1: 名無しさん(仮) 2024/04/06(土)19:24:57
「イイテンキデスネ!」
特徴的な声が間近から響き改めて周囲を見渡す
堤防は春先の穏やかな日差しと満開の桜並木によって人でごった返していた
しかしご満悦の、先程からずっと腕を絡めている担当は
待ち合わせ場所にフルアーマーで現れた
このマチカネフクキタルは理解しているのだろうか?
「フク。分かってるか?今回はランニングの新しいコースの確認だ」
「ハイ!」
「そこんとこちゃんと分かってるのか?」
「モチロンデス!」
いや絶対分かってねえだろお前。道じゃなく俺の顔ずっと見てんだろ
デートじゃねえんだぞ…とは言えず言葉を飲み込む
アイアンクローで引き剥がそうにも周囲の人の群れが邪魔をしている
小動物にも似た鳴き声を上げさせた時点で良くてお巡りさん
悪ければ三面記事といった所だろうか
特徴的な声が間近から響き改めて周囲を見渡す
堤防は春先の穏やかな日差しと満開の桜並木によって人でごった返していた
しかしご満悦の、先程からずっと腕を絡めている担当は
待ち合わせ場所にフルアーマーで現れた
このマチカネフクキタルは理解しているのだろうか?
「フク。分かってるか?今回はランニングの新しいコースの確認だ」
「ハイ!」
「そこんとこちゃんと分かってるのか?」
「モチロンデス!」
いや絶対分かってねえだろお前。道じゃなく俺の顔ずっと見てんだろ
デートじゃねえんだぞ…とは言えず言葉を飲み込む
アイアンクローで引き剥がそうにも周囲の人の群れが邪魔をしている
小動物にも似た鳴き声を上げさせた時点で良くてお巡りさん
悪ければ三面記事といった所だろうか
2: 名無しさん(仮) 2024/04/06(土)19:25:07
「ほらトレーナーさん!いつまでもそんな
不機嫌そうな顔してないで。出店も沢山出てますよ!」
「まあこの桜だからな…」
これだけの人を逃す手はなくやはりかき入れ時なのだろう
焼きトウモロコシにたこ焼き、わたあめといった食べ物から
射的に型抜きくじ引きといった物までバラエティに富んだ屋台が並んでいた
何か買ってやるか、と考えていたフクトレの目に
とある出店が飛び込んできた
「いるよー 未契約ウマ娘いるよー」
「おや、あれは…」
「へえ。ウマ娘救いじゃないか」
人の良さそうなおっさんが椅子に座る側で
ジャージ姿のトレセン学園の生徒達が複数名じっと通行人を見つめていた
ウマ娘救い…未契約のウマ娘達がその特徴をアピールし
担当トレーナーを得ようとする活動の一環である
不機嫌そうな顔してないで。出店も沢山出てますよ!」
「まあこの桜だからな…」
これだけの人を逃す手はなくやはりかき入れ時なのだろう
焼きトウモロコシにたこ焼き、わたあめといった食べ物から
射的に型抜きくじ引きといった物までバラエティに富んだ屋台が並んでいた
何か買ってやるか、と考えていたフクトレの目に
とある出店が飛び込んできた
「いるよー 未契約ウマ娘いるよー」
「おや、あれは…」
「へえ。ウマ娘救いじゃないか」
人の良さそうなおっさんが椅子に座る側で
ジャージ姿のトレセン学園の生徒達が複数名じっと通行人を見つめていた
ウマ娘救い…未契約のウマ娘達がその特徴をアピールし
担当トレーナーを得ようとする活動の一環である
3: 名無しさん(仮) 2024/04/06(土)19:25:17
新春の時期、学園内ではよく見られる光景であったが
このような敷地外で行われるのは珍しかった
「おっ、そこのお兄さんどうだい契約」
「いや、生憎俺には連れがいまして…」
連れ、と言われた時点でフクキタルの鼻息がふんす、と荒くなり
ドヤの気配がするがここはハッキリと断らねばならないタイミングだ
「まあまあそう言わずに…
アンタならチームトレーナーもやれるんじゃないですか?
中央の、マチカネフクキタルのトレーナーさんよ!」
「!?」
「フギャッ!?」
フクキタルが桜並木を抜け空中に放り出されるのと
未契約ウマ娘達が一斉にフクトレにタックルをかけるのはほぼ同時だった
こちらが担当ウマ娘の危機を回避するのまで含めた挙動…
(クソ、こんな往来でも仕掛けてくるか…!)
このような敷地外で行われるのは珍しかった
「おっ、そこのお兄さんどうだい契約」
「いや、生憎俺には連れがいまして…」
連れ、と言われた時点でフクキタルの鼻息がふんす、と荒くなり
ドヤの気配がするがここはハッキリと断らねばならないタイミングだ
「まあまあそう言わずに…
アンタならチームトレーナーもやれるんじゃないですか?
中央の、マチカネフクキタルのトレーナーさんよ!」
「!?」
「フギャッ!?」
フクキタルが桜並木を抜け空中に放り出されるのと
未契約ウマ娘達が一斉にフクトレにタックルをかけるのはほぼ同時だった
こちらが担当ウマ娘の危機を回避するのまで含めた挙動…
(クソ、こんな往来でも仕掛けてくるか…!)
4: 名無しさん(仮) 2024/04/06(土)19:25:27
紛れもないトレーナー狩りであった
入学を控えたこのシーズンは闇の勢力も新人を欲している
その為のこの時期、担当トレーナーが拉致される事件が頻発するのだ
ウマ娘達のタックルを受け堤防河原
学園のグラウンドにも似た草地に投げ出されたフクトレの前で
次々とトレセン学園の制服を脱いだトレーナー狩りのウマ娘達が
ぴっちりとした黒いレオタード姿へと衣装を変える
「良い動きだ…それでこそ攫い甲斐があるってもんだぜ」
当然の様に店番のおっさんも闇の一員だったようだ
フクトレは彼がレオタードに着替えているのを二度見した後
投げて墜落したフクキタルがフンギャロと呻き声を上げたのを視界の端に入れる
「…おいお前ら。ここは不味い、場所を変えてくれないか」
「何を言い出すかと思えば…問答無用!」
「トレーナー狩りにTPOは無いと知るが良い!」
フクトレ目掛けて駆けだそうとする彼等であったがその足が悲鳴により止まった
入学を控えたこのシーズンは闇の勢力も新人を欲している
その為のこの時期、担当トレーナーが拉致される事件が頻発するのだ
ウマ娘達のタックルを受け堤防河原
学園のグラウンドにも似た草地に投げ出されたフクトレの前で
次々とトレセン学園の制服を脱いだトレーナー狩りのウマ娘達が
ぴっちりとした黒いレオタード姿へと衣装を変える
「良い動きだ…それでこそ攫い甲斐があるってもんだぜ」
当然の様に店番のおっさんも闇の一員だったようだ
フクトレは彼がレオタードに着替えているのを二度見した後
投げて墜落したフクキタルがフンギャロと呻き声を上げたのを視界の端に入れる
「…おいお前ら。ここは不味い、場所を変えてくれないか」
「何を言い出すかと思えば…問答無用!」
「トレーナー狩りにTPOは無いと知るが良い!」
フクトレ目掛けて駆けだそうとする彼等であったがその足が悲鳴により止まった
5: 名無しさん(仮) 2024/04/06(土)19:25:40
「な、なんじゃこりゃ!?」
『オオ…オ……ォォォォ……』
地面から現れた白骨化した手がフクキタルの足首を掴んだのと同時
河原のあちこちから次々と骸骨が出現する
「これは…」
「トレーナー狩り狩りだ」
今でこそトレーナー狩りが横行はしているが
闇の者によって拉致され消息を絶つものの
トレーナー達は短くて三日、長くても一週間程で学園に復帰する
同時期、地方で目覚しく成長するウマ娘が現れるのだが因果関係は不明とされている
だがトレーナー狩りがより熾烈を極め中央と闇の争いが
血で血を洗う抗争であった遥か昔…
争いの中で倒れたトレーナー狩りとトレーナー
そしてウマ娘と担当間痴情の縺れによって命を落とした者達は
時としてこの狩りの空気に充てられ怨霊として地上に姿を現すのだ
『オオ…オ……ォォォォ……』
地面から現れた白骨化した手がフクキタルの足首を掴んだのと同時
河原のあちこちから次々と骸骨が出現する
「これは…」
「トレーナー狩り狩りだ」
今でこそトレーナー狩りが横行はしているが
闇の者によって拉致され消息を絶つものの
トレーナー達は短くて三日、長くても一週間程で学園に復帰する
同時期、地方で目覚しく成長するウマ娘が現れるのだが因果関係は不明とされている
だがトレーナー狩りがより熾烈を極め中央と闇の争いが
血で血を洗う抗争であった遥か昔…
争いの中で倒れたトレーナー狩りとトレーナー
そしてウマ娘と担当間痴情の縺れによって命を落とした者達は
時としてこの狩りの空気に充てられ怨霊として地上に姿を現すのだ
6: 名無しさん(仮) 2024/04/06(土)19:25:52
この河原はかつて大規模なトレーナー狩りが行われた古戦場であった
「おい!」
周囲が混乱に陥る中、フクトレがフクキタルに声をかけると
彼女の目がすい、と光を失い立ち上がり絡みついていた白骨化した腕を跳ね飛ばす
「…お呼びですか?」
・・・・
「ああ。シラオキ!フクや一般客そのまま安全な所へ!」
「ええ。貴方も気を付けて」
たん、とシラオキと呼ばれたフクキタルがそのまま高く跳躍し
騒ぎ出した桜の見物人達の中に着地すると誘導していく
それを見届けたフクトレはそのまま
闇のおっさんの背後をカバーするように接近した
「一時休戦だ!」
「こちらは構わん!」
闇の者とはいえ第一に考えるのは教え子であるウマ娘の安全である
「おい!」
周囲が混乱に陥る中、フクトレがフクキタルに声をかけると
彼女の目がすい、と光を失い立ち上がり絡みついていた白骨化した腕を跳ね飛ばす
「…お呼びですか?」
・・・・
「ああ。シラオキ!フクや一般客そのまま安全な所へ!」
「ええ。貴方も気を付けて」
たん、とシラオキと呼ばれたフクキタルがそのまま高く跳躍し
騒ぎ出した桜の見物人達の中に着地すると誘導していく
それを見届けたフクトレはそのまま
闇のおっさんの背後をカバーするように接近した
「一時休戦だ!」
「こちらは構わん!」
闇の者とはいえ第一に考えるのは教え子であるウマ娘の安全である
7: 名無しさん(仮) 2024/04/06(土)19:26:09
「だが流石に魑魅魍魎の相手などできんぞ!」
「安心しろ。生憎こっちはこういうのに慣れっこでね」
いうフクキタルが懐から数珠を取り出す
「おお…除霊だな!」
「カァッ!」
そしてそのまま数珠を握り潰し紐を引きちぎると
散らばった珠を回し蹴りで撃ち出した
『ガッ…ギィッ!』『エゲッ!』『エエェッ!?』
拘束で飛来する鉄製の霊験あらたかな数珠はそのまま散弾と化し
物理的に骨を砕き頭蓋を粉砕していく
「お次はこいつだ」
「経典か!早くお経でもなんでもやってくれ!」
だがフクトレはそのまま手にしたありがたい経典を地面に落す
ズン、とその重さから経典は地面にめり込み
枷を外し身軽となったフクトレの姿が闇のおっさんの側から掻き消えた
「安心しろ。生憎こっちはこういうのに慣れっこでね」
いうフクキタルが懐から数珠を取り出す
「おお…除霊だな!」
「カァッ!」
そしてそのまま数珠を握り潰し紐を引きちぎると
散らばった珠を回し蹴りで撃ち出した
『ガッ…ギィッ!』『エゲッ!』『エエェッ!?』
拘束で飛来する鉄製の霊験あらたかな数珠はそのまま散弾と化し
物理的に骨を砕き頭蓋を粉砕していく
「お次はこいつだ」
「経典か!早くお経でもなんでもやってくれ!」
だがフクトレはそのまま手にしたありがたい経典を地面に落す
ズン、とその重さから経典は地面にめり込み
枷を外し身軽となったフクトレの姿が闇のおっさんの側から掻き消えた
9: 名無しさん(仮) 2024/04/06(土)19:26:48
『ギィッ!』
闇のウマ娘に襲い掛かろうとしていた骸骨の頭をラリアットで砕き
『ゴッ!』
合気で投げたまま追撃の蹴り脚で首の骨を折り
『ンホォ!』
アイアンクローで頭蓋を打ち砕く
程無くして依り代を破壊された怨霊達はそのまま春の日差しの中
成す術無くと言った様子で静かに灰となり消えていった…
「ケガは無いか?」
「え、ええ…ありがとうございます」
ぽかんとした様子の闇のウマ娘達もどうやら大事は無かったようだった
「まさかこんな風に助けられるとはな…」
苦笑気味にフクトレに近づいていき手を差し伸べる闇のおっさん
ふ…と笑ったフクトレもまた彼の手を握り、そして
「もらったァ!」
闇のウマ娘に襲い掛かろうとしていた骸骨の頭をラリアットで砕き
『ゴッ!』
合気で投げたまま追撃の蹴り脚で首の骨を折り
『ンホォ!』
アイアンクローで頭蓋を打ち砕く
程無くして依り代を破壊された怨霊達はそのまま春の日差しの中
成す術無くと言った様子で静かに灰となり消えていった…
「ケガは無いか?」
「え、ええ…ありがとうございます」
ぽかんとした様子の闇のウマ娘達もどうやら大事は無かったようだった
「まさかこんな風に助けられるとはな…」
苦笑気味にフクトレに近づいていき手を差し伸べる闇のおっさん
ふ…と笑ったフクトレもまた彼の手を握り、そして
「もらったァ!」
10: 名無しさん(仮) 2024/04/06(土)19:27:02
「イヤーッ!」
「ンオオオオーッ!?」
その一瞬の弛緩を狙い仕掛けようとした闇のおっさんは
フクトレの涅槃スープレックスを受けその上半身を草地に沈ませた
「ンオオオオーッ!?」
その一瞬の弛緩を狙い仕掛けようとした闇のおっさんは
フクトレの涅槃スープレックスを受けその上半身を草地に沈ませた
11: 終 2024/04/06(土)19:27:24
「おいフクキタル。いつまで寝てるんだ?起きろ」
「ンェェ?」
ぺちぺち、と頬を叩かれたフクキタルが草地で身を起こすと
穏やかさを取り戻した辺りには桜並木と見物客の賑わいが戻っていた
「あれ?さっき妙な人達がいたような気がするんですが」
「何。春の暖かさに誘われて浮かれてたんだろう」
「そうなんですか?」
「ああ、おれ、さっさとデートの続きだ」
「エッ」
しまった、というフクトレの目の前で
フクキタルがその顔をにいっ…と歪ませる
「ンェェ?」
ぺちぺち、と頬を叩かれたフクキタルが草地で身を起こすと
穏やかさを取り戻した辺りには桜並木と見物客の賑わいが戻っていた
「あれ?さっき妙な人達がいたような気がするんですが」
「何。春の暖かさに誘われて浮かれてたんだろう」
「そうなんですか?」
「ああ、おれ、さっさとデートの続きだ」
「エッ」
しまった、というフクトレの目の前で
フクキタルがその顔をにいっ…と歪ませる
春の陽気で浮かれていた者がまた一人…。
12: 名無しさん(仮) 2024/04/06(土)19:27:48
(あれ?この映画なんか思ってたのと違うな)
14: 名無しさん(仮) 2024/04/06(土)19:28:40
急にオカルト路線になった…
15: 名無しさん(仮) 2024/04/06(土)19:29:21
>急にアクション路線になった…
16: 名無しさん(仮) 2024/04/06(土)19:33:08
トレーナー狩りの様式は源平合戦の頃に成立したとされる
17: 名無しさん(仮) 2024/04/06(土)19:34:13
最後がラブコメ落ちなのはいつも一緒
18: 名無しさん(仮) 2024/04/06(土)19:36:01
闇のおっさんがレオタード着てるのとか些細な問題だった
20: 名無しさん(仮) 2024/04/06(土)19:55:19
これフクはただデートしてるだけじゃない?
21: 名無しさん(仮) 2024/04/06(土)20:20:17
まあトレーナー狩りって怪異じゃないからな…怪異には弱くて当然である
23: 名無しさん(仮) 2024/04/06(土)20:27:45
(各オカルト系学園から届く請求書)