑問を浮かべたことを思い出す。
今日各地で行われるレースを日程表でチェックし、その中から日帰りできそうな場所だけピックアップしてから適当に決めたのだが本当にどこでもよかったようだ。
「やっぱりデータと映像からだけじゃ読み取れないモノが多いわね」
"?"
「私達三女神があらゆるレースの情報を取り込んで作られたっていうのは知ってるわよね」
「それこそ日本だけじゃなく世界中のウマ娘、トレーナー達のデータを詰め込んでるのよ?」
ふふ、と控えめだが自信に満ちた声色でゴドルフィンバルブが言う。
彼女達三女神のAIはウマ娘に関する事柄であれば殆どのことに有益な答えを出してくれる。自分だけでなく例のサポートプロジェクトでお世話になった者は数知れない。
まさしく全知と言っていい彼女が、今日のなんでもないレースで何を得られたのだろうか。
「でもね、データやレースの映像は全てを見せてはくれない。そういったものが多く残っている有名なウマ娘達だけが物語を作っているわけじゃない」
「レースに出る子達、送り出す人達、その皆に人生があって夢があって……そうして生まれる感情と物語はここだけにしかないの」
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『やったよトレーナー!重賞初勝利だよー!!』『二人で作戦を練った甲斐があったな!』
『また勝てなかった……でも、せめて地元に帰る前に一勝、絶対に勝つんだ……!』
『折角見に来てくれたのにごめんねお父さん、お母さん……』『いや、立派に走るようになったな』『うん、前よりずっと速くなったわね』
『あ、どうも~5番の……え、まだ私の出番じゃない?たは~失礼しました~』『面白い子だなー……見るつもりなかったけど見てみるか』
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確かにGⅠやトライアルにあたる重賞レースでは何気ないやり取りも中継されたりするが、全てを記録されるわけではない。
客席の会話やレース後のウマ娘達の様子はこの場にいないと分からない部分も多い。そういった部分に注目が集まり始めるのは有名になってからだ。
"確かに貴重ではありますね"
「そうね。特に私はメンタル関連の相談を担当しているから、感情のデータが多くあればより相談者に寄り添うことが出来るしね」
今日一日様子を見ていてただ観戦を楽しんでいるように見えたが、流石サポートAIだけあって役立てられるものは全て吸収している。
学んだことを活かすのはトレーナー以上に上手くできるだろう、こちらも負けていられない。
緩んだ気を引き締めるように、軽く伸びをしてから彼女に向き直る。
"これからどうします?"
「あら、レースの後に何をするかなんて決まってるじゃない」
「ウイニングライブの応援よ!」
瞬間彼女の手の中に現れる7本7色のサイリウム。こちらがメインだったのではと思える気合いの入りようだ。いや、そもそもなんでライブに関わらないAIがサイリウムを……。
その後、ライブでは完璧なコーレスとカラーチェンジを披露し……楽しんでいるようでなによりだった。
その時、ふと閃いた!
このアイディアは、担当ウマ娘とのトレーニングに活かせるかもしれない!
担当ウマ娘の成長につながった!
やる気が上がった
体力が48回復した
賢さが20上がった
スキルPtが30上がった
「シンパシー」のスキルLvが2上がった
ゴドルフィンバルブの絆ゲージが5上がった