1: 名無しさん(仮) 2023/01/27(金)23:59:43
自己評価が低いのは……少なくともそんなフリをしているのはアタシを守るためだ。自分で自分を貶めておけば、なにか失敗したって誰かに何を言われたって受け止められるから。「そうでしょ?アタシってどうしようもないんですよ」って訳知り顔で受け流せるから。そういう生き方は正直ラクだったし、傷つかなくてすむ安心安全の人生だ。
だけど、本当のところは自分でも分かってた。心の底では煮えたぎってる。アタシはこんなもんじゃない。本当はすごいんだって。へらへらと結果を受け流してる裏で、本当のアタシはいつだって涙を流してた。だけど、そんなの表に出せるわけ無いと思ってた。そんなの、高望みし過ぎだしダサすぎるもん。
そういうわけで、アタシは無数にいるモブキャラとして、自分の中にいる主人公に憧れる少女を押し殺しながら生涯を終える予定だった。それをまぁ、一人の酔狂な男がぶち壊してしまったのだ。
だけど、本当のところは自分でも分かってた。心の底では煮えたぎってる。アタシはこんなもんじゃない。本当はすごいんだって。へらへらと結果を受け流してる裏で、本当のアタシはいつだって涙を流してた。だけど、そんなの表に出せるわけ無いと思ってた。そんなの、高望みし過ぎだしダサすぎるもん。
そういうわけで、アタシは無数にいるモブキャラとして、自分の中にいる主人公に憧れる少女を押し殺しながら生涯を終える予定だった。それをまぁ、一人の酔狂な男がぶち壊してしまったのだ。
「やった……やったな!ネイチャ!」
そうそう、目の前で本人よりも歓喜しているこの人。どういうわけだか私のことを全力で信じているこの人のせいで、アタシは似合わないと思っていたキラキラした物語の主人公になっていた。
2: 名無しさん(仮) 2023/01/28(土)00:00:05
トレーナーさんになにか言おうと思っても、なんだか息が荒くなって声が出ない。えーと、まず、今どういう状況だっけ?
体は汗だく、観客のみんなはアタシの名前を叫びまくってて、掲示板を見るとアタシの番号らしきものが一着……一着!?
「も〜……ネイチャ、なにボーッとしてんのさ!」
「あ、テイオー……アタシ、勝った?夢じゃなく?」
「ちょっとネイチャ、様子が変じゃない?トレーナーに言って酸素ボンベもらってきなよ」
あ、えーっと。酸素が抜けきってトリップしてたけど。要するにアタシ、真の主人公になっちゃった?有馬記念だよね?走ってたの。
「はい、水とボンベ。とりあえず落ち着こうか」
さっきまであんなにはしゃいでたトレーナーさんが一転、いつものようにアタシへ水をくれる。
キンキンに冷えたスポーツドリンクを口に流し込むと、だんだんと意識が輪郭を取り戻していく。会場の熱気は相変わらず凄いけれど、ちょっとずついつものアタシが戻ってくる。
「ふぅ〜……一着……一着!よっし!トレーナーさん!勝ったよ!」
「よくやったぞ!ネイチャ!」
体は汗だく、観客のみんなはアタシの名前を叫びまくってて、掲示板を見るとアタシの番号らしきものが一着……一着!?
「も〜……ネイチャ、なにボーッとしてんのさ!」
「あ、テイオー……アタシ、勝った?夢じゃなく?」
「ちょっとネイチャ、様子が変じゃない?トレーナーに言って酸素ボンベもらってきなよ」
あ、えーっと。酸素が抜けきってトリップしてたけど。要するにアタシ、真の主人公になっちゃった?有馬記念だよね?走ってたの。
「はい、水とボンベ。とりあえず落ち着こうか」
さっきまであんなにはしゃいでたトレーナーさんが一転、いつものようにアタシへ水をくれる。
キンキンに冷えたスポーツドリンクを口に流し込むと、だんだんと意識が輪郭を取り戻していく。会場の熱気は相変わらず凄いけれど、ちょっとずついつものアタシが戻ってくる。
「ふぅ〜……一着……一着!よっし!トレーナーさん!勝ったよ!」
「よくやったぞ!ネイチャ!」
3: 名無しさん(仮) 2023/01/28(土)00:00:30
それからはもう、何がなんだか分からなかった。ファンのみんなへ、会見で色々とカッコつけたことを言っちゃったり、ウイニングライブのセンターを見事?こなしちゃったり。正直、熱に浮かされちゃってノリにノッてた自覚はある。調子に。
でも、だって、ヒーローになっちゃったんだもの。みんなの期待を、夢を叶えちゃったんだもの。ちょっとくらい……いいよね?
やるべきことは全部終わって、控室。トレーナーさんとアタシの二人っきり。見たことないくらい泣いてたトレーナーさんも、今はすっかり落ち着いて帰り支度をしている。
このまま帰って……いいのかな。せっかく、主人公になれたのに。ちょっとくらいワガママを言っても許されるくらい、頑張ったんだし。
だけど、今までのツケが回ってきたのか。アタシはすっかり本音の吐き出し方を忘れてしまっていて。喉元に来たかと思うと口が固く固く閉じてしまって、番人のごとくそれを阻む。
スマホが揺れる。きっと、色んな人が称賛のメッセージを送ってくれてる。それはそれで、ニヤつきそうになっちゃうけど。
でも、だって、ヒーローになっちゃったんだもの。みんなの期待を、夢を叶えちゃったんだもの。ちょっとくらい……いいよね?
やるべきことは全部終わって、控室。トレーナーさんとアタシの二人っきり。見たことないくらい泣いてたトレーナーさんも、今はすっかり落ち着いて帰り支度をしている。
このまま帰って……いいのかな。せっかく、主人公になれたのに。ちょっとくらいワガママを言っても許されるくらい、頑張ったんだし。
だけど、今までのツケが回ってきたのか。アタシはすっかり本音の吐き出し方を忘れてしまっていて。喉元に来たかと思うと口が固く固く閉じてしまって、番人のごとくそれを阻む。
スマホが揺れる。きっと、色んな人が称賛のメッセージを送ってくれてる。それはそれで、ニヤつきそうになっちゃうけど。
4: 名無しさん(仮) 2023/01/28(土)00:00:56
でも、今だけは。目の前にいるあなただけに言いたいことがあるはずなんだ、もう、喉のすぐそこまで来ているんだ。
「ネイチャ、そろそろ着替えて帰らないと」
このまま、そのまま帰ってしまえば。いつも通りが戻ってくる。ちょっとだけ主人公気質になったアタシなら、いつかはトレーナーさんに想いを伝えることだってできるかも……
イヤだ……なんで、今じゃないの?血反吐吐くほど頑張って、カッコ悪いの承知で全身に鞭打って走り抜けて、それなのに今日はこのまま帰りましょう?冗談じゃない!なんのために頑張ったんだってハナシになる。いや、別にトレーナーさんの為だけに走ってきたとか、そういうのじゃないけど、とにかく……
「……ネイチャ?大丈夫か?」
思ってることをいうだけなのに、どうしてこんなにも苦しいの?理由は簡単、今までずっと逃げてきたから。アタシが卑怯だったから。そんなコト、分かってる。
握りこぶしを作って、全身に力を入れる。どうしようもないアタシだけど、今はもう主人公だ。踏み出す力もあるし、それを許してくれる人もいる。これ以上、カッコつけて自分を押し殺すのはゴメンだ!
「ネイチャ、そろそろ着替えて帰らないと」
このまま、そのまま帰ってしまえば。いつも通りが戻ってくる。ちょっとだけ主人公気質になったアタシなら、いつかはトレーナーさんに想いを伝えることだってできるかも……
イヤだ……なんで、今じゃないの?血反吐吐くほど頑張って、カッコ悪いの承知で全身に鞭打って走り抜けて、それなのに今日はこのまま帰りましょう?冗談じゃない!なんのために頑張ったんだってハナシになる。いや、別にトレーナーさんの為だけに走ってきたとか、そういうのじゃないけど、とにかく……
「……ネイチャ?大丈夫か?」
思ってることをいうだけなのに、どうしてこんなにも苦しいの?理由は簡単、今までずっと逃げてきたから。アタシが卑怯だったから。そんなコト、分かってる。
握りこぶしを作って、全身に力を入れる。どうしようもないアタシだけど、今はもう主人公だ。踏み出す力もあるし、それを許してくれる人もいる。これ以上、カッコつけて自分を押し殺すのはゴメンだ!
5: 名無しさん(仮) 2023/01/28(土)00:01:18
「トレーナーさん!アタシ、頑張りました!」
「うん……本当に、頑張ったよ」
「だから……褒めてほしいです!思いっきり!全身全霊で!」
「もちろん!」
「あ、それで、できればその、頭も撫でて欲しいな〜なんて……」
「いいぞ!」
「あ……あとあと、耳元で言ってもらうオプションとか……あーやっぱ今のナシ……いや!オプション付きでお願いします!」
「……えっと、ネイチャがいいならいいけど」
「うん……本当に、頑張ったよ」
「だから……褒めてほしいです!思いっきり!全身全霊で!」
「もちろん!」
「あ、それで、できればその、頭も撫でて欲しいな〜なんて……」
「いいぞ!」
「あ……あとあと、耳元で言ってもらうオプションとか……あーやっぱ今のナシ……いや!オプション付きでお願いします!」
「……えっと、ネイチャがいいならいいけど」
え?告白するんじゃないのかって?うっさい!もっと欲に従って目先の利益を取りに行ったっていいじゃん!有馬記念勝ってんだぞ!
「ネイチャ、本当に頑張ったよ、キラキラしてるぞ……」
「あ゛あ゛……うにゃ……」
6: 名無しさん(仮) 2023/01/28(土)00:01:46
満たされるアタシのありとあらゆる欲望。レースが終わって冷え切ったはずのアタシの体温は上昇し、そのままトレーナーさんと混ざるかのようだった。最高。
こんなアタシでも……このご褒美を享受するに値するくらい頑張った。何よりも、そのことで自分をちょっぴり好きになれる気がした。
こんなアタシでも……このご褒美を享受するに値するくらい頑張った。何よりも、そのことで自分をちょっぴり好きになれる気がした。
「もっと褒めて〜トレーナーさん……」
「ネイチャはすごい。自慢の担当だよ」
トレーナーさんの言葉が頭に響いてく。頑張って、褒められることってこんなに気持ちよかったんだ。もっと早く、正直になるべきだったかな。なんて。
「あ゛〜……幸せ」
……これからも、もっと頑張ろ。
7: 名無しさん(仮) 2023/01/28(土)00:02:54
褒められると気持ちがいいなということに最近改めて気づいたので書きました。
あと久しぶりにネイチャの育成イベント見たけどやっぱり明確にトレーナーへ矢印伸びててニヤニヤしちゃいますね。
あと久しぶりにネイチャの育成イベント見たけどやっぱり明確にトレーナーへ矢印伸びててニヤニヤしちゃいますね。
8: 名無しさん(仮) 2023/01/28(土)00:04:30
ネイチャはいくらでも甘やかしてよい
9: 名無しさん(仮) 2023/01/28(土)00:11:49
褒められてやる気出す描写が好きなのでありがたい…
10: 名無しさん(仮) 2023/01/28(土)00:13:41
URA優勝後はわかってますねネイチャさん?
11: 名無しさん(仮) 2023/01/28(土)00:20:10
もっと甘えていい
13: 名無しさん(仮) 2023/01/28(土)00:26:52
いいね…でもこれ以上頑張ったらご褒美でネイちゃん爆発しちゃわない…?
14: 名無しさん(仮) 2023/01/28(土)00:28:16
爆発しろ
15: 名無しさん(仮) 2023/01/28(土)00:29:12
再生しろ
16: 名無しさん(仮) 2023/01/28(土)00:49:26
ネイチャのうにゃうにゃからでしか得られない栄養がある
17: 名無しさん(仮) 2023/01/28(土)01:02:47
オプションって言うといかがわしさが一気に増すな…