ああ、そうか夜明けの時間か。そう思って俺はベッドからどうにか身体を起こしゆっくりと全身を伸ばす。
「んんぅ……よく寝たあ……」
「――……おや、おはようございます、トレーナーさん。昨夜はぐっすりと眠れましたか?」
「ああ、そうだな。ちゃんと眠れたよ。……まだちょっと眠いけど」
「――そう、ですか。……それなら、浅煎りのコーヒーを先程淹れてきたので、よろしければ」
そう言われて、差し出されるマグカップ。中には薫り良く温かなコーヒー。俺は担当のジャーニーに二言、ありがとうといただきますを告げてコーヒーに口をつける。
「ん、おいしい……」
「ふふ、それは良かった。ああ、私もいただきましょうか」
ジャーニーはそう言うと、もう一つ用意されていたマグカップで俺と同じコーヒーを飲む。
「――ああ、やはり寝起きには浅煎りのコーヒーですね。頭が冴えていきます」
「…………あれ?」
「……どうか、なされましたか?」
「いや、えっと……あれ……?」
「……?」
「えっと……――なんで、俺の部屋にジャーニーが居るんだ……?」
ごく自然に振る舞われてしまったから、暫く気付かなかったが、よくよく考えれば俺の担当であるジャーニーが知らぬ内に俺の部屋に居るのは、すごくおかしなことなのではないか。
コーヒーを飲んで冴えた頭が、急速に冷えて行く。俺は何か、とんでもないことをしてしまったのでは……!?
「ああ、それは……その――……まだ、思い出せませんか?」
「思い、出す……?」
「ええ。昨晩起きた出来事ですよ」
そう彼女に言われてハッと思い出す。
そうだ。確かあの日の夜、ジャーニーは突然俺の部屋を訪ねてきたのだ。どうやら、妹であるオルフェーヴルが不在の為、良かったらこちらに泊まらせて欲しい、とのことで。
「えっと……それで確か、ジャーニーを部屋に入れて……それからどうしたっけ……?」
「いえ、特筆するようなことは何も。ただ、トレーナーさんには、“夜明けのコーヒー"を二人で飲みませんか? と提案しただけです。外泊届けにもそう書いて来ましたし」
そう教えられ、ようやく思い出す。確かあの後、それじゃあ明日は早起きしないといけないな、と。だから俺たちももう寝ようか、と言って予備の布団を出してジャーニーと寝たんだった。
「ええ、ですから……これで、目標は達成――ですね」
「ぁ、そうだな……! んっ、こく……こく、うん。夜明けのコーヒーは美味しいな、ジャーニー」
「……ふふ……ええ、そうですね」
ジャーニーは一つふふっと笑うと、何か含みのあるような笑顔でこちらを見つめる。
「……? 俺の顔に、何かついてるか……?」
「……いえ、そういう訳では……ただ――」
「ただ……?」
「わ、わかった……?」
少しだけ、ご機嫌そうに微笑むジャーニーに、彼女の意図を汲めないまま、どうにか俺はジャーニーその言葉に頷くのだった。
――――――
「――ああ……トレーナーさん、貴方は本当に……純真だ。穢れなき心で、ええ……本当に、喜ばしい。灯りを消したらすぐに寝てしまうのですから。こちらの逸る心臓の鼓動のことなんてまったく気づいていらっしゃらないんですから。そこも貴方の素敵な所ですが……」
「……“夜明けのコーヒー"の本当の意味も知らないで……ふふ。……どうか、そのままの貴方で、いてくださいね……♪」
ジャーニーと夜明けのコーヒーを飲みたい
結果的に夜明けのコーヒー飲んだだけだから多分健全



