1: 名無しさん(仮) 2024/01/02(火)20:34:31
昔々、あるところにとても仲の良い三姉妹がおりました。三人はいつも仲良く暮らしています。長女のヴィルシーナはしっかり者。二人の妹のことをいつも暖かく見守ってくれています。三女のヴィブロスはとっても明るくて、誰からも好かれています。ですがシュヴァルグランは、普通のウマ娘です。ヴィルシーナのようにみんなを纏めることも、ヴィブロスのようにみんなに楽しい気持ちをあげることもできません。
ある日そんな姉妹の噂を聞きつけ、隣の山から悪い魔法ウマ娘がやってきました。魔法ウマ娘は高らかに笑って言いました。
「ヴィルシーナはどこだい?お前さんのように若く美しいウマ娘の血と髪は、材料にちょうど良いんだ」
「二人とも、ここにいると危ないわ。隠れていて」
ヴィルシーナはシュヴァルとヴィブロスをクローゼットに押し込みました。
「さようなら、二人とも。大好きよ。シュヴァル、ヴィブロスを守ってあげるのよ」
ヴィルシーナはそう言って、悪い魔法ウマ娘に連れられていきました。シュヴァルは弱弱しく頷くことしかできません。
ある日そんな姉妹の噂を聞きつけ、隣の山から悪い魔法ウマ娘がやってきました。魔法ウマ娘は高らかに笑って言いました。
「ヴィルシーナはどこだい?お前さんのように若く美しいウマ娘の血と髪は、材料にちょうど良いんだ」
「二人とも、ここにいると危ないわ。隠れていて」
ヴィルシーナはシュヴァルとヴィブロスをクローゼットに押し込みました。
「さようなら、二人とも。大好きよ。シュヴァル、ヴィブロスを守ってあげるのよ」
ヴィルシーナはそう言って、悪い魔法ウマ娘に連れられていきました。シュヴァルは弱弱しく頷くことしかできません。
2: 名無しさん(仮) 2024/01/02(火)20:34:42
どれだけ経ったでしょうか、魔法ウマ娘とヴィルシーナはもう行ってしまったでしょうか。実際にはそんなに時間は経っていませんでしたが、今のシュヴァルには一分が一時間に感じられました。
あれ、ヴィブロスがいない。しっかりと手を握っていたはずの妹の姿がどこにもありません。
慌ててシュヴァルは飛び出しました。窓から庭を見ました。すると、どうでしょう!魔法ウマ娘とヴィルシーナはまだ庭にいて、誰かと話しています。
「やだやだ!お姉ちゃんを返して!」
どうやら、話している相手はヴィブロスです。
早く助けに行かなきゃ、シュヴァルはそう思いましたが、足が動きません。きっと魔法ウマ娘の仕業でしょう。そうじゃないなら、自分だって二人のために動けないはずがありません。
「なんだい、アンタは」
「来ちゃだめよ、ヴィブロス!」
「や〜だ〜!お姉ちゃんと一緒に行くの!」
それを聞くと、魔法ウマ娘は再び高らかに笑います。
「そうかい、そうかい。なら、そうだねぇ、姉妹は一緒にしてやった方がいいだろうねぇ」
そう言って、魔法ウマ娘はゆっくりとヴィブロスへ手を伸ばします。
あれ、ヴィブロスがいない。しっかりと手を握っていたはずの妹の姿がどこにもありません。
慌ててシュヴァルは飛び出しました。窓から庭を見ました。すると、どうでしょう!魔法ウマ娘とヴィルシーナはまだ庭にいて、誰かと話しています。
「やだやだ!お姉ちゃんを返して!」
どうやら、話している相手はヴィブロスです。
早く助けに行かなきゃ、シュヴァルはそう思いましたが、足が動きません。きっと魔法ウマ娘の仕業でしょう。そうじゃないなら、自分だって二人のために動けないはずがありません。
「なんだい、アンタは」
「来ちゃだめよ、ヴィブロス!」
「や〜だ〜!お姉ちゃんと一緒に行くの!」
それを聞くと、魔法ウマ娘は再び高らかに笑います。
「そうかい、そうかい。なら、そうだねぇ、姉妹は一緒にしてやった方がいいだろうねぇ」
そう言って、魔法ウマ娘はゆっくりとヴィブロスへ手を伸ばします。
3: 名無しさん(仮) 2024/01/02(火)20:34:53
その時です、シュヴァルの身体がようやく動きました!魔法ウマ娘の魔法に、シュヴァルは勝ったのです!
「そ、そこまでだ!姉さんも、ヴィブロスも、僕の大事な家族だ…!今すぐ離れろ…!」
手には羊を追い立てるための棒を持っています。今だけは、どんな剣にだって負けません。
「おやおや、まだいたのかい」
「シュヴァル…」
そして、魔法ウマ娘は火の玉を出しました。ですが、シュヴァルは棒を振ってそれを払いました。悪い魔法なんてシュヴァルには効きません。
「姉さん、シュヴァル、大丈夫、だよ…僕が絶対に守るから…!」
シュヴァルが棒を振ると、強い風が吹きました。もう魔女の炎は生まれたそばから消えてしまうでしょう。羽織っていた毛布がマントのようにはためきます。
「くっ……覚えておくんだね、私はあんたらがばらばらになった時、絶対にまた現れるんだから……」
魔法ウマ娘はそれだけ言うと、どこかに消えてしまいました。それから二度と現れることはありませんでした。三人はいつまでも、いつまでもずっと、一緒に仲良く暮らしたからです。めでたしめでたし。
「そ、そこまでだ!姉さんも、ヴィブロスも、僕の大事な家族だ…!今すぐ離れろ…!」
手には羊を追い立てるための棒を持っています。今だけは、どんな剣にだって負けません。
「おやおや、まだいたのかい」
「シュヴァル…」
そして、魔法ウマ娘は火の玉を出しました。ですが、シュヴァルは棒を振ってそれを払いました。悪い魔法なんてシュヴァルには効きません。
「姉さん、シュヴァル、大丈夫、だよ…僕が絶対に守るから…!」
シュヴァルが棒を振ると、強い風が吹きました。もう魔女の炎は生まれたそばから消えてしまうでしょう。羽織っていた毛布がマントのようにはためきます。
「くっ……覚えておくんだね、私はあんたらがばらばらになった時、絶対にまた現れるんだから……」
魔法ウマ娘はそれだけ言うと、どこかに消えてしまいました。それから二度と現れることはありませんでした。三人はいつまでも、いつまでもずっと、一緒に仲良く暮らしたからです。めでたしめでたし。
4: 名無しさん(仮) 2024/01/02(火)20:35:08
「シュヴァちすっご〜!」
まだ小学生になっていない妹、ヴィブロスが目をきらきらとさせる。その横で僕の姉、ヴィルシーナも頷いた。
「そうね、かっこよかったわよ」
でも、僕は嬉しくなかった。だって本当の僕はこんな風に勇気を振り絞ることなんてできないってことが、もうわかっていたからだ。かっこよくもない、強くもない。勇気を出せない、お話の最初の何にもないシュヴァルグランだ。ずっと二人と比べられるままだ。いっそ、二人と別々に暮らせば良いのかもしれない。そしたら考えなくてすむだろうから。そんなことを一瞬でも考えてしまって、そんな自分がすごく嫌になった。
「でもね、シュヴァル。お話の最初の部分だけちょっと直した方がいいと思うわ」
「そう、かな……?」
「あー、それ私も思った!」
それから二人はペンと消しゴムを手に、僕の書いた本にそっと書き加えた。
『シュヴァルグランはひっこみじあんですが、だれよりも人のなやみにきづき、やさしくすることができました』
それから二人は僕を見て、満面の笑みを浮かべた。僕の心の暗いもの、見つめたくないものを、優しく包んで隠してくれた。
まだ小学生になっていない妹、ヴィブロスが目をきらきらとさせる。その横で僕の姉、ヴィルシーナも頷いた。
「そうね、かっこよかったわよ」
でも、僕は嬉しくなかった。だって本当の僕はこんな風に勇気を振り絞ることなんてできないってことが、もうわかっていたからだ。かっこよくもない、強くもない。勇気を出せない、お話の最初の何にもないシュヴァルグランだ。ずっと二人と比べられるままだ。いっそ、二人と別々に暮らせば良いのかもしれない。そしたら考えなくてすむだろうから。そんなことを一瞬でも考えてしまって、そんな自分がすごく嫌になった。
「でもね、シュヴァル。お話の最初の部分だけちょっと直した方がいいと思うわ」
「そう、かな……?」
「あー、それ私も思った!」
それから二人はペンと消しゴムを手に、僕の書いた本にそっと書き加えた。
『シュヴァルグランはひっこみじあんですが、だれよりも人のなやみにきづき、やさしくすることができました』
それから二人は僕を見て、満面の笑みを浮かべた。僕の心の暗いもの、見つめたくないものを、優しく包んで隠してくれた。
5: 名無しさん(仮) 2024/01/02(火)20:35:27
懐かしい夢を見た。いや、あの頃は夢じゃなくて、あの物語は現実の延長線上にあったのかもしれない。いつか、僕の嫌いな僕が変わる大きな物語が訪れるっていう……。体を起こして大きく伸びをすると、姉さんとヴィブロス、そしてトレーナーさんの姿があった。
「昔からあの子、本当はすっごく優しくて、頑張りたいって気持ちも人一倍持っているんですよ。……昔は私をヒロインにしてくれたんですけどね」
「ええ、教えてくれてありがとう。シュヴァルのトレーニングに活かせそう!」
「どういたしまして〜。……これでどんなトレーニングするの?」
……?どういう状況だろう、まさか僕のトレーナーさんが二人を……?それとも逆スカウト……いやいやいや、そんなはずはないって、この前だって勘違いだったじゃないか、でも、でも……。視線を僅かに落とすと、姉さんの手には懐かしい絵本……と呼ぶにはあまりに拙い僕の落書きが。
「アッ」
三人の三者三葉のおはようがぼんやりと聞こえたような気がした。
「昔からあの子、本当はすっごく優しくて、頑張りたいって気持ちも人一倍持っているんですよ。……昔は私をヒロインにしてくれたんですけどね」
「ええ、教えてくれてありがとう。シュヴァルのトレーニングに活かせそう!」
「どういたしまして〜。……これでどんなトレーニングするの?」
……?どういう状況だろう、まさか僕のトレーナーさんが二人を……?それとも逆スカウト……いやいやいや、そんなはずはないって、この前だって勘違いだったじゃないか、でも、でも……。視線を僅かに落とすと、姉さんの手には懐かしい絵本……と呼ぶにはあまりに拙い僕の落書きが。
「アッ」
三人の三者三葉のおはようがぼんやりと聞こえたような気がした。
6: 終 2024/01/02(火)20:37:00
めでたしめでたし/
昔は姉さんとヴィブロスに書いたお話読ませてたんじゃないかってレス見ていいよねって思いました
昔は姉さんとヴィブロスに書いたお話読ませてたんじゃないかってレス見ていいよねって思いました
7: 名無しさん(仮) 2024/01/02(火)20:37:39
ほっこりする物語をありがとう...
8: 名無しさん(仮) 2024/01/02(火)20:38:48
まぁこれぐらいなら微笑ましい黒歴史だな…
9: 名無しさん(仮) 2024/01/02(火)20:40:01
(その時、ふと閃いた!このトレーニングはシュヴァルグランとのトレーニングに活かせるかもしれない!)
10: 名無しさん(仮) 2024/01/02(火)20:43:47
シュヴァルからは姉妹2人にコンプレックス持ってるけど2人からはずっと認められてるし大切に思われてるっていうのがいいよね
13: 名無しさん(仮) 2024/01/02(火)20:55:34
>>10
シュヴァルの距離感を尊重してくれる姉さんと歩み寄り続けてくれるヴィブロスでバランスも良い
シュヴァルの距離感を尊重してくれる姉さんと歩み寄り続けてくれるヴィブロスでバランスも良い
11: 名無しさん(仮) 2024/01/02(火)20:44:05
内容的にパワーが上がるのかな…
12: 名無しさん(仮) 2024/01/02(火)20:49:42
👀シュヴァルちゃん絵本描くの!!!!!???!?
14: 名無しさん(仮) 2024/01/02(火)21:13:02
シュヴァルはバッターになりたいんだな…
15: 名無しさん(仮) 2024/01/02(火)21:14:15
キタちゃんクラちゃんダイヤちゃんとかに聞かれてなくてよかったね…
16: 名無しさん(仮) 2024/01/02(火)21:15:22
共有されたのが微笑ましい内容の絵本で良かった…
17: 名無しさん(仮) 2024/01/02(火)21:18:51
こいついつも黒歴史披露されてるな…
18: 名無しさん(仮) 2024/01/02(火)21:24:45
>>17
妄想癖があるのがね…
妄想癖があるのがね…