1: 名無しさん(仮) 2024/04/06(土)13:28:22
「トラン、大丈夫か?」
「ウチは平気だけど迎撃用ガジェットが全部やられた。電磁パルスでブッ壊れてる」
「あっちも本気か……。なぁトラン、やっぱり──」
「それ以上言ったら怒るよトレちゃん」
トレセン学園の裏山、その藪の中でトランセンドとその担当トレーナーが息を潜めながら周囲を伺っていた。
トレーナー狩り。
入学を控えたシーズンは闇の勢力も新人を欲している。そのためこの時期は、担当トレーナーが拉致される事件が頻発するのだ。
10日もせずにトレーナーは帰って来るし、身体にも影響は出ないのだが、平気な者は少ない。
なお同時期には地方で目覚しく成長するウマ娘が現れるのだが因果関係は不明とされている。
そしてこのトランセンドもまた、トレーナー狩りによって山狩りが如く追い込まれていた。
情報屋のトランセンドにとってトレーナー狩りが来る事を事前に察知するなぞ朝飯前。今回は北陸方面から闇の勢力が来る事を察知して、コパノリッキーやワンダーアキュートに共有したのだが……。
「ウチは平気だけど迎撃用ガジェットが全部やられた。電磁パルスでブッ壊れてる」
「あっちも本気か……。なぁトラン、やっぱり──」
「それ以上言ったら怒るよトレちゃん」
トレセン学園の裏山、その藪の中でトランセンドとその担当トレーナーが息を潜めながら周囲を伺っていた。
トレーナー狩り。
入学を控えたシーズンは闇の勢力も新人を欲している。そのためこの時期は、担当トレーナーが拉致される事件が頻発するのだ。
10日もせずにトレーナーは帰って来るし、身体にも影響は出ないのだが、平気な者は少ない。
なお同時期には地方で目覚しく成長するウマ娘が現れるのだが因果関係は不明とされている。
そしてこのトランセンドもまた、トレーナー狩りによって山狩りが如く追い込まれていた。
情報屋のトランセンドにとってトレーナー狩りが来る事を事前に察知するなぞ朝飯前。今回は北陸方面から闇の勢力が来る事を察知して、コパノリッキーやワンダーアキュートに共有したのだが……。
2: 名無しさん(仮) 2024/04/06(土)13:28:55
「赤ニシンか?」
「いや、隠れ蓑かな。訛りからすると多分、九州。ウチと同じ情報を掴んで1日早く襲撃してきたんだわ」
「キレ者がいるな……」
「お、担当したくなった?」
「トランが引退するまでそれは無い」
「Fooo、嬉しいねぇ。こんな場所じゃなけりゃハグしてたよん」
どうやら今回は頭脳戦になるようである。トランセンドの情報屋としての才覚、そして相手を掻い潜るトレーナーの頭脳。
それらを以て九州から来たらしき闇の勢力を迎撃できるかどうか、そこにかかっている。
おまけに今回は時間をかけて諦めて貰うという方法が取れない、明日には北陸から来る別の勢力が現れるからだ。
そうなればトラン1人ではもうどうにもできない、残った道は大岡裁きのように両側から引っ張られるトレちゃんを指を咥えて見る事のみ。
「クソッタレ、スマホもシネマガンもやられてる。ウチのデジタル機器が全部おじゃんだ」
「……」
「いや、隠れ蓑かな。訛りからすると多分、九州。ウチと同じ情報を掴んで1日早く襲撃してきたんだわ」
「キレ者がいるな……」
「お、担当したくなった?」
「トランが引退するまでそれは無い」
「Fooo、嬉しいねぇ。こんな場所じゃなけりゃハグしてたよん」
どうやら今回は頭脳戦になるようである。トランセンドの情報屋としての才覚、そして相手を掻い潜るトレーナーの頭脳。
それらを以て九州から来たらしき闇の勢力を迎撃できるかどうか、そこにかかっている。
おまけに今回は時間をかけて諦めて貰うという方法が取れない、明日には北陸から来る別の勢力が現れるからだ。
そうなればトラン1人ではもうどうにもできない、残った道は大岡裁きのように両側から引っ張られるトレちゃんを指を咥えて見る事のみ。
「クソッタレ、スマホもシネマガンもやられてる。ウチのデジタル機器が全部おじゃんだ」
「……」
3: 名無しさん(仮) 2024/04/06(土)13:29:15
トレーナーは地面に寝転がりつつ顎に手を当てて考える。
方法は、ある。だがこれは諸刃の剣、ハッキリ言って危険だ。主に自分の信用とかが。
しかし同時に時間が無い。地方出身なだけあってか向こうの山狩りは確かなもの、地面から伝わる足音と振動、枯れ葉を踏む音が少しずつ近付いている。見つかって捕まるのは時間の問題だ。
「……トラン、先に謝っておく、ごめん」
「え?」
「君はきっと俺の事を失望すると思う。ただ逃げ場はもうそこしかない」
「何だか分からないけど、それ以外に道が無いならしゃーないんじゃない? ウチはトレちゃんを信じるよ」
「さんきゅ」
「Your welcome」
「ならトラン、俺を担いで下山できるか。トップスピードで」
「行先は?」
ニヤリと伊達メガネの奥の目を歪ませて笑うトランセンド。
対するトレーナーは、トレセン学園から少し離れた場所にある、とある繁華街を指定した。
方法は、ある。だがこれは諸刃の剣、ハッキリ言って危険だ。主に自分の信用とかが。
しかし同時に時間が無い。地方出身なだけあってか向こうの山狩りは確かなもの、地面から伝わる足音と振動、枯れ葉を踏む音が少しずつ近付いている。見つかって捕まるのは時間の問題だ。
「……トラン、先に謝っておく、ごめん」
「え?」
「君はきっと俺の事を失望すると思う。ただ逃げ場はもうそこしかない」
「何だか分からないけど、それ以外に道が無いならしゃーないんじゃない? ウチはトレちゃんを信じるよ」
「さんきゅ」
「Your welcome」
「ならトラン、俺を担いで下山できるか。トップスピードで」
「行先は?」
ニヤリと伊達メガネの奥の目を歪ませて笑うトランセンド。
対するトレーナーは、トレセン学園から少し離れた場所にある、とある繁華街を指定した。
4: 名無しさん(仮) 2024/04/06(土)13:29:37
「おお、本当にウマ娘の嬢がいる……」
「すみません、クーポンでお願いします」
山を下りた先、トランの逃げ足を使って追っ手から逃れた先にあったのはとある居酒屋だった。
むちウマ居酒屋。
少しえっちな居酒屋で、文字通りむっちりした肉感のウマ娘の嬢が相手をしてくれる……、要するにキャバクラである。昨今のパンデミックの影響でランチ営業もしているが、本命はやはり夜の店なのだ。
ちなみにウリは「密着する太腿接客」や「圧倒的迫力のミーティブルうまぴょい伝説」 との事。
「……クーポン? トレちゃん常連さん?」
「いや、学園に就職した時に1回行っただけ。こいつは先輩トレーナーが『もう使わない』って譲ってくれたヤツだ」
もう覚えてないなー、と苦笑するトレーナーを見て、何故かトランセンドはモヤッとした。そんな自分に気付いた伊達メガネの少女は静かに首を横に振った。
何を考えているのだ、自分は友人、親友、戦友だったろうに。変な独占欲を出すなぞ間違っている。
「すみません、クーポンでお願いします」
山を下りた先、トランの逃げ足を使って追っ手から逃れた先にあったのはとある居酒屋だった。
むちウマ居酒屋。
少しえっちな居酒屋で、文字通りむっちりした肉感のウマ娘の嬢が相手をしてくれる……、要するにキャバクラである。昨今のパンデミックの影響でランチ営業もしているが、本命はやはり夜の店なのだ。
ちなみにウリは「密着する太腿接客」や「圧倒的迫力のミーティブルうまぴょい伝説」 との事。
「……クーポン? トレちゃん常連さん?」
「いや、学園に就職した時に1回行っただけ。こいつは先輩トレーナーが『もう使わない』って譲ってくれたヤツだ」
もう覚えてないなー、と苦笑するトレーナーを見て、何故かトランセンドはモヤッとした。そんな自分に気付いた伊達メガネの少女は静かに首を横に振った。
何を考えているのだ、自分は友人、親友、戦友だったろうに。変な独占欲を出すなぞ間違っている。
5: 名無しさん(仮) 2024/04/06(土)13:30:31
幸いにもどうやらトレーナーの目論みは当たったようで、入口で少し騒ぎが起きたがすぐに静かになり、今は2人で美味しく夕餉を頬張っている。闇の奴らも店に迷惑をかける気は無いようだ。
「金魚飯、ゼリー揚げ、まんばのけんちゃん……。おお、地方料理がこんないっぱい」
「地方に帰るお金を稼ぐため、ここでバイトしてた子が自作した賄いを元にしてるんだってさ。本場のとは少し違うけど、ほぼ同じ味が再現されてるんだってさ」
「へー」
「ああ、思い出した。1度だけここに来た時、女の子よりも飯に熱中しちゃってさ。先輩トレーナーに怒られたんだった。嬢が可哀想だろって」
本当に可哀想なのは思春期なのに近しい大人がキャバ通いしてた担当の子では? トランセンドは訝しんだ。
なおそのトレーナーが誰かトランは検討がついている。担当と寿退社した、というのは言うまでもあるまい。
「金魚飯、ゼリー揚げ、まんばのけんちゃん……。おお、地方料理がこんないっぱい」
「地方に帰るお金を稼ぐため、ここでバイトしてた子が自作した賄いを元にしてるんだってさ。本場のとは少し違うけど、ほぼ同じ味が再現されてるんだってさ」
「へー」
「ああ、思い出した。1度だけここに来た時、女の子よりも飯に熱中しちゃってさ。先輩トレーナーに怒られたんだった。嬢が可哀想だろって」
本当に可哀想なのは思春期なのに近しい大人がキャバ通いしてた担当の子では? トランセンドは訝しんだ。
なおそのトレーナーが誰かトランは検討がついている。担当と寿退社した、というのは言うまでもあるまい。
6: 名無しさん(仮) 2024/04/06(土)13:30:54
「地方の知らない美味い飯がいっぱいあって、あれもこれもって食うに食いまくってたんだ。いやー、良い思い出だ」
「ふむふむり。色気より食い気だったか」
「まーね」
羊羹ファンタジアをデザートに突くトレーナーを見て、トランセンドは今度は安堵する。
ああ駄目だ、やっぱりそうだ。1回目は見て見ぬフリをしたが、2度目は誤魔化せない。
「じゃあさ、トレちゃん。明日もここに来よう?」
「良いのか? ここキャバだぞ? 女の子が来るような場所じゃないぞ?」
「ウチもう18歳だぜ? 1人でも入れるよん。それにぃ」
ならもう誤魔化すのはやめよう。
代わりに、こうして尻尾を彼の腕に絡めよう。
逃がさないよう、幾重にも罠をはってハ×てしまおう。
「ウチの知ってるここにない郷土料理が何か、調べたいしねん」
「……なら地方、一緒に来るか? 北陸なら近いタイミングでダートレースがあった筈だし」
「オーキードーキー♪」
「ふむふむり。色気より食い気だったか」
「まーね」
羊羹ファンタジアをデザートに突くトレーナーを見て、トランセンドは今度は安堵する。
ああ駄目だ、やっぱりそうだ。1回目は見て見ぬフリをしたが、2度目は誤魔化せない。
「じゃあさ、トレちゃん。明日もここに来よう?」
「良いのか? ここキャバだぞ? 女の子が来るような場所じゃないぞ?」
「ウチもう18歳だぜ? 1人でも入れるよん。それにぃ」
ならもう誤魔化すのはやめよう。
代わりに、こうして尻尾を彼の腕に絡めよう。
逃がさないよう、幾重にも罠をはってハ×てしまおう。
「ウチの知ってるここにない郷土料理が何か、調べたいしねん」
「……なら地方、一緒に来るか? 北陸なら近いタイミングでダートレースがあった筈だし」
「オーキードーキー♪」
7: おわり 2024/04/06(土)13:31:10
暫く後、居酒屋の常連となったトランは嬢の子達に重宝される情報屋として名を馳せていた。
戦争の情報は娼館に集まるとはよく言ったものである。
そしてトレちゃんが好きな郷土料理が何なのかを見抜いた彼女が、得意料理になるまで血の滲むような努力を密かに重ねる事になったのは……、今回は割愛。
戦争の情報は娼館に集まるとはよく言ったものである。
そしてトレちゃんが好きな郷土料理が何なのかを見抜いた彼女が、得意料理になるまで血の滲むような努力を密かに重ねる事になったのは……、今回は割愛。
8: 名無しさん(仮) 2024/04/06(土)13:35:38
>>7
>そしてトレちゃんが好きな郷土料理が何なのかを見抜いた彼女が、得意料理になるまで血の滲むような努力を密かに重ねる事になったのは……、今回は割愛。
健気じゃん
>そしてトレちゃんが好きな郷土料理が何なのかを見抜いた彼女が、得意料理になるまで血の滲むような努力を密かに重ねる事になったのは……、今回は割愛。
健気じゃん
9: 名無しさん(仮) 2024/04/06(土)13:36:31
九州の闇の者というと小倉か…
11: 名無しさん(仮) 2024/04/06(土)13:38:28
>>9
地方だから佐賀じゃない?
地方だから佐賀じゃない?
12: 名無しさん(仮) 2024/04/06(土)13:39:40
荒尾競馬が存続してたらなぁ…
13: 名無しさん(仮) 2024/04/06(土)13:42:49
>中津競馬が存続してたらなぁ…
15: 名無しさん(仮) 2024/04/06(土)13:47:34
随分と、懐かしい居酒屋だ……
18: 名無しさん(仮) 2024/04/06(土)14:00:40
金魚飯は人参が金魚に見えるから
ゼリー揚げは銭型に整えた揚げ物で、「ゼニ」が「ゼリー」に訛ったから
まんばのけんちゃんは「高菜のけんちん汁」(まんばは高菜の一種)から
ゼリー揚げは銭型に整えた揚げ物で、「ゼニ」が「ゼリー」に訛ったから
まんばのけんちゃんは「高菜のけんちん汁」(まんばは高菜の一種)から
こういうの面白くて有難い
19: 名無しさん(仮) 2024/04/06(土)14:19:57
迎撃用ジェットパックの時点で察したわ!
21: 名無しさん(仮) 2024/04/06(土)14:25:29
トレーナー狩りって明言されるまでロボ乗ってるのかと思った…
23: 名無しさん(仮) 2024/04/06(土)14:45:15
ウマ娘イーターと同じ感覚がする
25: 名無しさん(仮) 2024/04/06(土)14:54:07
羊羮ファンタジアって何だよって調べたら地元のお菓子だった…
何それ知らない…
何それ知らない…