光と色に満ちた、何よりも美しい夢を。朝になれば消えてしまう、淡く儚い夢を。
誰かに見せたくて、伝えたくて。それを見たいと願ってくれるひとが、そばにいて。
そんなことを考えているうちに、朝が来る。
けれど今は、ただ訪れる一日一日が楽しみで仕方ない。気怠さに任せて惰眠を貪る以前の生活を、生意気にも人生の無駄遣いと断じてしまうほどに。
若僧が何を言うと鼻で笑われても構わない。自分の人生に一分一秒を惜しむ価値があると思い上がるつもりはないが、彼女との時間となれば話は別なのだ。
どれだけ嘲笑われようと、好きなだけせせこましくなってやろう。
朝の光を浴びようと、カーテンを開くべくベッドから起き上がろうとする。眼下にはきっと、自分と同じように微睡みから覚めかけた街のまばらな人影が目に入るだろう。
起こそうとした身体に、細いけれど力強い腕が絡みついた。その腕に導かれるままに、もう一度ベッドに身体を横たえる。
「こら」
「…んー?」
まだ気怠そうな彼女の手付きはそれでも優しくて、このまま彼女に抱きつかれたまま一日中過ごすのも悪くないとさえ思えてしまう。だから自分もそんな彼女を強く咎めるつもりなどなくて、ほんの形だけの抵抗をしてみる。
「なんでこっちにいるんだ」
彼女がどんなふうに、それに応えてくれるのかを待ち望みながら。
「一緒にいたくなっちゃったんだ。きみの寝顔見てたらさ」
誰にも、何にも縛られない彼女の見ている景色を感じてみたくて、どこまでもありのままに生きようとする彼女の純粋さを、不器用さを、少しでも守ってあげたくて、ただ彼女に寄り添うことだけを考えていた。
そんな日々が、終わろうとしているのだと。
彼女と共に見る景色は、ときに呆れるほど滑稽で、ときに息を呑むほど美しかった。忙しない日常の中で自分たちが見過ごしてしまう美しいものを、彼女の瞳はいともたやすく拾い上げていった。
そんな彼女の言葉を、走る姿を見る度に、退屈で仕方なかった自分の人生は、きっとこのためにあったのだとさえ思った。
自分には過ぎた幸せだったのだ。ましてや、このままずっと彼女の隣にいたいと願うことなど。
『一緒に行こうよ。
アタシ、きみが好き。
きみがいないと、やだ』
そんな自分の覚悟だって、あっさりと踏み越えていった。
それから彼女と一緒に、世界中を旅して回った。美しいものを、見つけにゆくために。新しい世界に出逢えた喜びを体いっぱいに表現する彼女を、誰よりも近くで支え続けるために。
同時に、恋人としての距離を探り合う日々も始まった。わかりやすくべたべたと戯れ合うことはしない代わりに、ごく自然な雰囲気で懐に入ってくる彼女には、いつまでもどきどきさせられっぱなしなのだが。
何より、彼女が愛を示してくれているのだから、断る理由はない。
「いいのか?出なくて」
それでも自分の役目として、いつも通りの一日に戻らなくてもいいのかと促してみる。
「今日はきみとくっついてたいんだ。
だめ?」
彼女の気分が向けば予定などあっさりと変わることなど、承知してはいるけれど。
どれだけ長い間彼女と過ごしても、自分が彼女と同じになることはない。シービーも彼女と違う自分をこそ愛してくれているのだから、無理に変わろうとも思わない。
だから自分はいつまでも、彼女に少しだけ問いかけ続けるだろう。今気兼ねなく愛してもいいか、確かめるために。
「…だめじゃないよ」
「…ふふ。ありがと。
ねぇ、こっち向いて」
彼女に赦しを得たあとの時間は、たまらなく心地良いのだから。
「ねぼすけ。
今日も出かけるんだろ?」
じゃれついてくる小さな動物を思わせる仕草が愛らしい分、少しだけ意地悪をしたくなってしまう。
「いいの。今、すごく幸せだから。
きみはそうじゃない?」
そんな挑発を気にする素振りも見せずに、顔を上げてにっこりと微笑む彼女が見られると知ってしまっているのだから。
「好きだよ。俺だって。
朝飯は食べたいけど」
「じゃあ、もっと寝坊しよ?
久しぶりに、きみのごはん食べたくなっちゃった」
折角の早起きはあっさりと頓挫してしまったが、それでも悪い気は全くしなかった。
それだけ長く、彼女と一緒に過ごすことができるということなのだから。
観衆の話す言葉は未だに耳慣れないけれど、何と言っているのかははっきりわかった。彼女の走りを見た者が口にする言葉は、いつだって同じだったから。
走るのは楽しい、と全身で叫ぶようにゴール板を駆け抜ける彼女は、何度見ても飽きることはなかった。
額の汗を拭った彼女は、一緒に走ったウマ娘たちと肩を組んで親しげに話していた。レースの準備をしている様子を見るや飛び入り参加したいと唐突に言い出した彼女を快く受け入れてくれただけあって、突然現れて優勝を攫っていった華麗な簒奪者にも、彼女たちは称賛を惜しまなかった。
「優勝祝いだって」
金のバッジがついた黒いキャップは、爽やかに汗をかく彼女によく似合って見えた。彼女の勝利を讃える他の参加者たちによって、そのまま頭から取れなくなってしまうのではないかと思うほどぎゅうぎゅうに被らされたときは流石の彼女も気圧されていたようだったが、結局はそれも楽しかったと見えて、鍔の縁を指で大切そうに撫でている。
「てっぺんに立った、ってことかな?」
レースのときだけ見せる自信と野心に満ちた瞳は、鍔越しに覗くと余計に輝いて見える。いつも爽やかさを忘れない彼女がそんな獣性を剥き出しにする様も自分は好きなのだが、この帽子はそれにいいアクセントを添えてくれた。
「『上には上がいる』ってことかも」
そんな彼女の情熱に気後れしていては、彼女のトレーナーは務まらない。ウマ娘が競い合うレースと、小気味よいアイロニーの生みの親であるこの国の人々が、レースの勝利をただ喜ぶだけという勿体ないことをするとは思えなくて、そんな邪推もしてみる。
「あはは!どっちもかもね」
自分も彼女も、そういう一筋縄ではいかない捻くれたところが好きだった。この国の人と話すときは、退屈する暇がない。
曖昧な聞き方は、彼女が現役の頃から続けているやり方だった。良かった点や反省点をひとしきり話し合ったミーティングの最後に、分析でも議論でもない、彼女が純粋に感じた想いを聞くのは、どんなレースの後でも彼女との恒例行事だった。
彼女のためだけではない。彼女が何を見てどう感じたのか、何よりも自分が聞きたかった。
「知らない感覚。何て言ったらいいのかわかんないけど、すごく楽しかった。
あの子たちの走り方、日本の子と全然違うんだ。
そういうの好きだな」
安心すら覚える、故郷に帰ってきたような懐かしさ。まだ誰も見たことのない景色に足を踏み入れた、喜びと興奮。彼女が訴えてくる想いはいつも違うけれど、それを語る彼女はいつもにこやかに笑っていた。
「きみはどんなアタシが見たい?」
けれど、そんな彼女から問が返されるというのは、今までにはないことで。
「どんなシービーも好きだよ、俺は」
ついつい、思ったままのことを返してしまう。
青臭い台詞を笑われる覚悟はしていたけれど、心底楽しそうに微笑みながら拒否されるとは思っていなかった。頭の引き出しを探ってもやはり気の利いた返しは出てこなくて、何とも間抜けな声を出す羽目になってしまう。
「え?」
もう少し捻りを利かせた台詞を言うべきだったのだろうが、他にどう答えるべきかと問われれば返答に窮する。
何度も見てきた彼女の姿にも、見たことのない意外な一面にも喜びを感じられる。それは紛れもない本心であったからだ。
「ふふ、だめだよ。嬉しいけど。
きみだって、ごはんを作るときにアタシがなんでもいいって言ったら困るでしょ?」
ほら、と笑う彼女に促されて、もう一度考えを巡らせる。どんな彼女でも見たいというのは嘘偽りない答えなのだから、そこから無理に絞るというのは中々に難しい。
けれど、願いならある。こうあってほしいと思う姿を押し付けることはしたくないけれど。
「じゃあ、ひとつだけ。
笑っていてほしい。ずっと」
──このくらいのささやかな願いなら、彼女を縛ることもないだろうから。
「なんで、あんなことを?」
誰がどう思おうと、自分のしたいことのために突き進むのが彼女の在り方だ。たとえそれが俺の望みであろうと、聞きたくないなら聞き入れないだろう。
そんな彼女が、誰かからどう思われているのか知りたがったということが、少しだけ引っかかっていた。
「あはは、心配してくれたんだ。ありがと。
大丈夫だよ。アタシはアタシのままだから。たとえきみが言ったことでも、嫌ならちゃんと嫌って言うよ」
それが気になっていたと告げると、彼女はもう一度愉快そうに笑った。
彼女の笑顔には周りを楽しませる力がある。だから、その隙に彼女がすいと耳元に口を近づけたときも、反応が一拍遅れてしまった。
「…きみがどんなアタシを好きなのか、聞きたかったんだ。
きみに好かれてるって思ったら、あたりまえのことでも大切にできる気がするから」
耳に手を当てて赤面する自分を見て、彼女はもう一度楽しそうに笑った。
「綺麗だね。
あんなに冷たそうだったのに、今は何もかもが燃えてるみたい」
美しい景色を目の当たりにして彼女が足を止めれば、カメラを取り出すのは半ば習慣になっていた。
初めは両親や友人たちに送るための写真を撮りたいと言い出した彼女の手伝いに過ぎなかったが、撮った写真をふたりで整理しているあるとき、彼女がこんなことを言った。
『…きみにはこんなふうに見えてるんだ』
以来、人に送るためではなく彼女自身のために、写真を撮って欲しいと頼まれるようになった。
『撮ってよ。きみが綺麗だと思うように。
アタシはそれが見たいな』
ポーズを取るときさえも彼女は楽しそうにしてくれるから、最高の被写体を前にしてあまり気後れせずにすむというのも、自分を調子づかせてしまっている一因ではあるのだろうが。
そのまま彼女の方へ駆けていくことはしたが、続く彼女の提案には即座に首を横に振った。
「俺はいいよ」
少しだけ困ったように眉根を寄せた彼女に罪悪感が湧いてくるが、自分にも言い分はある。
「なんで?撮ろうよ」
夕焼けの街と反対方向へ手を伸ばして、彼女はシャッターを切る仕草の真似をした。
「この景色もシービーもすごく綺麗だけど、俺はそうじゃないからさ」
美しいものを撮って欲しいと言われたから、自分は今カメラを持っている。くだらない拘りだと言ってしまえばそれまでだが、目の前の景色や、その中で輝く彼女に比べて、自分自身を写真に収める価値があるとはどうしても思えなかった。
その目は、ちょうど──
「あっ」
──悪戯を思いついた子供のように、きらきらと輝いていた。
自分の手の中にあったカメラは、一瞬で彼女の右手に収まっていた。残った左手はこちらの腕に回されて、逃げられないようにがっちりと固定されている。
「ほら、笑って?
3、2、1、はい」
小気味よい電子音とともに、きっと自分の引き攣った笑顔もカメラに収められたのだろう。自分がどんな顔をしていたのか見たくなくて、写真を確かめるシービーから目を逸らす。
「もういいんじゃないか?」
「だーめ。ほら、撮るよ」
いい写真を撮ることよりも写真を撮られて困惑している自分を眺めることが目的になっている気がする彼女に、もう勘弁してくれと視線を送るけれど、彼女はそんなことは知らないとでも言うように、また爽やかに微笑んだ。
「アタシの物語は、きみが紡いでくれるでしょ。
きみがいないのはやだって、言ったじゃん」
どこで見ても綺麗だね、月って」
眩しいビルの光の中にあっても、登り始めた大きな満月は東の空にはっきりと顔を出していた。
「うん。
本当に、月がきれい」
そう口にしたあとに、今出て行った言葉の意味を思い出す。慌てて隣を振り返れば、当のシービーも何か常ならぬ神妙な表情をしていた。
お互いにお互いの表情から目が離せない。何か落ち着かなくて、どきどきして。
いつも一緒にいるのにこんなことでときめいてしまうのが、なんだかひどく可笑しくて。結局、お互いに笑い出してしまって、ロマンティックな雰囲気はあっという間にぶち壊しになった。
「あはは…!ひどいなぁ、せっかくいい雰囲気だったのに。
アタシとこういうことするの、そんなに変?」
まだ心は慌てたままだったけれど、彼女の問いにはゆっくりと首を横に振った。
慣れない感触にこそばゆくなるのは事実だけれど、自分は心からこうしたいと望んでいたのだから。
「シービーとこういう仲になるって、思ってなかっただけだよ。ご両親みたいになるのは想像できないって言ってたから」
「あのひとたちや他の誰かの真似をして、そうしてるわけじゃないんだ」
けれど、それもすぐに終わった。もうきっと彼女は、きちんと答えを出していたのだろうから。
「心が動いて、きみの顔を見ると、きみとこうやっていっしょにいたくなるだけ」
心の赴くままに、望むものへ向かって走り続ける。
その生き方が覆ったことは、一度としてない。
自分の言葉に自分で納得したかのように、それからの彼女の足取りは軽やかだった。
「それにさ」
彼女にとって、それほど大切なことはない。自分のしたことに納得できるかどうかが、彼女にとっては何よりの価値基準なのだから。
だからこそ、自分の想いを、伝えたいことを、ためらわずに──
「似合わないとか、柄じゃないとか。ごちゃごちゃ難しく考えるほうが、よっぽどアタシらしくないかなって。
好きなものは好き。それでいいじゃん。
ね?」
──迷わずそう口にできる彼女は、世界で一番強いのだ。
けれど。
まだ彼女には、欲しい物があったらしい。
「だから、ちょうだい?」
彼女の指が、左指の一本に絡む。そのしなやかな指先が、骨ばった手の甲を撫で上げる。
そうしてその指が輪になって、くるりとこちらの指を囲んだとき。
「アタシもほしい。
きみと同じものを、きみと同じように」
──心まで一緒に、掴まれてしまった気がした。
夜更けにいきなり飛び込んできて婚約指輪を買い求めるカップルに、店の売り子も初めは少しだけたじろいでいたが、彼女の表情を一目見ると、すぐに優しそうな微笑みを浮かべて指輪を見繕ってくれた。
「あはは」
猫のようにころころと部屋を駆け回る彼女が微笑ましくて、ベッドに腰掛けた太腿をぽんぽんと叩く。ぴくりとこちらを向いた彼女の耳はその音をきっちり拾って、すぐに心地いい重みと温もりが膝の上に収まった。
買ってもらったばかりのプレゼントを抱える子供のように薬指を撫でる彼女の仕草がなんだこそばゆくなって、揶揄うように呟いてみる。
「約束は苦手じゃなかったのか?」
そう問うと、彼女は確かめるように額の前に手を翳した。
そこから透かして見る彼女の瞳は、何よりも澄んだ光を湛えていた。
でも、きみとの約束がこうやって形になってるのは、なんかすごくうれしいんだ」
雲が晴れるように、彼女の手が退けられる。
彼女だけが見える。その澄んだ瞳から、目が離せなくなる。
「ねぇ」
愛を囁くときは、いつもこうなる。五感が彼女以外の情報を拒んで、他に何もないかのように静かになる。
そんな静寂の中で、彼女の声だけが聞こえてくる。
「言ってよ。好きって」
それでも、まだちっぽけな理性は恥ずかしいと最後の抵抗をして、彼女を直視することを拒もうとする。眩しすぎる陽の光から、目を逸らすように。
「形にしただろ?」
けれど、そんな言い訳で彼女は満足するはずもなくて。胸を焼くほどの想いを偽りなくぶつけてくれなければ、納得しないと叫ぶのだ。
「やだ。
きみの口から聞きたい。今すぐ」
身体が熱くて、胸が焼けそうで、苦しくて仕方ない。苦しいのに、もっともっと味わっていたい。
だから、君にも少し感染ってしまえばいい。
重ねた唇は、きっとこの想いも届けてくれるから。
「あは」
遠慮なく組み敷いてしまったのに、彼女はやはり楽しそうに笑っていた。
「楽しそうだな」
あんなことを思っておきながら、ついつい彼女を冷やかしてしまう。そうしないと、熱くて、幸せで、耐えられそうにない。
ああ、なのに。
「だって。
はじめて、きみからキスしてくれたもん」
彼女の言葉はいとも簡単に、もう一度胸を焼き焦がす。
できるだけ、自分から彼女に触れないようにしていた。彼女のことは深く愛していたけれど、だからこそ無遠慮に彼女と愛し合うのは憚られた。
自分は大人で、彼女を支える者だ。それが遠慮なく凭れてきたら、きっと彼女は疎ましく思うだろう。
そう思って堪えるほど、ときに彼女が甘えてきてくれたときに、想いが抑えられなくなりそうになって。
自分のちっぽけな想像など、何の用も為さないことなど、とうの昔にわかっていたはずなのに。
『アタシもほしい。
きみと同じものを、きみと同じように』
なんだ。
彼女だって、愛が欲しかったのだ。
指が頬をなぞっても、今はもう熱くない。
「お父さんとお母さんの気持ち、ちょっとわかった気がする。
好きなひとと想いを確かめあうのって、すごく幸せな気持ちになれるから。
何回しても、飽きないくらい」
──きみに触れてもいいと、やっとわかったから。
「次はどこに行く?」
行き先を尋ねられるのは久しぶりのことだった。けれど、今ははっきりと答えられる。
こういうときは決まって、なにか特別なことをしたいときだから。
「綺麗な教会のあるところ」
それを聞いた彼女は少しだけ驚いたような顔をしたけれど、やがていっそう嬉しそうににこやかに微笑んだ。
「いいね。
ふふ、きみもすっかり我慢弱くなったね」
これから先に待っている未来の味を、噛み締めるように。
「我慢しなくていいって、わかったからな。
シービーが好きだって、壊れるくらい伝えたい」
「じゃあ、伝えて?
遠慮しないきみも、見たいな」
彼女がそれを望んでくれるなら、こんなに嬉しいことはない。
そうして育んだ愛は、夕にはもう離してくれなくて。
「昨日、夢を見たんだ」
小さな気後れや、些細な拘りなど簡単に飲み込んでしまうほど、それは大きくなっていって。抱えきれないくらいの想いは、交わし合うだけで満たされる。
「どんな?」
同じ朝を迎えて、太陽の下で愛を育てて、日が落ちればそれは、あなたに届く。
──なら、夜は一体、何をすればいい?
山も、海も、街も、全て走り尽くした。
もうなにも残っていないなら、行けるところはひとつだけ。
夢の中へ。
いつか来ると願い続ける、美しい夢の中へ。
「ロケットも何も要らなかった。鳥みたいに自由に、どこまでも続く星の海を飛んだよ」
想像の羽根を広げて、あなたを連れて行こう。
ここなら、あなたと同じ速さで飛べるから。
「…月に行った?」
「うん。
後ろを振り返ると地球があって、目の前には星空が広がってた。
…綺麗だったなぁ」
ああ、わかった。
君からもらった想い出の絵の具を、空想の筆でがむしゃらに塗り拡げて。
そうしてできた、夢の景色を──
「いつだってそう。素敵だね。きみの見る夢は。
…アタシにも見せて?夢の続き、一緒に見ようよ」
──君が綺麗だって、言ってくれたから。
それまで生きた退屈な時間を塗り潰すように、君の姿をカンヴァスに描いた。
空を埋め尽くすほどの煌めきの中で、君と一緒に踊り明かす。
何よりも美しい、そんなささやかな夢を。
だから、お願い。
──これからもずっと、君といさせて。
シービーに人生を捧げたいし受け取って欲しい
>──これからもずっと、君といさせて。
まで見た
水槽と一緒に世界一周してる…
リアルでいまだに脳を焼かれ続けてる人たちが大勢居るんだ
今ですらこんななんだから当時の熱量はどんなもんだったか…