そんな風に思い始めたのはキタサンブラックとの3年間を乗り越えて、さらにまたその3年後も超えて──彼女の存在が、あまりにも大きくなってからだ。
彼女のレース界への貢献は今更説明するまでも無いが──
「おはようございます! 朝ごはん出来てますよ、トレーナーさん!」
「あ、ああ……ありがとう」
いつしか、俺の日常生活にまでも、キタサンブラックはどっしりと根を張っていた。
それはキタサンブラックの見出したとある天才ウマ娘に対して記者が付けた評価であるが、キタサンにも当て嵌まるのではないかと思う。
トゥインクルシリーズでの成績。その後のレース界への貢献。そしてどこにでも現れるお助けキタちゃん。トレセン近辺においてキタサンブラックの存在を感じない日は無い。
そしてそんなキタサンブラックを育てたトレーナーとなれば仕事は多くなり、食生活が疎かになる時期もあり──見兼ねたお助けキタちゃんが部屋に押し掛け、食事を作ってくれるようになった。なってしまった。
今では放っておくと食事の他にも洗濯などの家事まで手を付けようとしてくる。このままではマズイ。キタサンから自立しなくては。
「はい、トレーナーさん! おかわりどうぞ!」
「お、おお……」
山のように盛られた白米をかき込みながら、俺は計画を練り始めた。
「あ、キタサン。俺明日は朝から出かけるから。食事は大丈夫だよ」
「……え? そうですか? なら、私もそっち行ってお手伝い──」
「いやいや、大丈夫。大丈夫だから」
「でも──」
そんな風に「いやいや」「でもでも」の応酬を繰り広げ、何とかキタサンを宥め、俺が一人で向かう先は──とある田舎の山奥に購入した別荘。
一人の時間を作るためだけに用意した秘密基地である。
俺はキタサンに怪しまれないようにちょっとずつ秘密基地に家具や食料を運び込んだ。連休が取れた日は泊まることもある。
思い付きで始めたことだが続けてみるとこれが中々に楽しくなってくる。
「ああ」
別荘を買ってからから数ヶ月、休日を別荘で過ごす日の割合が増えてきた。
やはり秘密基地というのは男の心を擽るものである。たとえ何歳になったとしても。
そんなわけで今日も一人、車を走らせ別荘へ。ローストビーフを作りお酒を飲みながら過ごす週末。さらに大分外れた場所にある別荘なので、周りに人気は無い。つまり、大音量で音楽を流しても問題は無い。
別荘のリビングで大音量でキタサンの祭りを流しながら、一人酒と肉を嗜むご機嫌な週末──実に良い。
何なら、トレーナーを引退して仕事を辞めた後はここに引っ越しても良いかもしれないと思うくらいだ。
「……キタサンがいなくても、何とか大丈夫そうだな」
『このままだと俺はキタサンがいなければ何も出来なくなってしまうのではないか』
その心配は、どうやら杞憂には終わりそうだ。
何なら今度、キタサンをここに招待しても良いかもしれない。普段お世話になっている分、今度はこちら側から彼女をおもてなしするのだ──
トレーナーさんの足音。何年も聴いてるからわかる。ドアが開いて、どこかの建物の中に入っていく。
周りに誰もいないことを探ってから、あたしは車のトランクを開けて外に出た。
「ここは……どこだろう?」
森の中にポツンと一軒、大きな別荘。
ちょっと前からトレーナーさんがあたしに内緒でお出かけするようになった。一緒に行きたいって言っても断固として連れて行ってくれない。多分、ここが目的地なんと思うけれど……。
「……トレーナーさんの別荘……なのかな……?」
そしてある日、あたしはトレーナーさんが家具をどこかに手配しているのを知って、我慢できなくなって、こんな風に隠れて着いてきてしまって。
インターホンを押しても反応が無い。
耳を澄ませると、別荘の中から何か声が──あたしの歌声が聴こえる。
ドアノブに手をかけると、あっさり開いた。鍵をかけるのを忘れているみたいだ。
「……お邪魔しまーす……」
ドアを開けると、大音量で流されるあたしの『まつり』が出迎えてくれた。玄関にはトレーナーさんの靴が揃えて置いてある。
やっぱり、ここにいるんだ。
どうかあたしの抱いている不安が杞憂に終わりますように──ぎゅっと、胸元で拳を握りしめて。
あたしは、リビングのドアを開けて──
「……キタサン……いなくても……大丈夫……」
ああ。
あたしの不安、当たってたんだ。
トレーナーさんが最近ずっとよそよそしかったのは、あたしから離れるためだったんだ。
だからこうやって、ちょっとずつ家具を運んで、一人で──
「……ダメですよ、トレーナーさん……」
そんなことないです。
あたしがここまで来れたのは、トレーナーさんのお陰で。身長だって180cmまで伸びたけど、まだまだあなたがあたしには必要なんです。
「あたしは……」
トレーナーさんはまだこっちには気付いていない。大音量で流しているまつりに聴き入っているし、ソファの配置がドアに背を向けるようになっているから視界にも入っていない。
そんな離別、あたしは認めない。
あたしの声にあたしの足音が掻き消される中で、あたしはゆっくりとトレーナーさんに近寄って──
>大音量でキタサンの祭りを流しながら
離れきれてないようだが…
キタちゃんから自立しなきゃ…って言っておいて寝る時も大音量でキタちゃんの歌声聴いてるのはダメダメすぎて吹く
率先して担当ウマ娘を不安にさせるような事をするトレーナーが正気だと思うか
でも愛バの曲を大音量で流しても近所迷惑にならない環境があるなら誰でもそうしたいだろ?
原作がデカいので…ヒシアケボノほどじゃないけど最大540kgはかなり大きい方
これで体高172あるからめっちゃ縦にスラっとデカいのよね
ちょうどほぼイクイノックス君をスケールアップした体格になる
ヒシアケボノは体高166か168だったかな
ダメだ…これはもうダメだ…
高さだけならボーノより高くてもおかしくないのか…
実際あったことあるからわかる
今までで1番めちゃくちゃ叫んだ
突然現れて!
胸押し付けてくる!
そもそも音楽のせいで他に物音が出ても紛れて聞こえないという最高…いや最悪の状況だ
全部わかってるのでもうだめです