「「え」」」
ホワイトとゴールドが基調の広く清潔な試着室
丁寧に小柄なウマ娘のお客さまを仕立て上げ、カーテンを開けるその直前、待ったがかかる
思わずカーテンの外でお待ちの笑顔がチャーミングなお連れさまと困惑の声が重なった
「どうされましたか!何か問題が!?」
アクシデントでも起こっていたら大変なので慌ただしくチェックする
ウマ娘のお客さまの場合、例えば試着時にファスナーやボタンに尻尾が噛むなんてあるあるハプニングの一つだ
問題がないのを手早く確認。そして鏡越しに様子を伺って一安心した
「……るっさい!」言葉尻の強さの割に微笑ましいやりとり、こっそりと口角が上がるのを感じつつ
「大丈夫ですよ。ちゃんとご準備できましたから」
試着室の少し重たい重厚なベルベットの赤い布を開け放つ
だってどう見ても可愛いお嫁さんで、真っ赤な頬は不安より期待の色だったから
ベルラインをお断りになって試着されたエンパイアラインのドレス
華美すぎず花をあしらったレースが上品に際立つ
まとめた髪を花モチーフのシルバーアクセサリーで彩り、華奢な首元に揺れるピンクダイヤモンド
宝石言葉はたしか『完全無欠の愛』
私は素敵なお嫁さんを仕立てあげられた事を得意気に思いながら、すぐ未来の旦那様のところへ送り出した
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しかしまぁ、俺はそれすら愛しい大バカなので、何を言うかと豪快に笑いとばす
「俺はな、タイシン。君の少ない貴重な我が儘と迷惑を独り占めしたいんだ、知らなかったか?」
カーテンが開いた途端。そっぽを向いて中々顔を出さなくなった姿はまるで手負いの猫のようだった
出会った頃を思い出して、なんだか感慨深くなって
それと同時に今目の前の彼女と自分が積み上げた時間を思い返した
ピンクダイヤモンドでも足りないな、なんて……言ったらまた猫リターンズだ
勧められた小柄花嫁の定番らしいベルラインを断って選んだドレスは、彼女を不思議な色気と魅力に引き立てていた
そう、半年後は自分達にとって思い出深いクリスマスの季節
二人の式が控えている月だったから
なんでジューンブライドじゃないかって?
“あの"タイシンが素直にジューンブライドの空気に乗っかってくれると思うかい?思わないな!
心の中の自問自答会議は子猫のような瞳とかち合った瞬間一時閉廷した
幸せにしたいなって思う。幸せになりたいとも思う。二人でならそれが出来るから
これからもうやって“ふたり"を積み上げていこう
そう思いながら隣のタイシンを見下ろすと「暑い、視線が」と一蹴されるのだった
それはそうだ!誰しも世界一愛しいものを見る時はこうなるんだ!
ジューンブライドが誕生日と思ってそういうネタにしたかったけどあんま誕生日は関係なくなってしまいました
>「なんかさ、迷惑かけてごめん」
この辺の解像度たけェ〜
おめでタイシン!
>誕生日おめでたい!
😸
>おめでタイシン!
😾
昼過ぎに終わって着替えて「ちょっといい夕飯でも食べよう」
なんて行った先のレストランが貸切の二次会になってそう
──そこは都会の喧騒 波 波 波
6月とはいえ雨上がりだとひどく冷える
ついさっきまであんな恰好で平気だったのがウソみたい綺麗なドレス、祝福の眼差し、暖かな声
現実感が追い付かず、周囲が自分を通り越して加速するように
ぽつり取り残されたような不思議な気持ちに足元が遠のいた
……気がした
少しくらっとする
おそらく軽い酸欠
時々ある。夢と現実の堺が混ざって不安になる感じ、心臓がぎゅっとなる
底の浅い鍋でしか幸せを受け止めきれないアタシの昔からの癖のようなもの
もしもそれらが夢のように消えたとしても
それでも一番なくしたくないものは──「うわーー蒸っ暑ぅ!タイシン!駅までかけっこ競争しないか!?」
隣を見上げる
バカみたいな顔でバカみたいな事を言う
世界で一番大切で、世界で一番大切にしてくれるヒト
「……ばーか」
追いつけない癖にと言うかわり
置いていかないように、はぐれないように、その手をとった
そのシルエットも喧噪と波に混ざり合う街往く人々がそれぞれに背負ってきた苦悩を、ドラマを、涙を、誰が知るだろう
今はただ誰かの後ろを通りすがる幸せな“ふたり"がいるだけであった
>世界で一番大切で、世界で一番大切にしてくれるヒト
もうタイシンにここまで言わせたら勝ち
一生勝ち
最後に見る光景はこれがいい
こわい!
目の前のタイシンを見ろ
出力される熱血なセリフがいいよねタイトレ
タイトレのタキシード試着でタイシンが惚れ直す回も見たいわ!
タキシードのボタンがぱつぱつしてる…
急に火遁豪火球の術こないか身構えてしまう自分が邪魔
クリークが取るのが「タイシンを支えてたのはBWだけじゃないよ」って感じで良い