そういえばあの人、わたしが引退したらどうするんだろう。わたし以外のウマ娘を見つけて、またあんな風に発破をかけるのかな。
そんなことを想像したら、何故かちょっぴり切なかった。当たり前のことなのに、なんでだろう。
『まずはその過酷な業務内容だ。特に中央のトレセンは倍率も高いが仕事量も多い。最初の数年で心が折れてしまうケースも少なくない』
なるほど。これはわたしも気持ち分かっちゃうな。走ってるわたし達は運動量的につらいけど、トレーナーさんがやってる事務仕事も見える範囲だけで膨大な量だ。途中で辞められるなら……と思ってしまう気持ちは痛いほど理解できる。
というか、わたしもそうなりかけたし。
これにはいくつか理由があって、例えばその時の指導方法が変えられなくて、次のウマ娘との不和が酷いことになる、とか。初めに味わってしまった栄光のせいで感覚が一般ウマ娘とズレてしまって、仕事がしにくくなる、とからしい。
……あれ? これは結構トレーナーさんに当てはまってるかも?
思い返すと、今彼がやってる指導法はほとんど私にしか通用しないだろうし、なんだかんだ何度もG1勝っちゃったし。
……いや、でもあの人、休みの日もずっとトレーニングのこと考えてるし、温泉旅行の時すら"わたしを休ませる"っていう仕事をしてるって感じだったし。そんなに仕事に生きてるならわたし以外の子を担当しても全然大丈夫な気がする。
今度、聞いてみようかな。
「それで、今日はなんでお好み焼きなんだ?」
「あー……いや、特に深い理由はないんですけど。ちょっと話をしたいなぁっていうか」
小麦とソースの香りで一瞬ここに来た理由を忘れてしまっていたけれど、トレーナーさんの問いかけで思い出す。
「トレーナーさん、わたしが引退したらどうするのかなぁって」
「引退を考えているのか? それとも体の調子が……?」
シリアスな顔で私の心配をするトレーナーさんの様子を見て、自分の迂闊さに気づく。確かに、これじゃあまるでわたしが引退しようと話を切り出そうとしてるみたい。
「いやいやいや! 違うんですよぉ。ただ、単純に気になってというか……適当に理由つけてお好み焼き食べたい気分だったというか……」
「なんだ、心配したぞ」
トレーナーさんはほっと息をついてお冷をぐいっと飲む。わたしが言うのもなんだけど、この人は真面目過ぎるから時々心配になる。
そう言うと、トレーナーさんは天井を見つめて考え込んでしまった。てっきり、変わらずトレーナーを続けるって断言すると思ってたんだけどな。
その間に、わたしたちの席に注文していた豚玉が届く。今日はお肉盛りな気分なんです。
「トレーナーさん?もう焼いちゃいますよ?」
「……ん?あぁ、お願い」
わたしが鉄板の上でお好み焼きを焼いている間も、トレーナーさんは思案を続けている。まさかそんなに思い悩んじゃうとは。
「……駄目だ。想像付かないな」
「わたしが引退した後のことですか?」
「そうなんだ。それで思ったんだけど、俺は仕事に夢中になってるんじゃなくて、君に夢中になってるみたいなんだ」
「ほぇ?」
思わず、わたしの声帯から意図せぬ呻きが漏れ出る。周りに人がたくさんいるっていうのに、急に何を言い出すんだろう。
「ちょちょちょ、ちょっと待ってくださいよ!前から思ってたんですけど、トレーナーさんはどうしてそこまでわたしに入れ込んでるんですか?」
「そりゃあだって、一目惚れだし」
「うぅっ……」
真顔でトレーナーさんはきっぱりと言い切る。そういう意味は一切無いのは分かってるけど、どうしてそんなに躊躇なく言えちゃうかな、もう。
「だから、君以外の子を担当するなんて想像もできないなぁ」
「それじゃあ、わたしが引退したら再就職しちゃいます?」
「再就職って、どこに?」
「わたしの隣……とか?」
「いやいやいや、どうやって稼ぐんだそれで」
「言うたってG1ウマ娘とトレーナーですよ?食べていけないってことはないと思いますけどね」
「相変わらずふわふわしてるなぁ……将来設計」
「いいじゃないですか!多少ふわふわだって、トレーナーさんが背中叩いてくれるなら大丈夫ですから。……あ、焼けてますよ」
ぎこちない動きでお好み焼きをひっくり返そうとするトレーナーさんから思わずベラを奪い取る。
「貸してくださいよ。わたしがひっくり返してあげますから。なんか不器用ですよね、トレーナーさん」
「そんなことないと思うけどなぁ……」
「いーや、不器用です。仕事のアクセルの踏み方もおかしいですし。だから、わたしと一緒くらいでちょうどいいと思うんですよ。トレーナーさんはズブいわたしを叩いて、わたしはちょうどいい感じにブレーキ役になって」
「そうかなぁ……」
「多分! おそらく! ……それに、心配じゃないですか? わたしをこのまま社会に解き放っちゃうのは」
「うーん……それはそうかも……」
まぁ、いっか。きっとまだまだ先の話だろうし。それよりもまずは、目の前のお好み焼きをトレーナーさんと一緒に味わうほうがわたしにとっては大事なのだ。
「ほら、焼けましたよ」
「ありがとう。それじゃあ、いただきます」
「いただきまーす」
でもでも、もしかしたら、そーいう未来もあり得るわけで。わたしとしては、かなり楽しみというか、一緒に居られたらな、みたいな。
納得いかないような顔でお好み焼きを食べるトレーナーさんの横顔を眺めて思う。この顔が火照っているのは、きっとお好み焼きの熱さのせいだけじゃないから。
せっかくあなたに会えた奇跡を、もう少し噛み締めていたいのです。
本当にふつーの感性で、ふつーに可愛いです。
>『新人トレーナーの離職率が高い理由』
まぁでも実際これってさ…実際さ…
ミスターシービーもそうだと思うと言っています
勝負所を外さない
一緒に住んでもOKだしな…
これ言われたら反論できない程度には人生設計狂わせたからな
いつしかトレーナーさんの将来を心配するくらい関係性が変わっていってるの……いいですね!
いやいやいや
ヒシミラクルのレス
いやいやいやいや
こういいつつ将来普通に結婚する時を想像すると相手がトレーナーしか思い浮かばないんやろ!?
大事な気持ちの話をえ、知らない…で返すのはちょいちょいやりそうだなこのトレーナー
似たもの同士…
そういう気分になってうまぴょい
翌朝やっちゃったから正式にお付き合いするかと
お付き合いしてるなら自然ですよねと頻繁にうまぴょい
ミラ子はトレーナーに抱きつきながらすきぃしか言えなくなる夜を過ごす
同棲部屋の定点観察数ヶ月分欲しい
だんだんカーテンが閉め切られてる時間が伸びていく
いやだって友達と遊ぶって…
トレーナーがにぶちんだと苦労するよね☆
極めて普通の感性だ
カン! カン! カン! カン!
冷静なのを見ると余計に際立つ序盤のぶっ飛び方
序盤のゴリ押しも冷静にこの子にはこれが必要だと弾き出した結果だから終始冷静ではある
「ふふっ、どうする? このまま私の才能が覚醒しちゃって三冠ウマ娘になったりしたら…」
「「ないない」」
って併走中にくっちゃべりながら冗談言ってるの本当に好きなんだよな
クラシック三冠に本当に出るときにはめちゃめちゃビビってるのも含めて
謙遜でなくあの時点では本気で他人事だと思ってるのが普通たる所以でいいよね