しかし、泳ぐのは嫌いなはずなのに水着に着替えてプールに行くまではやってくれる。
「ミラ子は何を着ても似合うよな。水着姿もきっと素敵だぞ!よっ!まな板の上の鯉!」
確か自分はこんな事を言った覚えがある。ヒシミラクルは褒められると押し切られる傾向がある。もしかしたらこれを応用すれば彼女に自主的に泳いで貰う事ができるかもしれない。
ここで大事なのは無茶振りと言ってもギリギリできる範囲の無茶振りであること。また、無理そうなら素直に食べ物で釣る事だ。
「ミラ子ってよく見ると可愛いよな」
「へ!?」
初日はこれで行くことにした。突然の事に彼女は驚いているようだ。
「急にどうしたんですか?頭でも打ちました?それとも何かたくらんでます?」
「いや、昨日ふと思っただけだよ」
作戦がバレては元も子も無い。俺は上手く平然を装う。
よくわからない質問をされた。意味?そんなものは一つに決まっている。
「女性として魅力的だと思うよ。内面の優しさが表れた顔つきに綺麗な瞳。ウマ娘としてキラキラ輝いてるよ」
うん、瞳だ。そういえばミラ子は瞳がとても綺麗だ。
「えへへ…そ、そうですかね…」
「照れてる顔もかわいいよ」
「トレーナーさん?口説きの練習でもしてます?」
そんなミラ子の可愛い顔と綺麗な瞳を写真に撮らせてほしい、と必死でお願いした。ヒシミラクルは案外、素直に承諾してくれた。まあこの程度のお願いならそんなものなのだろう。
結局、彼女があんまり可愛かったので、つい15枚も撮ってしまった。
ミラ子の髪の毛はふわふわしていて色もクリームみたいでとても綺麗だ、見ているだけでドキドキすると伝えたら、なんと髪を触らせてくれた。
予定では色んなヘアースタイルにチェンジした写真を撮らせてもらえればそれで良かったのだが、思わぬ収穫だった。この分なら作戦は成功しそうだ。ちなみに当然写真も撮った。ポニーテールのヒシミラクルは天使のように可愛かった。
そんなこんなで3日目にはセーラー服を着せる事に成功した。
「コスプレ好きの友達から預かってさ〜」
勿論嘘である。自分で買った。
4日目にはなんとメイド服を着てくれた。『ヒシミラクルフォルダ』は既に200枚を突破していた。
そろそろ、可愛いミラ子の写真を撮ってばかりでも駄目だなと思い、褒める内容を変えてみる事にした。
「ミラ子って料理上手だよね」
「そうですか?お好み焼きなら自信ありますけど…」
「実は俺、ミラ子の作ってくれたお好み焼きがめちゃくちゃ好きなんだ。あれなら毎日食べられるよ」
「オトウサンオカアサン、クーチャンハチカイウチニヴァージンロードヲアルクカモシレマセン…」
ヒシミラクルがなにかブツブツと呟いていたが無視して、俺のためになにか料理を作って欲しいと頼んだ。
何やら覚悟を決めたような目をしていたヒシミラクルは、笑顔の二つ返事で了承してくれた。しかし彼女の方から提案した料理の種類はなんとお弁当であり、食べられるのは翌日の事となった。
いつものようにヒシミラクルの作ってくれたお弁当を食べながらバニー姿のヒシミラクルと一緒に昼食を食べていた。
「俺、ミラ子と出会えてよかったよ」
今回の作戦はヒシミラクルの内面を褒める事にする。今までは可愛い容姿や料理の腕、可愛い声などを誉めていたが、流石にネタ切れ気味という事もあるし、そろそろ作戦も終盤に差し掛かるので本気を出さなければならない。
「ふふ、なんですかもう」
少し前の彼女なら驚いて、少し慌てて照れていただろうが最近はなんだか余裕がある。
ヒシミラクルを担当したおかげでトレーナーとして頑張れた、君が俺の仕事を人生を充実させてくれた、ヒシミラクルは俺の光だ、と自分にとっての彼女の存在の尊さを必死で力説すると、当の本人は流石に少し照れくさそうにしていた。
前に一度温泉旅行で一泊した事はあったが、今回は旅行先ではなく、トレーナー寮の部屋とも別に学園の外に借りている自分の部屋に招く事にした。仕事で時々使用するくらいでほとんど物置と化していたが、ミラ子を呼ぶにあたって整理整頓したのだ。
ヒシミラクルは最近よくやる覚悟を決めた顔になってから、笑顔で了承してくれた。
その二日後にお泊まり会作戦は実行された。と言ってもただただ普通にお菓子やたこ焼きを二人で食べて映画を見たりして楽しく過ごして終わった。その次の日の朝に目が覚めると何故か自分の布団の中にミラ子が入っていたが、起こさないようにそっと元の位置に戻しておいた。
ミラ子との絆はだいぶ深まっていた。最近では彼女の喋り方や態度や仕草に心なしか優しさを感じる。
今では無言で彼女のお腹をツンツンしても何も言わなくなっている。
ここまで頑張った甲斐があった──────流石にそろそろいいだろう。
そう、今までミラ子を褒め続けたのは全てこの時のための布石だったのだ。全て本心ではあるが。
「ミラ子、今日はプールでスタミナトレーニング」
ああ、やっと苦労が報われる
「しません」
作戦上必要だろ
それもそうか
実際はトレーナーの押しが強すぎるせいで対トレーナーだけちょろくなってしまったズブズブズブ娘ズブティーダービーである
いいよね…
適当な褒め方だとちゃんと気付くし乗せられるのにも時間かかるから言うほどチョロくはない
好感度がちょっとでも+寄りになった場合
流れで押し切れば1番簡単にぴょいさせてくれそうな感じはある
押し切るまでに2200mずっとグイグイぺしぺしし続けるくらい体力と根気とバランス感覚必要そうだ…
その流れに持っていくまでに相当な勢いで押さないと無理なんですが
チョロ娘一番はさすがに厳しいだろ
ちょっと乗せられただけでよくわからんトレーナーと契約までしちゃったシチーさんのがちょろい
ミラ子って水着似合いそう→泳ぎませんよ
ミラ子って多少苦手な事にも立ち向かう勇気の持ち主だよなかっこいい→泳ぎませんよ
当然だよね
ただ「しません」のオチで吹いた
身体も気持ち良くしてくれたらいけるんちゃうか?