そうして、此度も――。
「……申し訳ありません。予期せぬ降雪、それでももしかすればと一縷の望みにかけて旅程の通りに進めてしまいましたが……」
「あはは、大丈夫。意外と積もってきちゃってたからね、雪で中止になるのも仕方ないよ」
「私が早くに判断をしていれば、貴方に無駄足を使わせずに済んだというのに……」
「ううん、平気。折角ジャーニーが計画してくれた旅行なんだから。それに、行けるとこまで行ってみようって提案したのはこっちの方だし」
彼との水入らずの温泉旅行。事前に旅程を考え、素晴らしい旅路になるようにと準備をしてきたのだが……季節外れの予期しない降雪により、その旅路は大きく歪まされてしまった。
いくつかの予定をキャンセルし、できてしまった幾時かの暇を温泉街で潰してから予約していた旅館へのチェックインを済ませてしまった私たちは、暖房の効いた客室に荷物を置いて和室の座椅子に座り窓の外を眺めていた。
理想の旅路には似つかわしくない、憂鬱な気分が胸の内から溢れそうになる――。
「……そうだ、ジャーニー。貸し切り温泉、もう入れるみたいだよ。温泉なら雪の影響も無いしさ」
「……ああ、もうそんな時間ですか。ええ、では……参りましょうか」
あの人は、私を気遣うように温泉を勧めてくれた。彼のその心遣いに痛み入り、そうして彼に勧められるまま貸し切り温泉へと向かうのでした。
――――
「うっ、タオル巻いてるとはいえ流石に外は寒いな……ジャーニーは大丈夫か?」
露天風呂への扉を開けると、未だ雪降る寒空はこちらの肌を突き刺す。
「ええ、これくらいなら……ですが、冷えてしまう前に湯船に浸かるべきでしょうね」
「ああ、そうだな」
ぼやけた視界でも確かに見えるトレーナーさんの背を、追う。裸眼の私をトレーナーさんは気遣ってくれていて、細やかに露天風呂へと繋がる安全な道を教えてくれる。
その優しさに胸を温かくしながら、そうして白い湯気の沸き立つ露天風呂へと辿り着いた。
冷たい空気に触れていた肌が、温かな湯に浸る。少しの痛さを感じながらも、それに耐えじっとしていると次第に。その肌は温泉の熱に浮きやがて溶け出していく――。
「――あぁ……心地が良い」「はは、そうだな。気持ち良いなぁ」
思わず漏れた言葉に、あの人は嬉しそうに笑って同意する。それがなんだか少し、面映くて。頬に温泉とは違った熱がほんのりと浮かぶ。
白く濁った、なめらかな湯。絹のようなその感触に包まれて、温もりに浸って、ああ今日1日の疲労が溶けるようで――。
「……ジャーニー」
そっと、彼が呼ぶ。
「君は、雪が苦手だって前に言ってたね」
「……覚えて、いらっしゃったのですか……?」
「あはは、そりゃ君から教えて貰ったことだから。覚えてるよ」
何年も前の話だというのに、この人はそれが当然だと言うように笑ってみせた。
「……きっと、今日も雪のせいで、色々上手くいかなくなって。気を落としてると思う……けど」
「――そう、なのですか……?」
「ああ、悪くなかった。目的地までは辿り着けなかったけど、それでも良かったんだ。君と一緒に歩けたから」
彼は、ゆっくりと、そっと、微笑む。
「雪に包まれた温泉街も、雰囲気あって良かった。白い雪と流れる温泉の白い湯気と――予定に無い時間潰しだったかもしれないけど、雪の温泉街を君と巡れて良かったと思ってるんだ」
「それから――今も。見て、ジャーニー」
あの人は、湯船の外に視線を向ける。その視線の先には、冷たく雪が降り注ぐ夜闇。
……あぁ、そうか。
「雪が、降っていますね」
「……うん。白い雪が降って、積もってる。雪景色だ」
「雪見温泉……なるほど、これは確かに――」
――綺麗だ。
「……覚えていますよ。温かい部屋から見る雪は、好きだって」
その答えに、ああどこまでも彼らしいと思ったのだから、鮮やかに。
「なら、今日はそれに追加だな。……露天風呂に浸かりながら見る雪も、好きだ」
「――――」
――ああ、やはりこの人は。いつまでも、ずっと、私が好きになったあの人のままで。
「……なあ、ジャーニー。君は――こういう雪は、どう?」
彼に、問われる。降りしきる白い雪と、濁り湯と。静かで、温かな景色の中で、二人きり。ああ、そんな夜も……。
「……はい、私も。好きですよ」
「……! そっか、あはは、そっかぁ。それは良かった……!」
嬉しそうに笑う貴方。私の愛する人。つられて笑みが溢れて、そうして思う。
ああ、こんな雪なら、悪くはない――なんて。
ジャーニーと夫婦水入らずの温泉旅行がしたい




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