1: 名無しさん(仮) 2026/02/14(土)22:13:14 0
「ほぎゃあああああ!!」
マチカネフクキタルの目の前で、神社がぐらりと傾いた。
めきめきと柱が歪み、やがてぺたんと横倒しになる。
地震? 違う。突風? 違う。
ただ占ってもらっただけだ。
「かしこみかしこみ、今年のバレンタインの運勢、なにとぞよろしく占ってもらいたく。ふんにゃか〜はんにゃか〜ほいひゃらほいっ」
次の瞬間、神社は瓦礫の山と化していた。
「あわわ……大凶! 最悪の大凶星です!」
鈴ががらんごろんと足元へ転がってくる。
止めるべし――バレンタイン!!
マチカネフクキタルの目の前で、神社がぐらりと傾いた。
めきめきと柱が歪み、やがてぺたんと横倒しになる。
地震? 違う。突風? 違う。
ただ占ってもらっただけだ。
「かしこみかしこみ、今年のバレンタインの運勢、なにとぞよろしく占ってもらいたく。ふんにゃか〜はんにゃか〜ほいひゃらほいっ」
次の瞬間、神社は瓦礫の山と化していた。
「あわわ……大凶! 最悪の大凶星です!」
鈴ががらんごろんと足元へ転がってくる。
止めるべし――バレンタイン!!
2: 名無しさん(仮) 2026/02/14(土)22:13:43 0
マチカネフクキタル発のバレンタイン中止請願は、意外にも通った。
「イベントに乗じて羽目を外す生徒が確認されました」
風紀委員のフェノーメノが書類を叩きつける。
「チョコに飽き足らず、自らにリボンを巻き付けて贈る不届き者も現れました」
ざわり、と会議室が揺れた。
「つまり私を召し上がれってことですか!?」
フェノーメノは頬を赤らめたまま答える。
「そうであります」
「未熟な果実をウイスキー片手にご堪能くださいと!?」
「そうであります」
うめきに似た悲鳴が上がる。許されることではない。
その日、プレゼントの全面禁止が決まった。
「イベントに乗じて羽目を外す生徒が確認されました」
風紀委員のフェノーメノが書類を叩きつける。
「チョコに飽き足らず、自らにリボンを巻き付けて贈る不届き者も現れました」
ざわり、と会議室が揺れた。
「つまり私を召し上がれってことですか!?」
フェノーメノは頬を赤らめたまま答える。
「そうであります」
「未熟な果実をウイスキー片手にご堪能くださいと!?」
「そうであります」
うめきに似た悲鳴が上がる。許されることではない。
その日、プレゼントの全面禁止が決まった。
3: 名無しさん(仮) 2026/02/14(土)22:14:09 0
「ダメですってば! 中止、スズカさん、バレンタインは中止です!」
サイレンススズカは首をかしげる。
「そうなの? チョコくらいなら大丈夫なんじゃ」
「ひえっ! チョコという言葉が恐ろしいです、くわばらくわばら〜」
「タイキも隠れて送るっていうし、問題ないんじゃない?」
ぽい、と板チョコをカゴへ。生クリームも入れて会計へ進む。
「ぐぬぬ……私の御神託を信じていないんですね!」
「大丈夫。フクキタルの占いはわかっているわ」
「ではなぜ強行するんですか! 大凶なんですよ!」
「なぜかしら……それが自然なことだから、かしらね」
サイレンススズカは首をかしげる。
「そうなの? チョコくらいなら大丈夫なんじゃ」
「ひえっ! チョコという言葉が恐ろしいです、くわばらくわばら〜」
「タイキも隠れて送るっていうし、問題ないんじゃない?」
ぽい、と板チョコをカゴへ。生クリームも入れて会計へ進む。
「ぐぬぬ……私の御神託を信じていないんですね!」
「大丈夫。フクキタルの占いはわかっているわ」
「ではなぜ強行するんですか! 大凶なんですよ!」
「なぜかしら……それが自然なことだから、かしらね」
4: 名無しさん(仮) 2026/02/14(土)22:14:41 0
スーパーを出て、夕焼けの向こうを見つめるサイレンススズカの視線は遠かった。
フクキタルには直感がある。遠くを見るスズカさんは、誰にも止められない。
「私一人だったら、どこにも行けなかったから」
重そうなレジ袋を一つ受け取る。
「先頭の景色を今も見られるのは、あの人がいたから。フクキタル、わかる?」
それは、よくわかる。
彼女の隣にはいつも献身的なトレーナーがいた。
風の日も雪の日も、ケガに悩まされても、ただ彼女を走らせるために尽力した男。
彼は自らを「滑走路の整備員」と呼んだ。
決して表には出ない。空には飛ばない。ただ青空への道を整えている。
「私にできるお礼は、これくらいしかないから」
フクキタルには直感がある。遠くを見るスズカさんは、誰にも止められない。
「私一人だったら、どこにも行けなかったから」
重そうなレジ袋を一つ受け取る。
「先頭の景色を今も見られるのは、あの人がいたから。フクキタル、わかる?」
それは、よくわかる。
彼女の隣にはいつも献身的なトレーナーがいた。
風の日も雪の日も、ケガに悩まされても、ただ彼女を走らせるために尽力した男。
彼は自らを「滑走路の整備員」と呼んだ。
決して表には出ない。空には飛ばない。ただ青空への道を整えている。
「私にできるお礼は、これくらいしかないから」
5: 名無しさん(仮) 2026/02/14(土)22:15:11 0
フクキタルは、ずるいと思った。そう言われては何も返せない。
「……スズカさんはどうしてそんなに、自分を信じられるんですか」
フクキタルには占いがある。結果に右往左往する。
だが占いは畢竟、「補助輪」にすぎない。
運命を切り開く力は、自分で別に用意しなければならない。
サイレンススズカは穏やかに微笑んだ。
「もし明日、隕石が落ちて世界が終わるとわかっても、走るつもりですか?」
「走るわ。それが私の使命だから」
寮に着く。レジ袋を差し出すが、あなたの分よと返される。
「フクキタルの答え、聞かせてね」
「……スズカさんはどうしてそんなに、自分を信じられるんですか」
フクキタルには占いがある。結果に右往左往する。
だが占いは畢竟、「補助輪」にすぎない。
運命を切り開く力は、自分で別に用意しなければならない。
サイレンススズカは穏やかに微笑んだ。
「もし明日、隕石が落ちて世界が終わるとわかっても、走るつもりですか?」
「走るわ。それが私の使命だから」
寮に着く。レジ袋を差し出すが、あなたの分よと返される。
「フクキタルの答え、聞かせてね」
6: 名無しさん(仮) 2026/02/14(土)22:15:43 0
寮のキッチンで、フクキタルは大量のチョコを前に立ち尽くしていた。
出目は大凶。進めば死。トレーナーさんの笑顔と引き換えに失うものが多すぎる。
板チョコを包みの上から恐る恐る砕く。ぱきん、ぼきん、ぽきん。
砕いた欠片をボウルに積み、55度の湯煎にかける。
取り返しがつかなくなるかもしれない。本当に隕石が落ちるかもしれない。
「走るわ。それが私の使命だから」
それでも、サイレンススズカの瞳が頭に焼き付いて離れない。
フクキタルは息を吸い、ゴムべらを握った。
滑らかに。ダマを作らず。わだかまりも残さず。かき混ぜる。
出目は大凶。進めば死。トレーナーさんの笑顔と引き換えに失うものが多すぎる。
板チョコを包みの上から恐る恐る砕く。ぱきん、ぼきん、ぽきん。
砕いた欠片をボウルに積み、55度の湯煎にかける。
取り返しがつかなくなるかもしれない。本当に隕石が落ちるかもしれない。
「走るわ。それが私の使命だから」
それでも、サイレンススズカの瞳が頭に焼き付いて離れない。
フクキタルは息を吸い、ゴムべらを握った。
滑らかに。ダマを作らず。わだかまりも残さず。かき混ぜる。
7: 名無しさん(仮) 2026/02/14(土)22:16:54 0
バレンタイン当日。中止が宣告された学園は静まり返っていた。
高台の神社跡からは市街を一望できる。瓦礫は片付けられ、白い仮囲いだけが残っている。
賽銭箱の上の鈴が風に揺れて、がこがこと鳴った。
フクキタルはフルアーマーフクキタルとなってトレーナーを待ち受けていた。
「来たよ」
リズムだ。リズムが大事だ。フクキタルは自分に言い聞かせていた。
トレーナーが来る。チョコを差し出す。二人は抱き合う。ハッピーエンド、センキュー。
「トレーナーさん、私は卑怯者です」
でも、裏腹な言葉しか出てこない。
「バレンタイン中止を呼びかけながら、ちゃっかり抜け駆けしようとしています」
高台の神社跡からは市街を一望できる。瓦礫は片付けられ、白い仮囲いだけが残っている。
賽銭箱の上の鈴が風に揺れて、がこがこと鳴った。
フクキタルはフルアーマーフクキタルとなってトレーナーを待ち受けていた。
「来たよ」
リズムだ。リズムが大事だ。フクキタルは自分に言い聞かせていた。
トレーナーが来る。チョコを差し出す。二人は抱き合う。ハッピーエンド、センキュー。
「トレーナーさん、私は卑怯者です」
でも、裏腹な言葉しか出てこない。
「バレンタイン中止を呼びかけながら、ちゃっかり抜け駆けしようとしています」
8: 名無しさん(仮) 2026/02/14(土)22:17:20 0
「……それの何が悪いんだ?」
「それだけじゃないんです。私はどこまで行っても補助輪を捨てられないんです」
補助輪――と言ってトレーナーに通じるだろうか。
「今も期待しています。サヨナラ逆転満塁ホームランで運気がひっくり返ることを。運命の人が自分を救ってくれることを」
運の向き、天の声、シラオキさまのご神託から自分は逃れることができない。
どうあがいても、自分は他力本願だ。悩みぬいて行き着いた先が、それだった。
「……それの何が悪いんだ?」
フクキタルはぱっと顔を上げてトレーナーを見た。
「神頼み、上等だろ」
「それだけじゃないんです。私はどこまで行っても補助輪を捨てられないんです」
補助輪――と言ってトレーナーに通じるだろうか。
「今も期待しています。サヨナラ逆転満塁ホームランで運気がひっくり返ることを。運命の人が自分を救ってくれることを」
運の向き、天の声、シラオキさまのご神託から自分は逃れることができない。
どうあがいても、自分は他力本願だ。悩みぬいて行き着いた先が、それだった。
「……それの何が悪いんだ?」
フクキタルはぱっと顔を上げてトレーナーを見た。
「神頼み、上等だろ」
9: 名無しさん(仮) 2026/02/14(土)22:17:50 0
「ううっ、でもいつまでも開運グッズから卒業できなくなるんですよおっ!」
「機を見て適宜捨てるから大丈夫」
「占いに一喜一憂して奇声も上げますし!」
「いつものことだし……」
「スズカさんみたいに一貫性がないんですよ!」
「求めていない。フクキタルはフクキタルだから」
私は私……うむむ? それでいいのでしょうか?
私がいて、トレーナーさんがいて、トレーナーさんは私を理解してくれている。
あれ? 私ってひょっとして、超ハッピーラッキー大確変突入中なのでは?
運命の人がエンジンになってくれるなら、何も怖くないのでは――?
「それで、チョコはくれるのか?」
トレーナーはすっかり打ち解けた様子で笑ってみせた。
「機を見て適宜捨てるから大丈夫」
「占いに一喜一憂して奇声も上げますし!」
「いつものことだし……」
「スズカさんみたいに一貫性がないんですよ!」
「求めていない。フクキタルはフクキタルだから」
私は私……うむむ? それでいいのでしょうか?
私がいて、トレーナーさんがいて、トレーナーさんは私を理解してくれている。
あれ? 私ってひょっとして、超ハッピーラッキー大確変突入中なのでは?
運命の人がエンジンになってくれるなら、何も怖くないのでは――?
「それで、チョコはくれるのか?」
トレーナーはすっかり打ち解けた様子で笑ってみせた。
10: 名無しさん(仮) 2026/02/14(土)22:18:28 0
ひゅるる〜、と尾を引き、夜空に大輪が咲いた。どん、と遅れて音が響く。
「ふんぎゃらっ! な、何事ですかあっ!」
どうやら強行派が校庭を占拠し、抗議の花火を打ち上げているらしい。
事情を知らぬまま、フクキタルはトレーナーの胸に飛び込んでいた。
トレーナーはフクキタルの肩を抱き、手首をぐいっと手前に引き寄せた。
手首には赤色のリボンが結ばれていて、プレゼント用のデコレーションがされていた。
ぱーん。ぱぱーん。ぱらぱらぱら。次々に花火が打ち上げられる。
「福、来たようだな」
こくりと頷く。リボンの意味は、胸に秘めたまま。
「ふんぎゃらっ! な、何事ですかあっ!」
どうやら強行派が校庭を占拠し、抗議の花火を打ち上げているらしい。
事情を知らぬまま、フクキタルはトレーナーの胸に飛び込んでいた。
トレーナーはフクキタルの肩を抱き、手首をぐいっと手前に引き寄せた。
手首には赤色のリボンが結ばれていて、プレゼント用のデコレーションがされていた。
ぱーん。ぱぱーん。ぱらぱらぱら。次々に花火が打ち上げられる。
「福、来たようだな」
こくりと頷く。リボンの意味は、胸に秘めたまま。
11: 終 2026/02/14(土)22:18:57
結局、神社の倒壊は老朽化が原因だった。
フクキタルは自ら手を挙げ、仮の社を建て始めた。
鋸とトンカチを握り、ぎこぎこと悪戦苦闘していたところ。
「フクキタル! みんな連れてきたわよ!」
サイレンススズカがタイキシャトル、サウンズオブアース、ネオユニヴァースを引き連れて現れた。
丸太を組み、即席ながら立派な社が形になる。
「ねー見てー、お姉ちゃんたちが大工さんしてるー」
「ねー、すごいねー」
神社を心配した親子連れが見学に訪れていた。
「お姉ちゃんたちみんな手首にリボンしてるーかわいいー」
翌日、バレンタイン中止の反動で外泊許可証の申請が100件を超えた。
幅広の赤いリボンが飛ぶように売れたという。
フクキタルは自ら手を挙げ、仮の社を建て始めた。
鋸とトンカチを握り、ぎこぎこと悪戦苦闘していたところ。
「フクキタル! みんな連れてきたわよ!」
サイレンススズカがタイキシャトル、サウンズオブアース、ネオユニヴァースを引き連れて現れた。
丸太を組み、即席ながら立派な社が形になる。
「ねー見てー、お姉ちゃんたちが大工さんしてるー」
「ねー、すごいねー」
神社を心配した親子連れが見学に訪れていた。
「お姉ちゃんたちみんな手首にリボンしてるーかわいいー」
翌日、バレンタイン中止の反動で外泊許可証の申請が100件を超えた。
幅広の赤いリボンが飛ぶように売れたという。
12: 名無しさん(仮) 2026/02/14(土)22:23:11 0
>>11
>翌日、バレンタイン中止の反動で外泊許可証の申請が100件を超えた。
なそ
>翌日、バレンタイン中止の反動で外泊許可証の申請が100件を超えた。
なそ
13: 名無しさん(仮) 2026/02/14(土)22:27:41 0
なんかいい話っぽく爽やかに締めてるけどめちゃくちゃ爛れてるじゃねえかよ
14: 名無しさん(仮) 2026/02/14(土)22:28:27 0
フクキタルだからな
15: 名無しさん(仮) 2026/02/14(土)22:46:04 0
そうでありますじゃないのよ

