一人のウマ娘の引退式が執り行われていた
「今までありがとー」「お疲れ様ー」
それぞれ思い思いの声をかける人だかりの渦
__その中心にいるのは、青と金の特徴的な髪
…そう、ネオユニヴァースと呼ばれるウマ娘がいた
10位になった天皇賞春の後、屈腱炎でもう走れないことがわかって『サヨウナラ』をしに来たのだ
「ネオユニヴァースはファンと「コネクト」できて満足になったよ」
ファンの声にそう答えながら、パドックをゆっくり歩いていくネオユニヴァース
まるで、その歩みはまるで旅立つ前の旅人のように名残惜しそうな雰囲気すら漂わせていた
(これは、既知…このTIFYは終着地、私が『あなた』から離脱する場所…)
(ネオユニヴァースは知ってる、この旅立ちが不可逆、行ったら戻ってこれない、でも行かなければならない)
(ネオユニヴァースの軌道はこれで終わり、デフォールトに戻る)
周りに促されるように、パドックの外、建物を貫く地下の道に入った
____重々しい足取り、
____数歩歩く、
(フィィィィィィン!)
彼女の姿はそこで掻き消えた
「此処は…この場所は____アンノウン」
「ネオユニヴァースは、『迷い込んだ』みたいだね」
「でもわかる、此処は此処でも何処でもない統合された場所…」
___いわば重力の底
当たりを見渡すと周りは暖かくもなく寒くもなく、しかし既視感がある空間そして何よりも…
上空にもう一人の自分が漂うようにいた
「それとも____」
彼女は、そう言いつつ『彼女』へと手を伸ばす
次の瞬間、『彼女』から何かが彼女へと流れ込む
『彼女』が何者なのかも分かる、それは___
「それはネオユニヴァースと同じ、そう…走れなくなってもただ『あなた』と一緒に居たいんだ」
「そして…助けがを欲してる、『あなた』との窓を開くために」
そこまで言って、彼女は『彼女』に手をかざす
すると、彼女の手から、光があふれ『彼女』へと流れ込んでいく
流れ込んで少し、光の筋は一つ増えた
光の筋は一つまた一つ増えていく
彼女はふと周りを見渡す、たくさんの『彼女達』が同じような格好で光を『彼女』へ流し込んでた
「そうか、みんなは、同じようにお別れをした『ネオユニヴァース達』なんだね」
彼女はそうつぶやく
光の筋がつむぎ束ねられ、奔流となって『彼女』に注ぎ込まれる
『スフィーラ』…そう『彼女』言ったような気がした
まるで、役割が終わり分離した、補助ロケットのように
光を流し終えた彼女は『彼女』にまるで託すように声をかける
「…行ってあげて『あなた』の元へ、ネオユニヴァース…ううん…ネオユニヴァース達と共に」
その言葉に答えるかのように『彼女』はさらに虚空へ高く飛び上がっていく
___行先は『あなた』への窓
見送っていた彼女もまた、この空間から離脱を開始する
白濁していく視界の中、彼女は最後に確かに見た
ネオ・ユニヴァース(新しい宇宙)が作られる瞬間を
『あなた』と『ネオユニヴァース達』の宇宙
「___ハロー ハロー 私は…私たちは満足になったよ」
・・・交信終了
(フィィィィィィン!)
「…戻ってこれた、ううん、居れなくなったってことだろうね」
彼女は、札幌競馬場に戻ってきていた
彼女はトレーナーの姿を見つけ歩み始め、そして声をかける
「トレーナー、もう行こう」
「"享受"したいんだ、『あなた』との残りわずかな時間を…」
二人は手を取り合いそのまま道の先へと消えていった…
あの日から、二人は年に何回かランデプーをする
そんな月日がたちある日のこと
「もう行くんだね、トレーナー」
肯定の意をしめすトレーナーに、彼女は『あの時』と同じように手をかざす
『あの時』から他の宇宙を観測はできなくなって"散光星雲"になったこともを分かってる
でも『あの時』の光の残滓は残ってる
(___だから、『あなた』にこの光を託すよ)
「そろそろランデブーも終わり、でも『あなた』なら大丈夫」
「成し遂げるをできるよ、海を渡った先で」
ランデブーの時間が終わる…
去っていくトレーナーの姿を、彼女は託した光が羅針盤となる事を願いながらずっと見ていた…
ネオユニヴァースも「あなた」も全部統合されたから安心しろ
よく考えるとすごい力技だな最後…
みんなハッピーで終わるのっていいよね…
何なのか完全に理解してるんだよな