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ウマ娘怪文書

【ウマ娘怪文書】「ゴールドシチーです。よろしく」 スマホを弄りながらぶっきらぼうに言い放った彼女は、きれいなブロンドヘアーだった

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1: 名無しさん(仮) 2024/01/04(木)22:00:31
「ゴールドシチーです。よろしく」
スマホを弄りながらぶっきらぼうに言い放った彼女は、きれいなブロンドヘアーだった。
高校1年生、冬休み真っ只中の大晦日。例年と同じように祖母の家へと帰省するとどこかで見たような気がするウマ娘がいた。確か、親戚の葬式に出席した時に居たはずだ。
「ほら、○○おばさんのところの子よ。少しの間預かってほしいって言われちゃって」
祖母はそう言うとおぼつかない足取りで台所へ向かった。こちらもいつも通り居間の仏壇に線香をあげてお祈りを終え、リビングに座る。祖母が大粒の苺を透明な皿に入れて持ってきてくれた。
「まぁ、せっかくだから仲良く食べなさい」
「ありがとうございます」
一緒に来ていた両親に目配せすると、二人は荷物をまとめてそそくさと寝室へと移動した。リビングには祖母と彼女、そして自分だけが残った。
「別に、気とか遣わなくていいから。逆に迷惑だし」
なにを話そうか悩んでいると、彼女から一言。どこかトゲを感じる言葉をかけられた。
2: 名無しさん(仮) 2024/01/04(木)22:00:52
当時の俺にとってのんびりとした楽園であった祖母の家に入り込んだ上につっけんどんな態度を取る彼女にあまりいい印象はなかった。その後も彼女は特に誰とも喋ることなくスマホを見つめていた。俺は言われた通り彼女を意識しないように過ごした。彼女は夜に弱いのか、11時を過ぎる頃には自分の寝室へ行ってしまった。そこから年明けまでの1時間、リビングにはいつも通りの日常があった。

元旦。俺達家族は全員6時近くに起床して朝風呂に入る。そして8時にはお雑煮を食べる。これが毎年のルーティンだった。
「シチーちゃん……起きてこないわね。ちょっと起こしてきてくれない?」
「いや、おばあちゃんかお母さんが行けばいいじゃないか」
「あんたが一番歳近いんだから、起こしてあげなさい」
聞けば彼女は中学生。やけに大人びているとはいえ、向こうだって歳上の異性に起こされちゃ目覚めが悪いだろう。そう思ったが大人から命令されれば仕方がない。いやいや寝室の扉を開けると部屋の電気は消したまま。布団の端から金色のウマ耳がはみ出していた。

3: 名無しさん(仮) 2024/01/04(木)22:01:14
「朝ですよ。シチー……さん」
「ん……あとちょっと……」
「お雑煮、冷めちゃいますよ」
「うるさい……眠い……」
「じゃあもうシチーさんの分まで食べちゃいますよ! 美味しいんですからね、おばあちゃんのお雑煮!」
昨日までの彼女の態度もあり、思わず声を荒げてしまう。けれどすぐに我に返り、慌てて言葉を続ける。
「あ、いや。とにかく食べないと損ですよって言いたくて……」
「……ぷっ……あはは! 必死すぎ。なんか面白いじゃん。ふわぁ……分かった。すぐに準備して行くよ。あと、無理して敬語使わなくていいから」
笑っていたほうがずっといいじゃないか、という言葉はなんとか喉元で堪えた。そんな言葉が出そうになるくらいには、彼女の笑顔は輝いていた。
「言うだけあって美味しいじゃん。ありがとね」
みんなでお雑煮を食べ終えた後、彼女は俺の脇腹を指で突きながらそう言った。悪い子じゃなさそうだ。
4: 名無しさん(仮) 2024/01/04(木)22:01:31
元旦のお昼すぎ。家族でおせちを食べ終えた俺はこれもまた毎年恒例となっている凧揚げをしに祖母の家のすぐ隣にある自然公園へと出かけようと準備をしていた。
「シチーちゃんも公園に行くみたいだし一緒に行けば?」
母にそう言われたが、なんとなくこちらから誘うのは気が引ける。そう思って玄関で凧糸をいじっていると、ジャージに着替えた彼女と目が合った。
「……なにそれ」
「凧だよ。これから凧揚げするんだ」
「へー。珍しいね、今どき」
彼女はあまり興味がないように靴を取り出して玄関の扉を開けた。こちらも置いていかれないように靴を履いて続く。
「シチーさんは何しに行くの?」
「ランニング。体、鈍ったら嫌だし」
「へー……走るんだ」
「なに? 走っちゃ悪い?」
露骨に機嫌を悪くした彼女に慌てて言い訳をする。やっぱり気性難ってやつなんじゃないだろうか。
「いや。周りにウマ娘の知り合いあんまりいないから、珍しくて」
「そう。ま、ウマ娘全員が走ってばかりいるわけじゃないけどさ。アタシは好きだよ」
5: 名無しさん(仮) 2024/01/04(木)22:01:54
公園に着くと、彼女は早速外側の舗装された道を走り始めた。俺は芝生の真ん中で凧を飛ばしながら時折走る彼女をぼんやりと眺めていた。
それからしばらくすると、何周か走り終えた彼女がこちらにやってきた。
「結構高く飛んでるじゃん。楽しい?」
「うん。でもまぁ、今日はそろそろおしまいかな。風が弱くなってきたし」
「ふーん……じゃあさ、1つお願いしてもいい? 今から公園一周、本気で走るから。アンタはストップウォッチで測ってくれない?」
快諾すると、彼女はストップウォッチを俺に差し出して準備運動を始めた。どうやらさっきまでのランニングは慣らしで、これからが本気の走りらしい。
「それじゃあよーい……スタート!」
掛け声とともに彼女は走り出した。正月ということもあり公園に人は少ない。彼女はフォームを乱すことなく、しかしヒトと比べるとずっと速い速度で公園を半周していた。そして、もう半周に差し掛かった時、明らかにギアが上がった。その速度も、フォームも、気迫も、遠くから見てもわかるくらいに本気だった。
6: 名無しさん(仮) 2024/01/04(木)22:02:10
最後の100メートルだろうか。俺は素早く地面を蹴り上げて加速し続けるゴールドシチーを見て、ゴールを射抜くその視線に触れて、強い衝撃を受けた。こんなにも"カッコよく"走る存在がこの世界にはいるんだと思った。
「……おーい? タイム、どうだった?」
「あ、うん。こんな感じ」
「うーん。ま、及第点ってとこか。……どしたん?ボーっとして」
「いや……君の走りがめちゃくちゃカッコよくてさ……びっくりしたんだ。今までウマ娘のレースとか見たことなかったし……」
「カッコいい? アタシが? ……そっかそっか。うん」
満足気に頷く彼女の毛先には汗が垂れており、そういった姿もクールだった。
「……あのさ、他には感想ない? 美しかったとかキレイだったとか」
「え。いや、もちろんキレイではあったけど……だからこそかな。本気で走る姿がただめちゃくちゃカッコよかったなぁって」
「ふふっ。ありがとね。あー……久々にスッキリした!」
日が傾き始めていた。彼女は暑くなったのか、少しだけジャージのチャックを下ろしてペットボトルの水を一気に飲み干した。
7: 名無しさん(仮) 2024/01/04(木)22:02:29
「アタシさ、親に預けられたんじゃなくて、逃げてきたんだ。アタシのことをまったく知らない人たちのところでのんびりしたくなっちゃって。無理言ってアンタのおばあさんのところに上がり込んだ。もちろん、数日したら帰るけど」
「大変なんだ、学校」
「それと、仕事ね。人付き合いもたくさんあるし」
「仕事? ……俺より若いのに凄いなぁ」
「あ、そっか。アンタはアタシがなにやってるのか知らないよね」
「うん。どういう仕事してるの?」
「ナイショ。でも、調べたら出るんじゃない? あ、そうだ。連絡先交換しとこ。たぶん次に会えるのは……アンタ、次いつここに来る?」
「例年通りならお盆の時期かな」
「お盆かぁ……うん。それなら調整ききそう。まぁ、お盆までは会えないだろうけど。スマホ出して。一応連絡先渡しとく」
「ありがとう……シチーさん」
「シチーでいいよ。歳上にさん付けされると落ち着かないから」
その日の夜、スマホで検索して彼女がモデルをしていることを知った。そのことを本人に聞くと、少し嬉しそうに笑みを浮かべていた。
8: 名無しさん(仮) 2024/01/04(木)22:03:03
「アンタさ、彼女とかいないの?」
それから半年近く経ったお盆の時期。宣言通り彼女はまた祖母の家に泊まりにきていた。
「いないよ。高校、男子校だし」
「へー……どうりで」
「それ、どういう意味?」
「言ったら傷つくだろうから言わないであげる」
「酷いことを言われてる気がするぞ……」
他の家族は買い出しに出ていて、リビングには俺と彼女の二人きり。それでも気まずくならない程度には二人の仲は深まっていた。
「それ、ウマ娘のレース?」
動画サイトで今年のダービーを見ていると、彼女が後ろから覗き込んできた。品の良い香水がふわりと香る。
「うん。君の走りを見てからちょっとずつ見るようになって」
「へー。いいじゃんいいじゃん」
「でもやっぱり、この前見た君の走りが一番カッコよかったな」
9: 名無しさん(仮) 2024/01/04(木)22:03:25
「……褒めたってなにも出ないよ?」
「いや、本心だから。そういえばシチーはレース出たりしないの? 日程が合うなら見に行きたい」
「んー……出るとしてもデビューはまだ先かな。模擬レースも地元でやるからここからじゃ遠いし……」
少しだけ悩んだ素振りを見せ、すぐに彼女はこちらを見つめ返す。
「そうだ。アンタ、将来の夢とかある?」
「いや、特には。急にどうしてそんなことを?」
「じゃあさ、トレーナー目指しなよ。それで中央のトレセンに入って、アタシのトレーナーになるの。そうすれば特等席でレースが見られるじゃん」
「いやいやいや! どんだけ大変なんだそれ! それに間に合わないって!」
「いけるいける! アタシ、多分デビュー遅いし。それにトレーナーって若いうちからなるもんでしょ」
「いや、そうだけど今から勉強とか大変だし……」
「モデルとレース両方やるアタシの担当やるならそれくらいやってもらわないと」
「なんで俺がシチー担当になる前提で話が進んでるんだよ……」
「なに? 嫌なの?」
「そういう問題じゃないでしょ」
10: 名無しさん(仮) 2024/01/04(木)22:03:38
しかし、彼女は本気だった。そしてその時具体的な夢を持たず、さらにちょうどウマ娘のレースの世界にのめり込み始めていた自分は少しずつトレーナーを目指すために必要な情報を集めるようになっていた。今思えば若さのなせる技である。
「……まぁ、ちょっとは考えておいてよ。アタシ、お風呂入ってくる。覗かないでよ?」
「そんなことしないよ……命危ないし」
「意気地なし」
「どう反応すれば良かったんだよ!」
「あははっ。冗談冗談!」
11: 名無しさん(仮) 2024/01/04(木)22:04:16
アイツと出会ってからもう3年が経っていた。最初はモデルの仕事も、友達付き合いも、ホンネにもタテマエにも疲れて荒れてたアタシは親戚の家でゆっくり休日を過ごす、なんてつもりだったけど。アイツに走りを見てもらって、アタシより歳上の癖に子供みたいに顔を輝かせて「カッコよかった」なんて言うアイツに出会ってアタシは変わった。やっぱり夢を諦められないと思った。アタシの走りで、お人形としてじゃない、そこで走っている"ゴールドシチー"を見てくれる人がいるんだって知った。もちろん、モデルとしての仕事が嫌になったわけじゃない。そっちにもプライドを持って挑んでいるつもり。けれど、やっぱりアタシにとって走りは夢なんだ。多分、アイツにとってもそうなったんじゃないかな。なってたら、いいな。
12: 名無しさん(仮) 2024/01/04(木)22:04:30
アイツと会うたびに……お互い忙しくて、大体半年に一回だけど……その度に一番印象に残っているレースを聞く。アイツは毎回、最後に「でも君の走りが一番だった」って言う。それを聞く度に胸が熱くなる。アイツがトレーナーになるための勉強を始めたって聞いた時、やっぱり同じように胸が熱くなった。きっと同じ夢を見てるんだって、そう思えたから。だから、アタシも負けずに頑張った。何度も頭を下げてマネジを説得して。なんとか時間を作って撮影の合間に練習をして。トレセンに合格した次の週に、アイツからも合格の報告が来て。多分、今までにないくらい嬉しくて。家族がいるリビングで思いっきり声を上げてガッツポーズした。
トレセンに入学してから1週間後。約束はしていたもののいざ現実になるとお互いどうやって声を掛け合えばいいのか分からなくて。連絡は取り合ってるけど学園ではまだ会っていない、みたいな状態が続いていた。そしたら、練習中にグラウンドをボーっと眺めるアイツを見つけた。アタシじゃない他のウマ娘を眺めているアイツに腹が立って、かつてのように脇腹を小突いてこっちを振り向かせる。
13: 名無しさん(仮) 2024/01/04(木)22:04:52
「せっかくお互いに約束を守ったのに浮気ってわけ?」
「あ、シチー……浮気ってなんだ、酷いな」
「アタシの模擬レース、明後日だから。見に来てよ」
「もちろん、見に行くよ」
本当は不安だった。アンタのあの子供みたいな純粋な感動が他のウマ娘に奪われたらって思って、胸が苦しかった。なんでこんなこと考えちゃうんだろうね。アタシはアンタの遠めの親戚ってだけなのに。
模擬レース当日も、アタシの不安はそのままだった。アイツはアタシたちが出走する前のレースも真剣に見つめていて、何度もメモを取っていた。やっぱり、アタシ以外のウマ娘がいいのかな……
それでもやっぱり、アタシの中で夢は燃えていた。ゲートに入ると体が熱くなる。ヒリつく空気で毛先が逆立って、胸の奥から闘志が湧き上がる。
ゲートが開く。蹄鉄が土を鳴らす音。漏れ出る呼吸。風の音。まるでアタシたちに残された音はそれだけみたいだ。まずは控えて第一コーナー。ここからならバ群がよく見える。焦らなくてもアイツはアタシを見てる。ならアタシもいつも通り全力をぶつければいい。
14: 名無しさん(仮) 2024/01/04(木)22:05:22
少しペースを落としつつ先頭との距離を測る。大丈夫。アタシなら届く。先頭に釣られて周りのペースは上がっているけど、アタシはこのままで大丈夫。
第四コーナーが近づく。一周終わって最後の直線。体力が切れたか先頭のウマ娘が垂れてきた。周りもかなりバテ気味だ。対してアタシにはスパートするだけの体力は十分。この分なら外側を回ってゴールに行ける。
一歩。思い切り力を込めて踏み進める。加速して風の音が変わる。行ける。もう一歩。さらに力を込めて前に進む。届く。もう誰にも止められない。大地を蹴って、体が弾む。力が湧き上がる。だって、ここにいる誰よりもアタシは前にいたい。勝ちたい。走りたい。これはきっとその感情よりも剥き出しで、醜くて、それでもきっと……
ここにいる誰よりもアタシは強くて、速くて、そして……
「カッコいい……でしょ?」
走り抜けた先で見えたアイツの表情は、あの時と変わらず、子供みたいだった。
「一着はゴールドシチー!ゴールドシチーが一着です!」
息を整え、水を飲んで。アタシは、アイツのそばに駆け寄った。
15: 名無しさん(仮) 2024/01/04(木)22:05:46
「ね、どうだった? スカウトしたくなったっしょ?」
「もちろん! やっぱりシチーが一番カッコいいよ」
「ふふん。それじゃ、改めて……」
アイツと向き合って、今にもニヤけそうな口元を必死に誤魔化して。"トレーナー"に大事な最初の挨拶を。
「ゴールドシチーです。よろしく、トレーナー!」
17: 名無しさん(仮) 2024/01/04(木)22:07:04
シチーさんに脳を焼かれたいしシチーさんの脳も焼きたいし遠めの親戚くらいの関係で仲良くなりたかったので書きました
めんどくさかわいいシチーさんと実家で会いたい
18: 名無しさん(仮) 2024/01/04(木)22:08:03
幼馴染トレーナーは私の性癖に合っていますよ
19: 名無しさん(仮) 2024/01/04(木)22:10:19
…ああ!って感じ
21: 名無しさん(仮) 2024/01/04(木)22:10:51
なんか違うんだべなあ…王道すぎるというか…ひねりがないんだべ…
22: 名無しさん(仮) 2024/01/04(木)22:12:42
いい文章だった
もっと早くトレーナーになってて専属じゃなくなっちゃう展開じゃなくて良かったねシチー
23: 名無しさん(仮) 2024/01/04(木)22:14:29
こういうのでいいんだよ…
24: 名無しさん(仮) 2024/01/04(木)22:16:50
入学が遅れてトレーナーの初めては既に他のウマ娘に...これだべ!
25: 名無しさん(仮) 2024/01/04(木)22:27:38
消えるべ!闇のわ
26: 名無しさん(仮) 2024/01/04(木)22:30:35
単に曇らせたいだけのわだすは消えて当然だべ
29: 名無しさん(仮) 2024/01/04(木)22:54:28
曇らなくて心底安心した
30: 名無しさん(仮) 2024/01/04(木)22:54:31
シンプルに良かった
こういう王道が良いんだよ
31: 名無しさん(仮) 2024/01/04(木)23:00:37
シチーさを褒めるときは「カッコいい」っていうことがおおいトレーナーさんだども
シチーさのことはじめて「キレイ」って褒めたのは初えっちするときシチーさの裸体を見たときで
シチーさのことはじめて「かわいい」って褒めたのは絶頂してだらしなく崩れた顔を見たときなんだべ?
わだすくわしいからわかっちゃうんだべ
32: 名無しさん(仮) 2024/01/04(木)23:06:05
この二人の二人三脚をもっと見ていたいべ…


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