担当ウマ娘『メジロアルダン』のため、デスクトップでトレーニングメニューを組んでいく。
手元は隠れていて見えないが、タッチタイピングは身につけているので問題ない。
「あら……トレーナーさん、打ち間違えていますよ」
「本当?あんまり画面見えてなくて」
「ふふっ、眼鏡をお掛けになりますか?」
「うーん……そういう問題じゃないというか、誰かさんがヒザから降りてくれたら、それで済む話っていうか」
「まあ!では、その『誰かさん』に、お邪魔にならないようお伝えしますね」
楽しそうに微笑む愛バ、メジロアルダン。
彼女の腰を抱くように腕を伸ばし、その先にあるキーボードを打つ。
どこを打ち間違えたのか、彼女の美しい髪の隙間から探すのは至難の業だ。
「どうぞ、トレーナーさん。あーん」
「あーん……あっ、これ美味しい」
「ふふ、お口に合って良かったです」
アルダンの手ずから差し出された焼き菓子を、口で受け止める。
なんだか、餌付けされているようで気恥ずかしい。
でもアルダンが楽しそうなので、別に構わない。
「んん、何だろう……ええっと、新着メールっと」
「これは……たづなさんからですね。学園のトレーナーさん全員に送信されているようです」
「よく見えないから、読んでもらってもいい?」
「ふふっ、承知しました……ふむふむ、なるほど」
「たづなさん、何て書いてる?」
「要約いたしますと『最近、学園内で(学生と教員という観点から考えると)不適切な関係性だと判断されるトレーナーさんとウマ娘さんがいらっしゃるので、担当ウマ娘さんとは適切な距離感を保つよう心がけて』とのことです」
「……なるほど、もっともだ」
そう言うと、アルダンは座り直すようにお尻を動かした。
より深くひざに腰掛け、さらには背もたれのように、こちらに体を預けてくる。
すでに密着状態だ。
「これが『適切な距離感』?」
「ええ。先ほどまでは、少し遠かったですから」
「そっか」
アルダンから漂う甘い香りが、鼻腔をくすぐる。
仕事の手を止め、彼女の腰を優しく抱きかかえた。
その手の甲に、アルダンがそっと手のひらを重ねてくる。
「……まだ離れたくないな」
「ふふっ、困りました。これではトレーニングに行けません」
「いや、そんなことないよ」
そう答えると、彼女の腰に回していた手を一旦はがした。
一瞬、アルダンが寂しそうな表情を浮かべる。
そんな顔をしなくても、離れるつもりなど一切ないのに。
離した腕を、彼女の膝裏と背中にあてる。
そして、腰にしっかり力をこめて、ゆっくりと立ち上がった。
ちょうど『お姫様だっこ』の形で、彼女を抱き上げる。
「大丈夫、今日はウマレーターでのトレーニングだから」
アルダンと至近距離で見つめ合い、笑い合う。
彼女は手を伸ばし、トレーナー室の鍵を取った。
そして、それを持ったまま、腕をこちらの首に回す。
「行こうか、アルダン」
「ええ、参りましょう♪」
アルダンにドアを開けてもらい、ゆっくりと歩き出す。
彼女を落とさないように。
そして、この時間が少しでも長く続くように……
「あ゛…………」
>どこを打ち間違えたのか、彼女の美しい髪の隙間から探すのは至難の業だ。
よかった…お山でキーボードが隠れてるわけじゃなかったんだ…
>最近、学園内で(学生と教員という観点から考えると)不適切な関係性だと判断されるトレーナーさんとウマ娘さんがいらっしゃるので、
この2人だけのことなのか、それとも他にもこんなのが溢れてるのか
アルダンが永遠を刻んだ頃ならパーマーも少し除湿されてるしちょっとまずいかもな…