あたしの耳とトレーナーさんの耳。大きさも形も全然違うそれは、本当に聞こえてるのか分からなかった。いや、聞こえてるのはわかってるんだけどね。何故か気になって仕方ない。
だからトレーナー室に、お邪魔してトレーナーさんにお願いしてみた。お耳を触らせてくださいって。「う〜ん……まぁ、いいか。大丈夫だよ」
少し迷っている様子だったけど、許可をもらった。それがとても嬉しくてとても有り難かった。
「でもやめてくれって言ったらやめてほしいかな」
「もちろんです!迷惑になることはしたくないですから!」
少し警戒してか耳を隠す仕草をするトレーナーさん。酷いことはしたくない。信頼を裏切りたくないから。……そう思ってるけど、何でかな?耳を隠すトレーナーさんの表情がいつもと違っていて。あまり見たことがないから、少しだけ、ほんの少しだけ、もっと見たいと思う自分もいた。
あたしは親指と人差し指で、トレーナーさんの耳の下の方を摘んでみた。……何だか妙な感じ。柔らかいような……そうでもないような……。でも、いつまでも触っていたい。何となくそう思った。
その時のトレーナーさんの表情はどんな感じだったのか。それを気にすることは何故か出来なかった。
摘んでは離してを繰り返していると、トレーナーさんがくすぐったそうにしているのに気づいた。
「き、キタサン……。痛くはないんだけど……。そ、そろそろ……やめてほしいな……」
くすぐったそうにするトレーナーさんの顔が
あまりにも可愛かったから
あたしは
「キタサン……!やめ……!」 自分の中の衝動を抑えることが出来なかった。ううん、抑えたくないと思ってしまった。
あたしだけが知っている表情。あたしにしか見せない表情。もっともっとみたい。もっともっと感じたい。
そう思っていたのに。
「キタサン……」
その声があまりにも悲しそうだったから、あたしの手は止まってしまった。
あたし何してたんだろう……?ヤメテって言ってたのに何で続けてたんだろう……?分からない……分からない……。
全身から力を失い膝から崩れ落ちる。トレーナーさんを見ることが出来ない。
「っ!はい……」 その声はいつもと違い、暗く冷え切ったもので、お化けよりも何倍も怖かった。震える体と心。指先から冷えていく感覚。あたしは動くことが出来なかった。
何秒、何分?分からないくらい時間が経ったように感じる。動き出したのはトレーナーさんだった。
「お仕置きだ」
「え?」
トレーナーさんはしゃがんであたしの耳を触りだした。
「お仕置きだって言っただろ。それに君はやめなかった。だから俺もやめない」 強引だけど乱暴ではない。優しいけど気遣いがない。矛盾した触り方であたしは抵抗することも出来なくなっていた。
何故か嬉しい。
「やだ……やめて……」
「………………」
あたしの言葉は届いていない。怖い……。やめて……。でも嬉しい。あたしを見ている。
「ごめんなさい!お願いします!やめてください!」
「………………」
返ってこない返事。身も心も凍えるような寒さのはずなのに、その寒さが心地良い。
それを何故か怖いとは思わなかった。むしろとても嬉しく感じている。誰にも見せたことのないあたしを見てくれているみたい。そう思うと笑みが溢れていた。
あたしの軽い興味で開いた箱は、お互いを破滅に導く災厄だったのかな?ううん、違うか。あたしたちには元からあったんだ。「…………」
相変わらず何も言わないトレーナーさん。でもそれがあたしじゃないあたしを見ているかのようでとても嬉しかった。
もうやめてほしいとは思わなくなっていた。
ここはトレーナー室。扉を叩くものがいなければ誰も入ることが出来ない。あたし達だけの空間。それを邪魔するものは誰であろうと許さない。
「サトノダイヤモンドです。キタちゃんいますか?」
誰かがそこに入ろうとしていた。
許しを乞うな罪を背負ってまた書け
これは新しいトレーニングに活かせるかもしれません!
ダイヤちゃんそれ担当トレーナーにどう伝えるんだよ
耳の触り合いをしましょう!!!!!
キタちゃんよりはだいぶ健全で微笑ましい感じになりそうだな!
「トレーナーさん、ウマ娘の耳を触ると感覚がおかしくなってしまい、走りに影響を受けるというジンクスがあります。
ですので」
「ダイヤ……待ってほしい。それを破ろうとするのはなんかまずいだろ……」
「ですが、キタちゃんとキタちゃんのトレーナーさんはやってましたよ?」
「何やってるんだアイツラ……」
「ですので、さあ!さあさあ!」
「圧が強い……!分かった!分かったから落ち着いてくれ!」
⭕新しいプレイ
はたから見るとうひひひぐへへへって変な笑い声上げながら乳繰り合ってるだけなんだろうな…
「ぅ……。これ……気持ちよくて……ダメ……」
「やめようか……?」
「いえ!もっとしてください!」
「圧強い……」
また書け
罪でないなら死ぬ必要はない
「謝らないで下さい!元々はあたしがわるいんです!」
「だけど……」
「……トレーナーさん。今でも自分が悪いと思ってますか?」
「当たり前だろ。しっかりと止めなかった俺に責任がある」
「……責任」
「だから償いたいんだ。どうすればいい」
「……それなら頭を撫でてください」
「え?」
「本当にそれでいいのか」
「はい!……でも、撫でてるときに耳に当てないでくださいね……」
「……分かった。当てないように気をつける」
「はい……本当にダメですからね……」おしまい
ダメだ罪は現世で償ってもらう
「どうしたの急に」
「トレーナーさんに触ってもらったんだけど、凄く気持ちよくて……天にも登る気持ちだったよ!」
「……ダイヤちゃんのそんな表情見たことないな」
「私もキタちゃんのあんな笑顔初めてみたよ」
「あ、あのときのことは忘れてって言ったよね!」
「キタちゃん」
「な、何……?」
「ダイヤもキタちゃんの耳を触ります」
「なんで!?」
「やめてダイヤちゃん!今のダイヤちゃんにあたし絶対勝てないから」
「とりあえず押し倒すね」
「とりあえずで押し倒さないで!」
「覚悟はいいかな?」
「……せめて優しくして……」
「激しくするね」
「助けてトレーナーさん!」
「ダイヤちゃんに襲われました……」
「その……何かごめんな……」
「元はと言えばあたしに原因があるからトレーナーさんは悪くないです……」
「その……俺になにか出来ることあるかな?」
「…………その」
「うん」
「今日は耳全体を優しくサワサワしてください……」
「分かった……」
サンキューダイヤちゃん。フォーエバーダイヤちゃん。