街を歩いていると、ふとそう呼び止められた。振り向くと同じくらいの年齢のウマ娘、制服を見るにトレセン生ではなさそうだ
「え、ええ...そうだけど...」
「わーやっぱりそうだ!まさかこんな所で見られるなんて!私ファンなんですよ〜!あの!これにサインして貰ってもいいですか!?あと写真も撮って貰っていいですか!?SNSに上げても...」
「ちょ...ちょっと!一旦落ち着いて」
「まあ...サインも写真もいいけど...でも私でいいの?自分で言うのもなんだけどオペラオーとかトップロードさんの方が...」
正直、自分がそんなに好かれるキャラではないと思う。クラシックの2人と比べてそこまでファンに向けたパフォーマンスもしてないのに...
「そ、そう...まあ応援してくれるのは嬉しいわ。はい、サインよ」
そう言ってサインを書いた手帳を返す。その後写真も一緒に撮った後、寮に帰ったのだった。
「ねえカレンさん.....私ってそんなに人気あるの?」
そう言うと、同室のウマ娘でありカワイイの求道者であるカレンチャンは「へー.....」と不思議そうにこちらを見てきた
「珍しいですね。アヤべさんがそういう事気にするなんて」
「まあね...今日ちょっと街の方で...」
そう言って街であった出来事を話すと、カレンさんは何かを思いついたようで、どこかに電話をし始めた
「........はい......はい......じゃあお願いします。さーてアヤべさん!1週間後を楽しみにしててくださいね!」
「一体何を.....」
「むふふふふふふ...秘密です!」
「じゃじゃーん!見てくださいアヤべさん!」
「カレンさん...これは...」
そこには、カレンさんのやっているウマッターの...どうやらダイレクトメールのようだが...大量のメッセージがあった。
「はい!カレンのウマスタでアヤべさんへの愛のメッセージを送ってって宣伝したんです!」
「まさか.....先週のって....」
意外だった。自分で言うのもなんだがファンサといったものは無頓着だし、レース後のライブも義務感でやっているようなものだ。何よりあの頃は外に目を向ける事もなかったから...
「じゃあ読み上げていきますね」
「え、ええ....お願い」
『アヤべさんは面倒見が良い所が好き。前困っていた所を助けてくれてお姉ちゃんって言いそうになった』
学校の皆からのようだ。そういえば困っているのを見かけて助けた事が何度かあったと思うけど...別に特別な事はしていないのに
『入荷したふわふわタオルをとても気持ちよさそうに触ってそのまま買ってくれた。あんな幸せそうな顔なかなか見ない』
.........そんなに顔や耳に出てただろうか。
『太陽として多くの者を明るく照らすのがボクだとすればアヤべさんは月の光さ!例え地球の半分を照らす眩しさは無くとも、優しく皆を包み込んでいる。自分から主張しないけど確かにそこにいるのが魅力だね!』
『アヤべさんはダメダメだった私に根気よく付き合ってくれて...アヤべさんがいなかったらずっと自分の殻を破れなかったと思うんです。私がオペラオーさんに負けられないと思えるようになったきっかけはアヤべさんです』
皆...そうね、でも私だってあなた達に感謝したい事はあるわ。オペラオーには.........まあでも仲間外れは可哀想だし
.....うん?
『先日オススメされて買ったクッションを部屋に置いてると、いつの間にかアヤべが居眠りしていて寝顔をこっそり撮った。普段見せない表情がとても可愛かった』
............
『あとこの間のG1で勝ったあと客席で「アヤべー!おめでとう!!」と喜ぶ俺に向けてこっそりピースサインとスマイルを送っていて当人は気付いてないと思ってるようだけどそこがまた』
「待ってカレンさん」
「えー?どうしたんですかアヤべさんそんなに顔を真っ赤にして〜まだまだあるのに〜」
「分かった!皆がその....私が思う以上好きだって事が分かったから.....もう寝るわ!おやすみ!」
そうして強引に布団を被る。身体が熱いが、きっと夏だからだろう。エアコンの効きが悪いのかもしれない
しばらくするとカレンさんもそう言って電気を消す。結局身体の熱はしばらく下がらず、2時間ほど経ってからようやく眠りに落ちたのだった
(ピロン)
新しいメッセージがあります
『お姉ちゃんと一緒に走るのは凄く楽しくて、今でも時々思い出しては走りたくなっちゃう!これからもずっと皆と楽しく走ってね!私の大好きなお姉ちゃん』
正面きって言うのは自分もだしアヤベさんも恥ずかしがるだろうから良い機会だと思って書いたんだと思ってる
バカおめーよー想像してみろよー
アヤベさんが大好きなトレーナーにいきなり面と向かってアヤベの寝顔可愛いねって写真見せられたらどうなるかよーッちょっとは考えてもみろよー
それでもちゃんとお礼は伝えるんだろうな…
美人のダービーウマ娘が自分の作ったパンを幸せそうに食ってる!ってなれば
職人冥利に尽きるだろう
むしろ嬉々として問い詰めてくな…