LANEにトレーナーさんからのメッセージが入った『ごめんキタサン、ちょっと会議が長引きそうでそっちに行けないから申し訳ないけど今日は練習お休みで。』
とメッセージが入っていた
トレーナーさん来れないんだ…とちょっと落ち込みながらも
『わかりました!会議頑張ってくださいね!』
と返信すると今日はどうしようかな…と考える。
ダイヤちゃんが居れば遊びにでも誘おうかともなるのだが、生憎海外遠征中で居ない。
「そうなると…今日は"アレ"をやっちゃおっかな」
あたしは足早にトレーナー室へと向かった。
ここにはあたしとトレーナーさんが共に歩んできた軌跡の全てがある。
数々のトロフィや盾、それからレイ
一緒に撮った写真、あたしとトレーナーさんの食器類や小物、自主トレ用のトレーニング器具等々
そして中でも一番お気に入りなのが───
トレーナー室に入りジャージを椅子に掛けると、あたしは部屋の隅に積まれた段ボールを一つ運び中を開く。
中には『キタサンブラックトレーニング記録』と書かれたノートが山積みに入っている。
その中の、㉒とナンバリングが割り振られたノートを取り出すと早速中を開き読み始める。
「あ、これ最初の合宿の……凄いなぁ、合宿前と見比べるとこんなに伸びてたんだ……うわーこの頃のあたし、まだこんなタイムだったっけ」
あたしのトレーニング記録を残してあるノート
その時々の記録や身体のデータ
目標レースに向けてのトレーニングメニュー
トレーニングでの成果やタイムの記録
ここまで来るのにどんな事をしてきたのか
どんな課題に直面してどんな方法で解決してきたのか
その時どんな思いを抱えどんな願いを掲げてきたのか
そして──トレーナーさんがどんな思いであたしをここまで育て上げてくれたのか
これら全てがここに書かれている。
いわばこれは私とトレーナーさんの共に歩んできた歴史書とも呼べる───あたしの宝物。
と我儘を言って取っておいてもらっていた。
あたしは、あたし達のすべてが詰まった部屋で、このノートを読み返す時間が大好きだった。
そうしてノートを読みながら感慨に耽っていると、不意に来客が訪れた。
コンコンっとノックの音の後、ガラガラと音を立ててドアが開く。
開いた先には一人のウマ娘がそこに立っていた。
「失礼します!こちらにキタサンブラック先輩のトレーナーさんは───っ!!!」
「あ、トレーナーさんなら今日は…」
と言い終わる前に、彼女はあたしの目の前にずずいっと急接近してきた。
と目をキラキラさせながらぴょんぴょんと飛び跳ねている彼女。
「え、あ、うん!喜んで!」
あたしは困惑しながらも、彼女とガッチリと握手を交わした後で本題に入る事にした。
「ところで今日はどうしてここに?」
「あっ!!し、失礼しました!!私中東部のオータムディバイドと申します!!実は先日からトレーナーさんにお世話になっておりまして今日はその
成果の報告とお礼をと思いまして…」
「──お世話に?」
「はい!実は───」
ちょうど帰り支度をしていたあたしのトレーナーさんの目に留まったらしい。本格化もまだ来てないこと、トレーナーがまだ居ないことや模擬レースに勝ちたくてトレーニングを繰り返してること、そしていつか憧れのキタサンブラックを超えたいという夢を持っていることを話した所
『自分が空いてる時でよければトレーニングを見てあげるし、何なら自主トレーニングのメニューも組んであげるから、無茶なトレーニングはやめなさい。あのキタサンブラックを超えたいのなら、こんなスタートラインにも立ってない所で脚を壊すような真似をしちゃだめだ。』
と言われて以降、暫くの間あたしのトレーナーさんのお世話になっていたらしい。
多分この子のトレーニングに付き合ってたんだ…
「それで昨日の模擬レースで初めて一位を取れたんです!!なのでその報告をと思ったんですけど…いらっしゃらないんですね…残念…」
「取れたんだ!おめでとう!!」
「あ、ありがとうございます!!!!やった!憧れの先輩に褒てもらえるなんて…!あぁえっと、そうだまた本題を忘れるところだった!あの!」
といって彼女は小包をあたしに差し出す。
可愛くラッピングしてあるそれにはメッセージカードも付いていた。
「お礼にお菓子を焼いてきたんです。本当は既製品を買ってくるべきだと思ったんですけどその…今月のお小遣いが厳しくて…あはは…これをよければトレーナーさんに渡していただけないでしょうか?あ、よければ先輩も一緒に食べていただけると嬉しいです!」
小包を受け取る。
「お願いします!それでは失礼しますね!トレーナーさんにもよろしくお伝えください!」
そう言うと彼女はトレーナー室を駆け足で飛び出していった。
小包をテーブルの上に置きメッセージカードを取り外し中を開く。
そこには可愛らしい字でこれまでのお礼とこれからの事
それから『もし私が本格化して選抜レースに出走する時にトレーナーさんが空いてたら、どうか私のトレーナーさんになっていただけないでしょうか』
と書かれていた。
───見なければよかった。
あたし以外の子に余暇の時間トレーニングをしているのも
トレーナーさんがあたし以外の子に期待をかけているのも
トレーナーさんがあたしが居なくなった後のその先を考えていることも
───知りたくなかった。
───知らなければよかった。
「あたしが引退した後…トレーナーさんはあの子と契約するのかな…」
ぽつりとつぶやいた言葉があたしの中でリフレインする。
引退した後トレーナーさんが
あたし以外の子と───
───そう簡単に引退なんてしてやるものか
あたしの頑丈さはトレーナーさんお墨付きだ。
全盛期は過ぎたかもしれないけどまだ限界じゃない。
あたしが走れる限り、走り続ける限り、トレーナーさんはあたしだけのトレーナーさんで居てくれる。
少なくともあの子が本格化して、別のトレーナーを見つけるまではまだ走れる筈だ。
「…トレーニングしなくちゃ」
椅子に掛けておいたジャージを羽織り、ロードワークの準備をする。
少しでも長く、現役を続けるなら一日だって休んでいる暇はない。
今のあたしにできる事はこれしかないのだから。
あたし以外の子を受け持つトレーナーさんも
あたしのトレーナーさんじゃなくなってしまうのも
こんなあたしなんかに憧れてくれた子に嫉妬してしまうあたしも
「あぁ──嫌だなぁ」
心から零れ落ちた黒い本音が、一人ぼっちの部屋に響き霧散した。
トレーナーさんとのお別れを意識してヤダー!ってなってるキタちゃんの怪文書読みたくて探してみたけどうまく見つけられなかったので自分で書きました
トレーナーさんがどれだけあたしを思ってくれていたかを再確認するんだ
これはもううまぴょう以上の快楽だッ
俺もそう思ってたから恥ずかしがることないよ
胸3桁目前までいってると思う
>引退前キタちゃんとかエグいボディしてそう
身長176cmまでいってると思う
オワリのやつだけだろ!
トレーナーは神輿だった?
そうだね
叡智な意味じゃなくても
でも演歌の情念ってそういうもんだしな…
自分で立てた目標に黙々と挑む方が得意そうな面はあるよねキタサン
殿下も強いと思う
よくない
です
ね
そういう感情に対して「なんか重くない?」で済ませるトレーナーは一見ひどいんだけど軽く受け流してくれるからキタちゃん側も深刻に考えずに感情ぶつけてくれるんじゃないかなって思う
重い感情ぶつけらると重く受け止めて悩むタイプだと多分キタちゃん遠慮してぶつけないし
多分
例の目つきで見つめるキタサン
いざ引退となった時元気でなって出来る心臓に毛の生えたトレーナーはどれくらいいるものなのか
でもトレーナーってそういう仕事だし…
俺はウマ娘からトレーナー始めたので3年後もずっと一緒が当たり前なので生涯そういうものだと思ってた
タイキシナリオでタイキがお別れだと思って泣き出したところでハハハばかだなぁずっと一緒に決まってるじゃないか…ってタイキトレとシンクロした
そうなんだけどそうしないと仕事にならないんだけど
いやしかしな…という感情も捨てきれん