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2024.10.17-12:16:42

ウマ娘怪文書

【ウマ娘怪文書】織姫と彦星の話を初めて聞いたとき、私の頭には腑に落ちないという思いだけが残った。いくら愛し合っていようと、時間と距離は人の心を冷めさせる。一年も会わなければ、きっと忘れてしまうだろう。

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1: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:04:16
織姫と彦星の話を初めて聞いたとき、私の頭には腑に落ちないという思いだけが残った。
いくら愛し合っていようと、時間と距離は人の心を冷めさせる。一年も会わなければ、きっと忘れてしまうだろう。
だから、私は離さない。忘れない。あなたがしてくれたことを。あなたにしてしまったことを。
それだけが、私に許されたたった一つの生き方なのだから。
2: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:04:53
そんな二人の逢瀬が近い、白鳥が河を渡る夏のこと。
「…はぁ」
部屋に鎮座した大きな天体望遠鏡を見て、それに負けないくらい大きなため息をついた。
どうやっても、部屋の半分を越えてしまう。今はここにいない、少し強引だけれど放っておけないルームメイトの顔を思い浮かべる。もしなんとかして私のスペースにこれを収めたとしても、彼女がいつもしている配信の画面に映り込むことは避けられないだろう。やはりここには置けない。けれど、他に仕舞う場所の当てがなかった。
「…どうしよう」
解体した部品を自分のベッドにひとまず避難させて、もう一度大きな溜め息をついた。
3: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:05:06
それもこれも、全部私の問題だ。自分で解決しなければならない、些末なこと。
「何かあったのか?」
「…どうしてそう思うの?」
「いや、なんか難しい顔してたから」
だから、やはり彼がおかしいのだ。何も言っていないのにそんなことまで察して、気を回してくるなんて。
「…今度、ロブロイさんが図書室で企画をすると言っていて。天体について取り上げるそうだから、実家にある望遠鏡を観測のために貸そうと思ったのだけれど…置く場所がないの。
それだけ。もういいでしょう」
彼が何かまた言う前に、部屋を出てしまおうと思った。どうせ彼は余計な気を遣うから、その気も起きないようにしようと、そう思っていたのに。
「待った」
「…手伝いならいい」
「逆だよ。俺の頼みを聞いてほしい」
4: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:05:21
本当に、厄介だ。助け舟を出しても断るけれど、頼まれ事なら断らないだろうということも、きっと彼には見透かされている。
「…なに」
「ありがとう。
実はさ。俺の祖父さんの実家に納屋があって、片付ける人手がほしいんだ。
悪いんだけど、頼まれてくれるか。望遠鏡はそこに置いて大丈夫だから」
「…いいわ。準備してくるから待っていて」
勝手についてくるだけ。私がそう決めて、彼も納得した。
その在り方は変わっていない。今回も私の望むやり方で、私のやりたいことを助けてくれた。
だからこそ、腑に落ちない。どうしてそこまでするのか。
放っておけばいいのに。見えない星の光を追いかけることしかできない、物狂いのことなんて。
5: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:05:40
彼の祖父は、腰の曲がった穏やかな老人だった。身体こそ思うように動かないのだろうけれど、その目と声には静かながらも力があった。
「昔は畑もやってたんだけど、最近は家の庭で手一杯みたいでさ。でも、この庭だけは守っていきたいんだって。お祖母ちゃんも好きだったから」
彼の視線の先には、優しい笑顔のままで時間を止めた老婆の写真があった。
彼もきっと、祖父とこの家が好きなのだろう。暖かい想い出で満たされた、この家の優しい空気が。彼の言葉の温度は、ただの義理で見舞いに来ているひとのものとはどうしても思えなかった。
だからこそ、やはり躊躇いが残る。そんなところに、私が入りこんでもいいのだろうか。けれど迷っている間にも脚は動いていて、目的地の納屋の前に辿り着いてしまった。
6: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:05:54
そこが物置きではないことはすぐにわかった。薄れてはいるけれどかわいらしく塗られた赤い屋根と、その上に突き出た煙突は、ここが人の住むための場所であったことを示している。
「昔はこの辺一帯が、うちの畑だったんだって。広すぎてうちの人だけじゃ耕しきれないから、住み込みで手伝ってもらう人もいて、その人たちのための小屋だって聞いた。
でも、そういう時代はどんどん過ぎてって。使われないまま、建物だけ残ってるんだって」
据付のベッドに、小さな窓がひとつ。入口の近くは物置代わりに使わないものが置いてあったけれど、鮮やかな壁紙が張られた奥はまだ暮らしの名残を残している。
「…そう。
何から片付ければいいの」
彼の話をそれ以上聞かずに、要件だけを質問した。これ以上聞くと、また察されてしまうと思った。
ここを見て、心が躍ってしまっていることを。
7: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:06:11
「ありがとうな、手伝ってくれて」
「置かせて貰うから、念入りに掃除しただけよ。汚いままだと気になるし」
誤魔化すように早口になっている自分に気づいて、また恥ずかしくなる。柔らかな電球の光に照らされた部屋は、青い天体望遠鏡を置くとなお居心地がよく思えた。
「いつでも来ていいよ」
「え?」
「ここと裏口の鍵、渡しとくから。望遠鏡だけじゃなくて、他のことにも好きに使って」
差し出された二つの鍵を、簡単には受け取れなかった。受け取りたいと思う一方で、ここを片付けている最中の彼の優しい表情が、頭から離れなかった。
「…本当にいいの?ここは貴方たちの場所でしょう」
「いいよ。俺が持ってても持て余しそうだし。
でも、この家、好きなんだ。だからちゃんと使ってくれる人に使ってほしい」
だから、やめて。そんな優しい目で私を見ないで。
そんなもったいないこと、しないで。
「それにさ。やっと、アヤベのこと少しわかったような気がしたから」
8: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:06:22
「…ありがとう。
なら、使わせてもらう」
そう答えたときに、彼の目を見られなかった。彼の提案を受け入れたのは、面と向かって受け止めることより、断るのがもっと怖かっただけだ。
「…気を遣いすぎなのよ、貴方は。
自分が潰れてしまったらどうするの」
漸く、顔を上げる。彼の表情は、少し呆れたような生暖かい笑顔に変わっていた。
「…」
「…なに。おかしなことは言っていないでしょう」
そんな表情にむっとして、ささやかな抗議をしてみる。けれど、彼はそれすら楽しむように、またにこりと優しく微笑んだ。
「ううん。ありがとう。
でも、大丈夫だよ。俺はちゃんと楽しい」
その表情がやはり眩しくて、また目を伏せた。
9: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:06:35
淡いランプの灯りが、天球儀と望遠鏡を照らし出す。小さな灯りで事足りてしまうような狭い場所だったけれど、好きなものに囲まれた故の狭さと思うとなんだか心地よかった。
その小さな机の上に便箋を出して、さらさらと言付を残す。
『片付けは私の方でやっておきます』
居心地のよさに負けて結局は小屋の中に私物を置いてしまっているけれど、大切な場所を使わせてもらっているのを申し訳なく思う気持ちは変わらなかった。けれどそれを面と向かって伝えるのはなんだか気恥ずかしくて、代わりにお礼状のようなものを書いておいたのが始まりだった。
ひどく簡素な書付だったけれど、その裏に書かれた彼の返事は随分と楽しそうな字をしていた気がする。

『もう夜は冷えます。体に気をつけて』
ただそう書き足すのに、随分かかった。

10: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:06:53
天馬が空に上る秋のこと。
あの子もそこに行ってしまった。空の上よりもなお遠い、もう二度と会えない場所へ。
『運命は、私が持っていくから』
闇夜に瞬く、たったひとつの道しるべ。私にできることは、ただそれを目指して走り続けることだけだったのに。
『だから、お姉ちゃんはもう、お姉ちゃんの人生を生きていいの。
めいっぱい、幸せになって』
夜が明けるのが怖かった。星が見えなくなってしまうのが怖かった。
闇夜に慣れきってしまった目が、優しくて、あたたかい光で焼き尽くされるのが怖かった。
優しくしてほしくなんかなかった。ずっとひとりでいたかった。幸せを奪い取って生まれてきた私が、幸せになんかなっていいはずがないのだから。
なのに。
あの子も、カレンさんも、オペラオーもドトウも、トップロードさんも、あのひとも、みんな。
どうして、こんなに優しいの。私にはそれを受け止める資格も、覚悟も、ないのに。
11: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:07:03
私には何も返せないのに。あの子のために、他のぜんぶを無視して、蔑ろにしてきたのに。あの子にさえも、また助けられて。
なのに、優しくされた。一緒に競い合って、隣で支えてもらって、見守ってくれて、嬉しかった。
嬉しいと思ってしまった自分が、嬉しいと思う以上に憎かった。

机の上に、便箋が一枚だけあった。
『空っぽでもいい。埋める手伝いならいくらでもする。
だから、君と一緒に頑張らせてほしい』
あのひとの、優しい笑顔。眩しくて、目を背け続けてきたはずなのに、今もはっきりと瞼の裏に描ける。
ぜんぶ、覚えている。あの子が運命から解き放ってくれた私の手を掴んだ、もう一回りだけ大きな掌も。

12: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:07:29
「…ぅぅううっっ…!」
また、涙が零れた。あの子を喪ったときと同じように。
でも、この気持ちはあのときと半分同じだけど、もう半分は違う。
私は、嬉しいんだ。きっと。
生きてていいんだって言われて。一緒に生きてみようって言われて。

こんな私のために生きるのは、まだ難しい気がするけれど。
こんな私を支えてくれたひとたちが、誇りに思えるような私になる。
そのためなら、少しだけ頑張れる気がした。

13: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:07:47
狩人が赤く輝く冬のこと。
その腰に光る短剣の話を、ぽつりと彼が呟いた。
「アヤベが教えてくれた本に書いてあった。
星の光に照らされたり、刺激されたり。星雲って、星の光がないと輝けないんだって」
物が増えていっそう狭い小屋に、椅子が二脚。自分の人生がなんなのかわからない私に彼が寄り添うようになって、自然とこの場所に一緒に来ることも増えた。
「俺と同じだな。アヤベがいなかったら、俺はG1トレーナーになんかなれなかった。
…だから、アヤベはちゃんと返せてるよ」
自分に何ができるのかと問い続ける私に、彼は精いっぱいに答えを返してくれた。自分だって同じことをずっと、考えていたはずなのに。
「…星雲がなければ、星は生まれないわ」
勝手に支える。
そう彼が言ってから、もう随分経った。あのときはこんなことになるなんて、少しも想像していなかったけれど。
自分の人生のことは、まだよくわからない。そのわからない人生に、彼がどうしてここまで親身になってくれるのかも。
でも、この時間は心地良い。それだけは、はっきりしていた。
14: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:08:04
乙女の純白が映える春のこと。
「物、増えたね。随分」
少しからかうように、けれどずっと嬉しそうに、彼が呟いた。
「置いていいと言ったのは貴方でしょう」
「うん。だから、まだ余裕あるかなって思ってさ」
トップロードさんのくれたアクセサリー。オペラオーが贈ってきた花束。
誰かからもらったものが、確かに増えた。大切にしまっておきたい、たくさんのものが。
「梅の花が、今年は綺麗に咲いたって」
おかげでこの部屋も随分と狭くなったけれど、息苦しいと感じたことはない。

机の上に、梅の花を一輪活けた。
一番綺麗に咲いた花だと、笑う彼の顔を思い出しながら。

15: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:08:19
もう一度、白鳥が羽ばたく季節のこと。
平凡な朝を迎えて、当たり前のように誰かがそばにいることを、夜の訪れと同じように待ち望むようになった。
生きていることが、楽しいと感じるようになった。
「…いいのかな」
影の中から返事が来ることはない。ランプの灯りはただ、置きどころのない指の影を長く伸ばしている。
まだ、決心がつかない。自分の気持ちを言葉にすることには、今でも慣れないままだ。まして、ずっと悟られないように秘めてきた想いなら、なおさら。

「…いいのかな」
兎のぬいぐるみに話しかける。柔らかいものが好きと言った私に、カレンさんがくれたものだった。彼女ならきっと、こんな想いは事もなげに告げてしまえるのだろう。
私はいつもそればかりだ。皆が当たり前にしてきたことを疎かにしてきたつけが今になって回ってきている。

16: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:08:51
空を見上げる。街の灯りで星は見えない。
封筒から便箋を取り出す。
あのひとがくれたもの。
これが最後の1ページ。

『あの丘で待っています』
私には、これがせいいっぱいだった。
けれど、心はもう決めていた。

17: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:09:01
東の空から昇る星たちを見ていると、少し息を切らした彼が来た。
「…あれだけでよくわかったわね」
「これでもアヤベのトレーナーだからな」
隣にゆっくりと座った彼にどう切り出したらいいかわからなくて、結局は何も言わずに、ペンダントを握った手だけを目の前に差し出した。
「それは?」
「名前。
あの子に贈られるはずだった、名前」
彼の表情が俄に硬くなる。当然だろう。
私にとってそれが何を意味するのか、知らないはずはないのだから。

「いつか見ようと思っていたけど、結局先延ばしにしてた」
初めは、彼女のために全てを捧げた果てにという決意のため。今は、あの子のくれたものの重さに、真っ直ぐ向き合うのが怖いから。
でも、それと同じくらい、受け止めてあげたいとも思っている。私のことをあんなに想ってくれたあの子が、遺してくれた数少ないものだから。

18: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:09:20
独りでいい。独りがいい。
前までは、そう思っていた。
「まだ、怖いの。向き合うって決めたけど。
…だから、一緒に見て」
でも、大切なことは、誰かの力を借りてみてもいいんだって気づけたのは、あの子のおかげだから。

そっと、ペンダントを開く。星が照らすだけの夜の中でも、その文字ははっきりと見えた。
「…綺麗な名前」
「…ええ。そうね。本当に綺麗」
胸のつかえが取れて、心からの喜びが湧き上がってくる。
ああ。やっと。
やっと、あなたの名前を呼んであげられる。

19: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:09:38
「あの子のことを感じるようになって、一年くらい経った頃だったと思う。
お母さんがくれたの。きっとあの子は、あなたには知ってほしいと思っているからって。
…正直に言うとね、怖かったの。何にもなれない、輝けない私が、そんな重いものなんて受け止められるわけないって」
生まれてくることさえなかった名前だと、一蹴するひともいるかもしれない。
でも、私は怖かった。あなたは確かに、ここにいたのだから。
「あの日のこと、覚えてる?
夢を見ていたの。私が奪ってしまった、あの子の幸せな夢」
生きていくのが楽しくなるにつれて、その怖さはどんどん大きくなっていった。あなたが私にくれたものがどれだけ重いか、それを私が今までどれほど粗末にしてきたのか、わかってしまうから。
「でも、あの子が最後に、私をもう一度送り出してくれた。
生まれ変わったんだと思う。そのときに」
でも、それと同じくらい、あなたのことをもっと知りたいと思った。
もう会えなくなってしまったから。またいつか会えるときに、胸を張っていたいって思えるようになったから。
20: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:09:56
幸せになるのが怖かった。
振り返らずに幸せになって、忘れてしまうのが怖かった。
私は、あの子を蹴落として生きているんだって。
あの子のために苦しむことが、あの子にしてあげられる、たった一つの償いなのだと。
痛いままでいい。忘れてしまうくらいなら、苦しいほうがずっといい。
この痛みがある限り、あの子のことを忘れることはないのだから。
「…今まではずっと、ごめんなさいって言い続けるだけだった。
でも、今ならちゃんと、ありがとうって言える気がするの。
私に命をくれてありがとうって。もう一度私を産んでくれて、ありがとうって」
でも、もう大丈夫だから。
私が幸せになれるのは、あなたがくれたもののおかげだって。
やっと、気づけたから。
21: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:10:08
ありがとうね。ずっと、ずっと、この空の上から見守ってくれたんだもんね。
あなたにもらった命なのに、私のために生きてもいいんだって、言ってくれたんだよね。
お姉ちゃん、幸せだったよ。こんなに優しい子のお姉ちゃんになれて。
なのに、ごめんね。
ずっと、勘違いしてたんだ。
あなたの分まで苦しまなければ、あなたはずっと報われないままだって。
でも、そうじゃないって、教えてくれたひとがいた。
22: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:10:20
「俺もみんなもきっと同じ気持ちだったんだよ。トップロードも、カレンも、ドトウも、オペラオーも。きっと、妹さんだって。
無口で、不器用で、ただ生きてるだけで苦しそうで。
でも、どんなに苦しくても目指すもののためにひたむきに走り続けるのは、やめない。そうやって血反吐を吐きながら生きてるのに、困っている誰かを見たら、見捨てずに助けようとしてくれる。
…幸せにしたかったんだ。そんな君のことを」
彼のあたたかな微笑みを見るのは、これで何度目だろうか。でも、その真っ直ぐな瞳から目を背けずにいられるようになったのは、つい最近になってから。
「…そうよ。あの子のために生きて死ぬだけだったのに。
みんなが私を楽しくさせたりするから。
あなたが余計なことばかり教えるから。
さみしいとか、恋しいとか。
…愛してる、だとか」
23: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:10:31
その瞳が、少しずつ自分を変えていった。眩しすぎて目を背けそうになるけど、結局はそこに戻ってきてしまう。
それが、やっぱり少し悔しい。
「…もう、前みたいにひとりで生きていくって言えなくなったでしょう。
あなたのせいよ。あなたの…」
素直になれない言葉の中に、少しずつ伝えたいことを混ぜて。いつかあなたが気づいてくれるのを、ずっとずっと待っている。
「…あなたがいたから。
あなたがいたから、生きてみたいって思えるようになったの。
生きていてごめんなさい、じゃなくて。生かしてくれて、ありがとうって」
そうやって、少しだけ甘えたくなる。あなたはやっぱりよくわからないひとだけど、受け止めてくれることだけはわかっていたから。
あの子の声がもう聞こえなくなって、どうしていいかわからなくて彷徨っていた私を、繋ぎ止めてくれたのはあなただった。
24: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:10:43
ねえ、聞いて。あなたには、聞いていてほしい。
私、好きなひとができたの。
輝いて、輝いて──
あなたのために燃え尽きて、あなたとおなじところに行けるなら、それでいいと思っていた。
でも、あのひとは、自分のために光ってもいいって、そう言ってくれたから。
私が私のために生きることを、誰よりも、私よりも、喜んでくれたひとだから。

ごめんね。もうちょっとだけ待っていて。
もう少しだけ、あのひとのそばで光っていたい。
だいじょうぶ。絶対に、さみしい思いはさせないから。
あなたのところにはまだ行けないけれど、空の上まで届くくらい、綺麗に瞬いてみせるから。
そうしてあげたいと思えるひとを、やっと見つけられたから。

25: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:10:58
誰かと一緒に夜空を見上げるのが、こんなにも心地いいなんて思ってなかった。
「…ありがとう。
幸せってどういうことなのか、少しだけわかった気がする」
「…よかった。
それを探すのが、生きるっていうことだよ。
君はもうそれができる」
ひとりの空は、確かに静かで綺麗だけれど。
果てしない夜の暗闇を想っていると、誰かの温もりが恋しくなるときもある。
「…ひとりでは無理よ。
…だから、そばにいてほしい」
26: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:11:14
そう。あなたはほうき星。
私の空にいきなり現れて、眩い光を散りばめてゆく。
はじめは戸惑ってしまったけれど、あなたが示してくれた道からは、どうしても目が離せなかった。
光の海が空にかかって、たくさんの輝きがきらきらと落ちてくる。
私一人では作れない、騒がしくも美しい夜空。
そんな、星が降る夢。長い旅の終わりまで、あなたと一緒に見続ける夢。
月夜の丘に寝転んで、空を渡るあなたを見ていた。
次に会えるのはいつだろう。
十年?百年?それとももっと?

空を廻って、また会いに来て。
たとえ何万年かかっても、私はこの丘で待ってるから。
ああ。でも。
もしずっとここにいてくれるなら、あなたの尻尾を掴まえていたい。

27: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:11:34
星が美しいのは、手が届かないからだ。そんなことはずっと前から、わかっていたことのはずなのに。
「…あなたにもあるわ。伝えたいこと、たくさん」
ああ、本当に。
星を捕まえて離したくないなんて、子供じみた願いを抑えられなくなったのも、なにもかもあなたのせい。

優しい彼の瞳の中が、少しだけ揺らいでいるのがわかる。
私と同じように胸を高鳴らせてくれているのだとしたら、少しだけ嬉しい。
「なに?
…言って」
言いたい。伝えたい。私の、本当の気持ち。
この夜空の下で何度も繰り返されてきた、ありきたりの言葉かもしれないけれど。私の心を伝えてくれるのは、きっとこの言葉だけだから。
「好き。
あなたのことが、好き。大好き」

28: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:11:51
夜の闇の静寂が、少しだけ怖い。彼の返事を待つ時間が、永遠のように思えた。
だからだろうか。彼に抱きしめられたときに、冷えた身体が一気に温まるような気がした。
「…ありがとう。
俺も、大好き。ずっと」
嬉しい。だから、今はあなたの顔を見れない。
嬉しくて、顔が綻んで、仕方ない。

私があなたを抱きしめると、あなたも私を抱きしめてくれる。
そんなあたりまえが、どうしようもなく幸せ。
ずっとそばにいて。
私を離さないで。
ここにいるよって、言って。
──私も、伝え続けるから。ずっと。

29: 名無しさん(主) 2024/07/07(日)01:13:23
おわり
七夕なのでrayを聞きながら書きました
30: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:14:54
良かったよ
31: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:16:51
幸せになるアヤベさんはいくらあっても良いですからね
32: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:19:53
BUMPっぽいなと思ったらrayだったか
いい話だった
33: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:21:21
カルマとrayと天体観測をヘビロテすると頭アヤベさんになれるぞ
34: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:23:00
最新の邂逅もだいぶアヤベさんだぞ
36: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:26:20
小屋の中は物が増える一方で、中の空間はどんどんと狭くなっていく。
だから仕方ないのだと嘯いて、据付の小さなベッドの中で彼と抱き合う言い訳にするなんて、いつからこんなに浅ましくなったのだろう?
「苦しくない?」
「…ない。もっと強く」
彼に巻きつけた腕の力をいっそう強めて、もっと、と催促する。
これ以上、私を止めないでほしい。私だって、恥ずかしいのはわかっているのだから。
「俺別にふわふわじゃないよ?」
「…そのくらい知ってる。
…こうしておかないと、朝になったら消えてしまうかもしれないでしょう」
なんて幼稚な言い訳だろう。否、言い訳にもなっていない。
その証拠に彼は、少し可笑しそうに笑っていた。
「理由なんかなくたってくっついていいんだよ。
アヤベが甘えてくれるの、うれしいし」
37: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:26:33
やはり、苦しい言い訳だったのだろう。今更になって恥ずかしさが勝って、目を逸らしたくて彼の胸に顔を埋める。
「…ごめんなさい。次からは直すわ」
「んー、無理にやめなくてもいいかな」
「…どうして?」
問い返すために上げた顔の真ん中に、柔らかい感触が走る。唇を奪われたのだとわかって、より強く抱きしめられる温もりが心を溶かした。
「かわいいから。一緒にいたいって思ってくれてるの、わかるし」

「…ばか」
いじわる。でも、いい。
そんないじわるも甘く響くくらい、あなたが好きだから。

38: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:27:17
おまけ
付き合ったあとはこのくらい甘ったるいいちゃいちゃしてほしい
40: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:30:05
トプロとカレンにはちゃんと今までのお礼を言って付き合うことになったって報告するアヤベさん
オペラオーにも言うかどうかで3日悩むアヤベさん
41: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:33:11
コンコンしたんか!?
42: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:34:18
超新星誕生するんか!?
43: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:34:29
ほうき星でもあり彦星でもあった…ということだね?
44: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:34:40
熱が出たりするとわかるんか!?
45: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:35:41
天の川毎晩氾濫させとるんやろ!?
46: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:41:12
ふたりの結婚披露宴で自作オペラを3本くらい演ろうとするオペさん
50: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:55:26
>>46
…1本にしなさい
って言えるようであって欲しい
51: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:56:38
>>50
(当然舞台に引っ張り上げられるアヤベさん)
52: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:59:22
>>51
披露宴の余興に新婦を参加させるなよ!
48: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:46:15
歌を元に書き上げる怪文書久々に見たな
49: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)01:46:22
長いけどスラスラ読めてしまった
自分のウマ生を歩くことにしたアヤベさん良い…
53: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)02:14:59
俺が去年七夕に書いたやつより遥かに伸びまくってて素直に悔しい
こんな文才が欲しい…
72: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)02:58:01
幸せになることを受け入れられるようになるまでのお話か
だいぶ精神病んでたんだろうな…
73: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)03:01:54
深夜にいいものを見た
気持ちよく寝られそうだ
74: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)03:04:33
アヤベさんはこれから先ずっと幸せでいてほしい
82: 名無しさん(仮) 2024/07/07(日)03:27:48
アヤベさんが前向きに生きる意欲を見せられるようになって良かったね…

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