いくら愛し合っていようと、時間と距離は人の心を冷めさせる。一年も会わなければ、きっと忘れてしまうだろう。
だから、私は離さない。忘れない。あなたがしてくれたことを。あなたにしてしまったことを。
それだけが、私に許されたたった一つの生き方なのだから。
「…はぁ」
部屋に鎮座した大きな天体望遠鏡を見て、それに負けないくらい大きなため息をついた。
どうやっても、部屋の半分を越えてしまう。今はここにいない、少し強引だけれど放っておけないルームメイトの顔を思い浮かべる。もしなんとかして私のスペースにこれを収めたとしても、彼女がいつもしている配信の画面に映り込むことは避けられないだろう。やはりここには置けない。けれど、他に仕舞う場所の当てがなかった。
「…どうしよう」
解体した部品を自分のベッドにひとまず避難させて、もう一度大きな溜め息をついた。
「何かあったのか?」
「…どうしてそう思うの?」
「いや、なんか難しい顔してたから」
だから、やはり彼がおかしいのだ。何も言っていないのにそんなことまで察して、気を回してくるなんて。
「…今度、ロブロイさんが図書室で企画をすると言っていて。天体について取り上げるそうだから、実家にある望遠鏡を観測のために貸そうと思ったのだけれど…置く場所がないの。
それだけ。もういいでしょう」
彼が何かまた言う前に、部屋を出てしまおうと思った。どうせ彼は余計な気を遣うから、その気も起きないようにしようと、そう思っていたのに。
「待った」
「…手伝いならいい」
「逆だよ。俺の頼みを聞いてほしい」
「…なに」
「ありがとう。
実はさ。俺の祖父さんの実家に納屋があって、片付ける人手がほしいんだ。
悪いんだけど、頼まれてくれるか。望遠鏡はそこに置いて大丈夫だから」
「…いいわ。準備してくるから待っていて」
勝手についてくるだけ。私がそう決めて、彼も納得した。
その在り方は変わっていない。今回も私の望むやり方で、私のやりたいことを助けてくれた。
だからこそ、腑に落ちない。どうしてそこまでするのか。
放っておけばいいのに。見えない星の光を追いかけることしかできない、物狂いのことなんて。
「昔は畑もやってたんだけど、最近は家の庭で手一杯みたいでさ。でも、この庭だけは守っていきたいんだって。お祖母ちゃんも好きだったから」
彼の視線の先には、優しい笑顔のままで時間を止めた老婆の写真があった。
彼もきっと、祖父とこの家が好きなのだろう。暖かい想い出で満たされた、この家の優しい空気が。彼の言葉の温度は、ただの義理で見舞いに来ているひとのものとはどうしても思えなかった。
だからこそ、やはり躊躇いが残る。そんなところに、私が入りこんでもいいのだろうか。けれど迷っている間にも脚は動いていて、目的地の納屋の前に辿り着いてしまった。
「昔はこの辺一帯が、うちの畑だったんだって。広すぎてうちの人だけじゃ耕しきれないから、住み込みで手伝ってもらう人もいて、その人たちのための小屋だって聞いた。
でも、そういう時代はどんどん過ぎてって。使われないまま、建物だけ残ってるんだって」
据付のベッドに、小さな窓がひとつ。入口の近くは物置代わりに使わないものが置いてあったけれど、鮮やかな壁紙が張られた奥はまだ暮らしの名残を残している。
「…そう。
何から片付ければいいの」
彼の話をそれ以上聞かずに、要件だけを質問した。これ以上聞くと、また察されてしまうと思った。
ここを見て、心が躍ってしまっていることを。
「置かせて貰うから、念入りに掃除しただけよ。汚いままだと気になるし」
誤魔化すように早口になっている自分に気づいて、また恥ずかしくなる。柔らかな電球の光に照らされた部屋は、青い天体望遠鏡を置くとなお居心地がよく思えた。
「いつでも来ていいよ」
「え?」
「ここと裏口の鍵、渡しとくから。望遠鏡だけじゃなくて、他のことにも好きに使って」
差し出された二つの鍵を、簡単には受け取れなかった。受け取りたいと思う一方で、ここを片付けている最中の彼の優しい表情が、頭から離れなかった。
「…本当にいいの?ここは貴方たちの場所でしょう」
「いいよ。俺が持ってても持て余しそうだし。
でも、この家、好きなんだ。だからちゃんと使ってくれる人に使ってほしい」
だから、やめて。そんな優しい目で私を見ないで。
そんなもったいないこと、しないで。
「それにさ。やっと、アヤベのこと少しわかったような気がしたから」
なら、使わせてもらう」
そう答えたときに、彼の目を見られなかった。彼の提案を受け入れたのは、面と向かって受け止めることより、断るのがもっと怖かっただけだ。
「…気を遣いすぎなのよ、貴方は。
自分が潰れてしまったらどうするの」
漸く、顔を上げる。彼の表情は、少し呆れたような生暖かい笑顔に変わっていた。
「…」
「…なに。おかしなことは言っていないでしょう」
そんな表情にむっとして、ささやかな抗議をしてみる。けれど、彼はそれすら楽しむように、またにこりと優しく微笑んだ。
「ううん。ありがとう。
でも、大丈夫だよ。俺はちゃんと楽しい」
その表情がやはり眩しくて、また目を伏せた。
その小さな机の上に便箋を出して、さらさらと言付を残す。
『片付けは私の方でやっておきます』
居心地のよさに負けて結局は小屋の中に私物を置いてしまっているけれど、大切な場所を使わせてもらっているのを申し訳なく思う気持ちは変わらなかった。けれどそれを面と向かって伝えるのはなんだか気恥ずかしくて、代わりにお礼状のようなものを書いておいたのが始まりだった。
ひどく簡素な書付だったけれど、その裏に書かれた彼の返事は随分と楽しそうな字をしていた気がする。
『もう夜は冷えます。体に気をつけて』
ただそう書き足すのに、随分かかった。
あの子もそこに行ってしまった。空の上よりもなお遠い、もう二度と会えない場所へ。
『運命は、私が持っていくから』
闇夜に瞬く、たったひとつの道しるべ。私にできることは、ただそれを目指して走り続けることだけだったのに。
『だから、お姉ちゃんはもう、お姉ちゃんの人生を生きていいの。
めいっぱい、幸せになって』
夜が明けるのが怖かった。星が見えなくなってしまうのが怖かった。
闇夜に慣れきってしまった目が、優しくて、あたたかい光で焼き尽くされるのが怖かった。
優しくしてほしくなんかなかった。ずっとひとりでいたかった。幸せを奪い取って生まれてきた私が、幸せになんかなっていいはずがないのだから。
なのに。
あの子も、カレンさんも、オペラオーもドトウも、トップロードさんも、あのひとも、みんな。
どうして、こんなに優しいの。私にはそれを受け止める資格も、覚悟も、ないのに。
なのに、優しくされた。一緒に競い合って、隣で支えてもらって、見守ってくれて、嬉しかった。
嬉しいと思ってしまった自分が、嬉しいと思う以上に憎かった。
机の上に、便箋が一枚だけあった。
『空っぽでもいい。埋める手伝いならいくらでもする。
だから、君と一緒に頑張らせてほしい』
あのひとの、優しい笑顔。眩しくて、目を背け続けてきたはずなのに、今もはっきりと瞼の裏に描ける。
ぜんぶ、覚えている。あの子が運命から解き放ってくれた私の手を掴んだ、もう一回りだけ大きな掌も。
また、涙が零れた。あの子を喪ったときと同じように。
でも、この気持ちはあのときと半分同じだけど、もう半分は違う。
私は、嬉しいんだ。きっと。
生きてていいんだって言われて。一緒に生きてみようって言われて。
こんな私のために生きるのは、まだ難しい気がするけれど。
こんな私を支えてくれたひとたちが、誇りに思えるような私になる。
そのためなら、少しだけ頑張れる気がした。
その腰に光る短剣の話を、ぽつりと彼が呟いた。
「アヤベが教えてくれた本に書いてあった。
星の光に照らされたり、刺激されたり。星雲って、星の光がないと輝けないんだって」
物が増えていっそう狭い小屋に、椅子が二脚。自分の人生がなんなのかわからない私に彼が寄り添うようになって、自然とこの場所に一緒に来ることも増えた。
「俺と同じだな。アヤベがいなかったら、俺はG1トレーナーになんかなれなかった。
…だから、アヤベはちゃんと返せてるよ」
自分に何ができるのかと問い続ける私に、彼は精いっぱいに答えを返してくれた。自分だって同じことをずっと、考えていたはずなのに。
「…星雲がなければ、星は生まれないわ」
勝手に支える。
そう彼が言ってから、もう随分経った。あのときはこんなことになるなんて、少しも想像していなかったけれど。
自分の人生のことは、まだよくわからない。そのわからない人生に、彼がどうしてここまで親身になってくれるのかも。
でも、この時間は心地良い。それだけは、はっきりしていた。
「物、増えたね。随分」
少しからかうように、けれどずっと嬉しそうに、彼が呟いた。
「置いていいと言ったのは貴方でしょう」
「うん。だから、まだ余裕あるかなって思ってさ」
トップロードさんのくれたアクセサリー。オペラオーが贈ってきた花束。
誰かからもらったものが、確かに増えた。大切にしまっておきたい、たくさんのものが。
「梅の花が、今年は綺麗に咲いたって」
おかげでこの部屋も随分と狭くなったけれど、息苦しいと感じたことはない。
机の上に、梅の花を一輪活けた。
一番綺麗に咲いた花だと、笑う彼の顔を思い出しながら。
平凡な朝を迎えて、当たり前のように誰かがそばにいることを、夜の訪れと同じように待ち望むようになった。
生きていることが、楽しいと感じるようになった。
「…いいのかな」
影の中から返事が来ることはない。ランプの灯りはただ、置きどころのない指の影を長く伸ばしている。
まだ、決心がつかない。自分の気持ちを言葉にすることには、今でも慣れないままだ。まして、ずっと悟られないように秘めてきた想いなら、なおさら。
「…いいのかな」
兎のぬいぐるみに話しかける。柔らかいものが好きと言った私に、カレンさんがくれたものだった。彼女ならきっと、こんな想いは事もなげに告げてしまえるのだろう。
私はいつもそればかりだ。皆が当たり前にしてきたことを疎かにしてきたつけが今になって回ってきている。
封筒から便箋を取り出す。
あのひとがくれたもの。
これが最後の1ページ。
『あの丘で待っています』
私には、これがせいいっぱいだった。
けれど、心はもう決めていた。
「…あれだけでよくわかったわね」
「これでもアヤベのトレーナーだからな」
隣にゆっくりと座った彼にどう切り出したらいいかわからなくて、結局は何も言わずに、ペンダントを握った手だけを目の前に差し出した。
「それは?」
「名前。
あの子に贈られるはずだった、名前」
彼の表情が俄に硬くなる。当然だろう。
私にとってそれが何を意味するのか、知らないはずはないのだから。
「いつか見ようと思っていたけど、結局先延ばしにしてた」
初めは、彼女のために全てを捧げた果てにという決意のため。今は、あの子のくれたものの重さに、真っ直ぐ向き合うのが怖いから。
でも、それと同じくらい、受け止めてあげたいとも思っている。私のことをあんなに想ってくれたあの子が、遺してくれた数少ないものだから。
前までは、そう思っていた。
「まだ、怖いの。向き合うって決めたけど。
…だから、一緒に見て」
でも、大切なことは、誰かの力を借りてみてもいいんだって気づけたのは、あの子のおかげだから。
そっと、ペンダントを開く。星が照らすだけの夜の中でも、その文字ははっきりと見えた。
「…綺麗な名前」
「…ええ。そうね。本当に綺麗」
胸のつかえが取れて、心からの喜びが湧き上がってくる。
ああ。やっと。
やっと、あなたの名前を呼んであげられる。
お母さんがくれたの。きっとあの子は、あなたには知ってほしいと思っているからって。
…正直に言うとね、怖かったの。何にもなれない、輝けない私が、そんな重いものなんて受け止められるわけないって」
生まれてくることさえなかった名前だと、一蹴するひともいるかもしれない。
でも、私は怖かった。あなたは確かに、ここにいたのだから。
「あの日のこと、覚えてる?
夢を見ていたの。私が奪ってしまった、あの子の幸せな夢」
生きていくのが楽しくなるにつれて、その怖さはどんどん大きくなっていった。あなたが私にくれたものがどれだけ重いか、それを私が今までどれほど粗末にしてきたのか、わかってしまうから。
「でも、あの子が最後に、私をもう一度送り出してくれた。
生まれ変わったんだと思う。そのときに」
でも、それと同じくらい、あなたのことをもっと知りたいと思った。
もう会えなくなってしまったから。またいつか会えるときに、胸を張っていたいって思えるようになったから。
振り返らずに幸せになって、忘れてしまうのが怖かった。
私は、あの子を蹴落として生きているんだって。
あの子のために苦しむことが、あの子にしてあげられる、たった一つの償いなのだと。
痛いままでいい。忘れてしまうくらいなら、苦しいほうがずっといい。
この痛みがある限り、あの子のことを忘れることはないのだから。
「…今まではずっと、ごめんなさいって言い続けるだけだった。
でも、今ならちゃんと、ありがとうって言える気がするの。
私に命をくれてありがとうって。もう一度私を産んでくれて、ありがとうって」
でも、もう大丈夫だから。
私が幸せになれるのは、あなたがくれたもののおかげだって。
やっと、気づけたから。
あなたにもらった命なのに、私のために生きてもいいんだって、言ってくれたんだよね。
お姉ちゃん、幸せだったよ。こんなに優しい子のお姉ちゃんになれて。
なのに、ごめんね。
ずっと、勘違いしてたんだ。
あなたの分まで苦しまなければ、あなたはずっと報われないままだって。
でも、そうじゃないって、教えてくれたひとがいた。
無口で、不器用で、ただ生きてるだけで苦しそうで。
でも、どんなに苦しくても目指すもののためにひたむきに走り続けるのは、やめない。そうやって血反吐を吐きながら生きてるのに、困っている誰かを見たら、見捨てずに助けようとしてくれる。
…幸せにしたかったんだ。そんな君のことを」
彼のあたたかな微笑みを見るのは、これで何度目だろうか。でも、その真っ直ぐな瞳から目を背けずにいられるようになったのは、つい最近になってから。
「…そうよ。あの子のために生きて死ぬだけだったのに。
みんなが私を楽しくさせたりするから。
あなたが余計なことばかり教えるから。
さみしいとか、恋しいとか。
…愛してる、だとか」
それが、やっぱり少し悔しい。
「…もう、前みたいにひとりで生きていくって言えなくなったでしょう。
あなたのせいよ。あなたの…」
素直になれない言葉の中に、少しずつ伝えたいことを混ぜて。いつかあなたが気づいてくれるのを、ずっとずっと待っている。
「…あなたがいたから。
あなたがいたから、生きてみたいって思えるようになったの。
生きていてごめんなさい、じゃなくて。生かしてくれて、ありがとうって」
そうやって、少しだけ甘えたくなる。あなたはやっぱりよくわからないひとだけど、受け止めてくれることだけはわかっていたから。
あの子の声がもう聞こえなくなって、どうしていいかわからなくて彷徨っていた私を、繋ぎ止めてくれたのはあなただった。
私、好きなひとができたの。
輝いて、輝いて──
あなたのために燃え尽きて、あなたとおなじところに行けるなら、それでいいと思っていた。
でも、あのひとは、自分のために光ってもいいって、そう言ってくれたから。
私が私のために生きることを、誰よりも、私よりも、喜んでくれたひとだから。
ごめんね。もうちょっとだけ待っていて。
もう少しだけ、あのひとのそばで光っていたい。
だいじょうぶ。絶対に、さみしい思いはさせないから。
あなたのところにはまだ行けないけれど、空の上まで届くくらい、綺麗に瞬いてみせるから。
そうしてあげたいと思えるひとを、やっと見つけられたから。
「…ありがとう。
幸せってどういうことなのか、少しだけわかった気がする」
「…よかった。
それを探すのが、生きるっていうことだよ。
君はもうそれができる」
ひとりの空は、確かに静かで綺麗だけれど。
果てしない夜の暗闇を想っていると、誰かの温もりが恋しくなるときもある。
「…ひとりでは無理よ。
…だから、そばにいてほしい」
私の空にいきなり現れて、眩い光を散りばめてゆく。
はじめは戸惑ってしまったけれど、あなたが示してくれた道からは、どうしても目が離せなかった。
光の海が空にかかって、たくさんの輝きがきらきらと落ちてくる。
私一人では作れない、騒がしくも美しい夜空。
そんな、星が降る夢。長い旅の終わりまで、あなたと一緒に見続ける夢。
月夜の丘に寝転んで、空を渡るあなたを見ていた。
次に会えるのはいつだろう。
十年?百年?それとももっと?
空を廻って、また会いに来て。
たとえ何万年かかっても、私はこの丘で待ってるから。
ああ。でも。
もしずっとここにいてくれるなら、あなたの尻尾を掴まえていたい。
「…あなたにもあるわ。伝えたいこと、たくさん」
ああ、本当に。
星を捕まえて離したくないなんて、子供じみた願いを抑えられなくなったのも、なにもかもあなたのせい。
優しい彼の瞳の中が、少しだけ揺らいでいるのがわかる。
私と同じように胸を高鳴らせてくれているのだとしたら、少しだけ嬉しい。
「なに?
…言って」
言いたい。伝えたい。私の、本当の気持ち。
この夜空の下で何度も繰り返されてきた、ありきたりの言葉かもしれないけれど。私の心を伝えてくれるのは、きっとこの言葉だけだから。
「好き。
あなたのことが、好き。大好き」
だからだろうか。彼に抱きしめられたときに、冷えた身体が一気に温まるような気がした。
「…ありがとう。
俺も、大好き。ずっと」
嬉しい。だから、今はあなたの顔を見れない。
嬉しくて、顔が綻んで、仕方ない。
私があなたを抱きしめると、あなたも私を抱きしめてくれる。
そんなあたりまえが、どうしようもなく幸せ。
ずっとそばにいて。
私を離さないで。
ここにいるよって、言って。
──私も、伝え続けるから。ずっと。
七夕なのでrayを聞きながら書きました
いい話だった
だから仕方ないのだと嘯いて、据付の小さなベッドの中で彼と抱き合う言い訳にするなんて、いつからこんなに浅ましくなったのだろう?
「苦しくない?」
「…ない。もっと強く」
彼に巻きつけた腕の力をいっそう強めて、もっと、と催促する。
これ以上、私を止めないでほしい。私だって、恥ずかしいのはわかっているのだから。
「俺別にふわふわじゃないよ?」
「…そのくらい知ってる。
…こうしておかないと、朝になったら消えてしまうかもしれないでしょう」
なんて幼稚な言い訳だろう。否、言い訳にもなっていない。
その証拠に彼は、少し可笑しそうに笑っていた。
「理由なんかなくたってくっついていいんだよ。
アヤベが甘えてくれるの、うれしいし」
「…ごめんなさい。次からは直すわ」
「んー、無理にやめなくてもいいかな」
「…どうして?」
問い返すために上げた顔の真ん中に、柔らかい感触が走る。唇を奪われたのだとわかって、より強く抱きしめられる温もりが心を溶かした。
「かわいいから。一緒にいたいって思ってくれてるの、わかるし」
「…ばか」
いじわる。でも、いい。
そんないじわるも甘く響くくらい、あなたが好きだから。
付き合ったあとはこのくらい甘ったるいいちゃいちゃしてほしい
オペラオーにも言うかどうかで3日悩むアヤベさん
…1本にしなさい
って言えるようであって欲しい
(当然舞台に引っ張り上げられるアヤベさん)
披露宴の余興に新婦を参加させるなよ!
自分のウマ生を歩くことにしたアヤベさん良い…
こんな文才が欲しい…
だいぶ精神病んでたんだろうな…
気持ちよく寝られそうだ