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2025.04.01-04:31:45

ウマ娘怪文書

【ウマ娘怪文書】「えっ、来週いないの?」何の気なしに口にした来週の予定に、彼女──ミスターシービーは、思いの外強い反応を見せた

 コメント (0)

1: 名無しさん(仮) 2023/09/02(土)23:54:45
「えっ、来週いないの?」
一週間分の仕事を終え、彼女とともに思う存分疲れを癒すことだけを考えていた金曜の夜のことだった。何の気なしに口にした来週の予定に、彼女──ミスターシービーは、思いの外強い反応を見せた。
「ああ。月曜から出張」
「いつまで?」
「平日ずっと。金曜には帰ってくるよ」
「どこ行くの?」
「地方のトレセン。これでも三冠ウマ娘のトレーナーってことになってるから、講演してくれないかって頼まれちゃって、断れなくてさ」
2: 名無しさん(仮) 2023/09/02(土)23:55:23
自分の力で彼女が三冠ウマ娘になったなどとは思っていない。彼女にとってのクラシックロードは、心の赴くままに辿ってきた旅路のひとつに過ぎない。三冠は単なる結果であって、目的ではなかった。やりたいようにやっていたらそうなっただけのことだ。
だからこそ、自分が三冠ウマ娘のトレーナーとして教えを請われる立場になるとは夢にも思っておらず、今回の話は正しく寝耳に水だった。自分の認識を正直に話して断ろうとも思ったが、ひどく熱心な態度でこちらに頼み込んでくる彼らの目が、レースに勝って戻ってくるシービーを見つめるファンたちのまなざしと重なって見えた。
夢を見るのは自由だし、その夢を壊すようなことはしたくないと、いつかの彼女が言っていたことを思い出してしまった。それで結局最後まで断る決心がつかずに、気がつけば三か所、計五日間の出張講演という何とも柄に合わない仕事を引き受けることになった。
3: 名無しさん(仮) 2023/09/02(土)23:55:33
「随分急だね。どうしたの?」
「ほんとはもうちょっと前に決まってたんだけど、なんだか恥ずかしくて」
本来なら担当である彼女に一番に伝えなければならないことだとはわかっていたが、当の彼女によって齎されたようなこの仕事について話すのは少し気恥ずかしくて、結局今まで先送りにしてしまっていた。居ない間のために組んでおいたトレーニングメニューも、その通りになるかは彼女次第ですと正直に話すわけにもゆかず、講演の内容に終始頭を捻っていたというのもある。それに、シービーの話をすることをほかならぬ彼女に伝えると思うと、子供の頃に家族についての作文を彼らが見ている授業参観で朗読したときのような落ち着かなさを感じてしまう。
4: 名無しさん(仮) 2023/09/02(土)23:55:55
「えー?なんで?」
「恥ずかしいものは恥ずかしいの」
くすくすと笑う彼女にそのことを揶揄われても、膝の上に頭を乗せられていれば逃げる術はない。遊びたい盛りの仔猫のように目をらんらんと輝かせた彼女は、照れ臭さで頬を掻きながら今回のことについて話し終えるまで、実に楽しそうにこちらを捕まえていた。
「照れなくたっていいのに。きみだからできた立派な仕事でしょ?」
「シービーに連れていってもらったんだ。俺の力じゃないさ」
面白そうに脇腹をなぞっていた指が止まる。偽りのない本音を述べたつもりだったが、シービーは頬を膨らませて面白くなさそうにしていた。
「そういう言い方は好きじゃないな。うれしいけど」
「本当のことだよ」誰に似たのか、随分と頑固者になった気がする。きっとシービーも同じことを考えていたのだろう。
ころころと膝の上を転がっていた彼女は、やがてそれさえも慈しむように、やはり嬉しそうに笑った。
「走ったのはアタシ。走るのが楽しいのもアタシ。それはきっと本当。
でも、ずっとそういうアタシでいられたのは、きみのおかげだよ、きっと」

5: 名無しさん(仮) 2023/09/02(土)23:56:19
「きみのごはんが恋しくなるね」
「ごめんな。夕飯は自分で」
彼女の頭をそっと撫でて、宥めるように指の間で髪を梳く。彼女がこちらのなすがままに、その形のよい耳を手の甲に添わせてくれるのが、なんだか嬉しかった。
「いいよ。帰ったらいっぱい作ってくれる?
おみやげも楽しみにしてるから」
「写真撮るよ。欲しいものがあったら言ってくれ」
ただ、この答えだけは彼女のお気に召さなかったらしい。額を指先で弾くだけの優しい抗議が飛んできて顔を伏せれば、彼女のしなやかな掌が頬を包んだ。
「きみが考えて選んだのが欲しいの」
6: 名無しさん(仮) 2023/09/02(土)23:56:37
彼女に信頼される。こうして遠慮なく求められる。
それが幸せで仕方ない。少しの無茶でも、叶えてあげたくなってしまう。「…ふふっ」
「?」
「なんて話すのかなって。アタシのこと」

「俺を一生懸命にさせてくれるひと、かな」

柄にもない努力が好きになった。
彼女の笑顔を、少しでも長く見ていたい。

7: 名無しさん(仮) 2023/09/02(土)23:56:56
「良い眺めでしょう。夏に見るのがまた格別で。我々の校舎はこの山の麓にありまして、あの滝の沢まで登っていくのが夏の恒例のトレーニングになっているんですよ。
何もないところですが、この景色は一見の価値ありと思っています」
車窓から見える景色に心を奪われ会話が疎かになっていた自分に、先方のトレセンの担当者は気を悪くすることなく、むしろ優しくその景色について紹介してくれた。
静かな山間を走る鉄道の中は客も疎らで、車輌には自分たちの他に誰も乗っていなかった。急ぐ客もいないからかその運転もどこか閑かで、眼の前を流れ落ちる滝の音までじっくりと聴かせるように、列車は山道を縫ってゆっくりと進んでいった。
「ええ、本当にそうですね。
…シービーもここにいたら、きっと喜ぶでしょう」
8: 名無しさん(仮) 2023/09/02(土)23:57:12
この旅でひとつだけ、悪い癖がついた。眼の前に美しい景色が広がっていると、知らず知らずその中に彼女の姿を思い描いてしまう。
彼女がここにいたら、どんなに楽しそうに舞い踊るだろうか。この景色をどう感じて、どんなふうに笑うのだろうか。
『きみはどう感じた?』
答えはない。彼女はここにはいない。自分の造った彼女の幻影が、本物の彼女の代わりになるはずもない。
彼女に会いたい。会って話がしたい。仕事の間は何も感じないのに、こんな景色を見ると心からそう思い始めるから不思議だ。
彼女をずっと手許に置きたいと思ったことはない。いつも自由な彼女がずっと自分のそばにいるはずもなくて、よしんば彼女をずっと捕まえられたとしても、その輝きはきっと掌の中で褪せてしまうだろう。
そんな彼女の自由な姿を、心から愛していた。
だから、この寂しさは、きっと。
彼女がそばにいなければ、美しいものを真に愛せなくなってしまったからだと、思った。
9: 名無しさん(仮) 2023/09/02(土)23:57:27
「…」
体は動かしていない。ただ話して、乗り物に乗って、その繰り返しだった。それでどうしてこれほど疲れるのか、不思議で仕方なかった。
お疲れ様、と声をかける同僚におざなりな挨拶を返して、トレーナー室のドアをくぐると同時に荷物を手放してソファーに突っ伏した。
柔らかいもので全身を受け止められると、かろうじて脚を動かしていた体にどっと眠気が襲ってくる。眠ってはいけないのに、瞼が重くなり記憶が途切れ途切れになっていく。
ああ、駄目だ。このまま眠ってしまえば、次に起きるのはきっと夜中だ。やっと彼女と一緒の景色を、見られると思ったのに──
10: 名無しさん(仮) 2023/09/02(土)23:57:46
不思議な夢を見た。
現実と虚構が入り混じった奇妙な夢だ。今自分が立っているのは、紛れもない京都レース場のターフの上。スタンドには満員の観衆が、地面を揺らすほどの歓声を上げて出迎えてくる。忘れもしない。ここはクラシックロードの終着点、菊花賞の舞台に違いなかった。
ただ、横を見れば甚だ奇妙な光景が広がっている。ターフに立っているのは、見目麗しくも凛々しいウマ娘たちではない。ヘルメットとゴーグルを付け、ウマ娘の勝負服のような色とりどりの衣装を身に纏い、真剣な表情で手綱を握る男たちだった。
そもそもトレーナーである自分が、ここに立っていることもおかしい。そう思って視線を伏せれば、自分が跨っているものの存在に気がつく。
11: 名無しさん(仮) 2023/09/02(土)23:58:02
ウマ娘のような耳と尻尾。けれどその姿は少女のそれではなく、すらりと伸びた四本の脚で力強く大地を踏みしめる動物だった。この場で速さを競う主役は彼らに違いなく、観衆たちも口々に、どの「うま」が強い、どの「うま」が速いと言い争っていた。
何もかも違う。自分たちが共に歩んできた、少女たちの姿はここにはない。そこにすっぽりと収まっているのは、見知らぬ動物の姿だった。
けれど彼らを見ていると、そんな不安は自然とかき消えていった。
彼らは美しかった。ターフの上で汗と涙を流し、己の力を全身全霊で競い合う彼女たちと同じように、強く美しい生き物だった。
12: 名無しさん(仮) 2023/09/02(土)23:58:18
気がつけばレースが始まり、自分たちは早くも向こう正面の坂の手前まで来ていた。自分が「彼」に跨ってレースをすることへの違和感は、不思議とすぐに掻き消えた。
全てがわかった。言葉は話せないけれど、彼らが何をしたくて、何を望んでいるのかすぐに感じ取れた。だから自分とともに走る彼が、今何をしようとしているのかもすぐにわかった。
始めは止めようと思った。この坂はゆっくりと登ってゆっくり下るのが常識だ。今彼の行きたいままにさせれば、きっと彼の体力は尽きてしまうだろうと、そう思った。
『でも、行ってみたい。あの坂を一気に登って、全速力で駆け降るんだ。
眼の前の景色がぐんぐん後ろに流れてく。風が耳の隙間を突き抜ける。
きっとそれは、すごく気持ちいいよ。
走りたい。走りたくて仕方ないんだ…!』
13: 名無しさん(仮) 2023/09/02(土)23:58:31
確かにその声は、はっきりと聞こえた。気づけば手綱を緩めて、彼のしたいようにさせていた。
自分が思うまま、望むままに自由に走る。それこそが彼の、彼女の、一番輝く舞台だと知っていたから。
どよめきが風の音の中に掻き消える。景色が目まぐるしく変わって、眼の前にいる彼の姿も、光の中に掻き消えていく。
『この脚は止まらない…!常識も、限界も、全部越えていくんだ…!
だって、だって…!
心が、そう望んでるから!』彼女の背に負われて見た景色。彼女がいつも見て、愛した、かけがえのない景色。
きっとそれは、そういうものだったのだろう。
「大地が、大地が弾んでミスターシービーだ!史上に遺る、これが三冠の脚だ!
拍手が湧く!ミスターシービーだ!」

ああ、そうか。
そこにいたんだね、シービー。

14: 名無しさん(仮) 2023/09/02(土)23:58:56
「あ、起きた。
どんな夢見てたの?楽しそうに笑ってたよ」
まだ眠い目を擦って見ても、彼女の顔立ちは相変わらず美しかった。楽しそうに頬を擽る彼女の指を掴まえて、その質問に答える前にやっておくことを思い出す。
彼女の膝の上であやされながらではなんとも格好がつかないが、致し方ない。
「…先にひとつ訊いてもいいか」
「うん。いいよ」「なんで俺外で寝てるの」

15: 名無しさん(仮) 2023/09/02(土)23:59:10
叢の匂いが混じった涼しい風が頬を撫でる。こちらの顔を覗き込む彼女の背中には、満天の星空が広がっている。
それに気づいたことがおかしくて仕方ないらしく、彼女が身体を揺らして笑う度に、膝の上に乗ったこちらの頭も揺れた。
「ぁはっ、あははははっ…!
あー、おかしい」
「おい、答えてくれよ」
「あー…あはは…
ごめんごめん、きみの顔がほんとに呆気にとられたって感じで、面白くて」
16: 名無しさん(仮) 2023/09/02(土)23:59:24
息を震わせて目を擦る彼女を見て、色々なことに合点がいった。きっとあの夢も、彼女が寝ていた自分を連れ出して、背に負ってここまで連れてきたから見たものなのだろう。
けれどどうして、彼女がそんなことをしてまでここに自分を連れて来ようと思ったのかは、最後までわからなかった。
ひとしきり笑った彼女は少しだけ襟を正して、けれどその柔らかな微笑みは崩さないまま、耳元で囁いた。「責任、取ってほしいから」
その言葉は重く響いた。けれど何故か、それが心地よかった。
「なんの?」
そう問い返した自分に、彼女はまた目を細めて、嬉しそうに微笑んだ。
その言葉の意味を、もう一度味わうように。
「アタシの自由を変えちゃった責任」

17: 名無しさん(仮) 2023/09/02(土)23:59:45
その言葉がすっと染み渡ったと同時に、眼の前で光の花が咲いた。
赤、緑、紫。色とりどりの閃光が、気持ちのいい音を引き連れて夜空に踊る。
「…綺麗」
彼女の言葉の意味を問うのも忘れて、その景色に見惚れてしまった。けれど彼女は気を悪くすることなく、むしろ誇らしそうに、同じ光を見つめていた。
「いいでしょう。ここアタシの秘密の場所だから、誰も来ないよ。
ないしょだから。ね?」どうして彼女が自分を背負ってきたのか、やっとわかった。
「…そっか。連れてきてくれたんだな」

18: 名無しさん(仮) 2023/09/02(土)23:59:57
「予定立てるのって苦手でさ。花火があるのも今日思い出した。だからきみにも教えてない」
本当に、偶然だった。帰ってくるときにそのポスターを見て、きっと彼女は喜んでくれるだろうかと思って、ただ手に取っただけだったのだ。それで寝過ごしてしまえば世話はないけれど。
「それに、疲れて寝てるきみを起こすのも悪いなと思って、ひとりで行くつもりだったんだ。
でもさ、きみがそのパンフレット握ったままなの、見ちゃった」
でも、もし彼女が同じことを望んでいたのならば。その景色を一緒に見たいと、思ってくれていたのならば。「そのときアタシがどれだけ嬉しかったか、わかる?何も言わなくても、きみと心が通じてる気がしたんだ。
なら、きみと見ないなんて嘘でしょう?」
彼女と自分の幸せのかたちが、同じだったとしたならば。
それはなんて、幸福な時間だろうか。

19: 名無しさん(仮) 2023/09/03(日)00:00:08
絶え間なく打ち上がっていた花火はいつの間にか止んでいて、辺りは一転して静けさに包まれていた。彼女の他に見るべきものがなくなって、自然とその瞳に目が合う。
それが楽しくて仕方ないと言うように、彼女は静かに微笑んだ。
「どんなに楽しいことをしても、この気持ちをきみと分かち合えたらって、ずっと思っちゃってる。きみがいない間、ずっとそう思ってた。
きみと一緒にいるってすごく楽しいんだってことを、アタシに教えちゃったんだよ、きみは」
虫の声さえも、彼女の言葉に聞き惚れたようにぴたりと止んでいた。その奥に籠められた想いまで、感じ取れる気がした。
「もしかしたら、きみがいなくなって何年も月日が流れたら、この気持ちも忘れてしまうのかもしれない。きみがいなくてさみしいって思うこともなくなって、前のアタシに戻るのかもしれない。
それはそれで、きっと自然なことだよね」「──でも、そうなりたくないんだ。きみがいなくても平気なアタシになるのは、嫌だ」

20: 名無しさん(仮) 2023/09/03(日)00:00:21
自分のことを自分で決める。住む場所も、話す言葉も、生き方も。
それは人間が持つ最も基本的で、一番価値のある権利だと思っていたし、今もそれを大切にしたいのは変わらない。それを持ち続けることが、自由であるということなのだから。
例えば、この学園を出て、レースの世界からも身を引いて、新しい生き方を見つけたとしたら。
きっとこんなふうに、きみには会わなくなる。そうして何年も経って、きみのことを考える時間が、どんどん減っていく。
それはきっと自然なことだ。
──でも、そんな自分を想像すると、きみを忘れたアタシが、ひどくつまらない人間に思えて仕方なくなる。「あはは、おかしいよね。誰かがいないとだめな自分が好き、だなんて。前のアタシなら考えられないよ。
自由っていうものの形が、アタシの中でちょっとだけ変わっていってるんだ」

理不尽だ。でも嫌じゃない。
自分が変になっていく。でも、それさえも心地いい。
恋をするって、きっとそういうことなんだね。

21: 名無しさん(仮) 2023/09/03(日)00:00:49
ちょっと悔しい。アタシをこんなに変えるものがあるなんて。変えられることが、心地良いなんて。
なのにきみは、全然知らん顔してばかりだ。
それが、ちょっとだけ悔しい。
うん。だから──
「だから、責任取ってほしいんだ。
アタシをここまで変えちゃった、責任」
アタシに、きみをちょうだい?
22: 名無しさん(仮) 2023/09/03(日)00:01:08
本当に参った。そうやって口にしたら最後、きみの本当に何気ない仕草まで、愛おしくて仕方なくなる。
アタシにそんなことを言われて、少し困ったように目を伏せるのも。きみを困らせるためだけに、突拍子もないことを言ってみてもいいかなと思うくらい。
でも、やっぱり一番好きなのは。
「どうすればいい?」
──そんなアタシの言うことに、付き合ってくれると覚悟を決めたときの、その穏やかな微笑みなんだ。
23: 名無しさん(仮) 2023/09/03(日)00:01:20
やりたいことはたくさんある。きっとその全部を、きみならいいよと言ってくれる。
却って困ってしまった。たくさんありすぎてそのどれもが素敵だから、今すぐに決められない。
「んー…
ぁは。いっぱいあったはずなのに、こういうときにはパッと出てこないんだよね」
こんなことなら、思いついたときに書き留めて、予め何をしたいか決めておけばよかっただろうか。
いや、やめておこう。そんなのつまらない。今やりたいと思ったことを、今すぐやるから楽しいんだ。
「まあ、いっか。明日やりたいことは明日考えるのが一番いいよね、きっと」
明日のことは明日にならないとわからないから。空の色も、アタシの心も。
いいかげんと言われるかもしれない。でも、それでいい。
「今はこうやって、星を見ようよ。
ふたりで、いっしょに」
成り行き任せで、何もわからない旅路の果て。
きみもアタシも、それが楽しくて仕方ないんだから。
24: 名無しさん(仮) 2023/09/03(日)00:01:34
「どうしたらいいんだろうね」
ずっと欲しかったものが手に入ったのは嬉しいけれど、嬉しさと一緒に、心の中の疑問も増してくる。
「ん?」
そんなアタシの不可解な問に、彼はアタシの膝に身を寄せて、楽しそうに微笑みながら耳を澄ます。
何もかもに答えを求めるのはきっと無粋だ。でも、こればかりは知りたくて仕方ない。
「縛るのも縛られるのも、アタシは嫌なんだ。なのに、どうしよう。
きみのことはひとりじめしていたい。誰にも渡したくないんだ」
アタシは自由が好きだ。自分がそうであることも、他人がそうであることも。
だから、きみはきみのままでいてほしい。でもそんなきみを、アタシだけのものにしたい。水槽の中に魚を入れておきたい気持ちが、なんとなくわかった気がする。
実感したいんだ。この美しさはどこにも行ったりしない、って。

25: 名無しさん(仮) 2023/09/03(日)00:01:45
我儘な人間だとは思っていたけれど、最近はそれがもっとひどくなっている気がする。
自分の自由も他人の自由も尊重するだけの慎みは、持ち合わせていたはずなのに。それが今では、自分のしたいことのために、きみの自由を奪い去ろうとしている。
「…いいよ。むしろ嬉しい」
罪深いことのはずなのに、それに心を踊らせている自分がいる。
「なんで?」
全部、きみのせいだよ。だって──「君が好きだから」

そんなアタシを受け入れてくれるきみが、好きで好きで仕方ないんだから。

26: 名無しさん(仮) 2023/09/03(日)00:02:00
一人で生きていけないのは弱さの現れだと、思っていたこともあった。今だって、誰かに生き方を無理矢理決められるのは好きじゃない。
でも、そばにいてほしい誰かができることは、弱さとは思えないほど心地いいんだ。
「俺だって、寂しかったよ。でもシービーの自由を奪いたくなくて、あんまり言えなかった。
シービーがいろんなものを愛してるのと同じように、俺もシービーのことを愛してる。
…シービーに、愛してほしい」
アタシがそうであるように、きみもそうであってほしい。アタシがいないとだめになってしまうくらい、きみにもアタシに夢中になってほしい。
狂っていてもいい。もっと変になっていてほしい。
アタシはもう、きみから目が離せない。「きっと、シービーは俺だけのものになんてならないんだろうけど。
俺がシービーのものになるなら、いい。シービーにひとりじめされたい。
それだけ愛してるって、わからせてほしい」

だから、ね。
きみがそうやって、どんなにアタシのことが好きなのかって伝えてくれるだけで、アタシはひどく幸せなんだ。

27: 名無しさん(仮) 2023/09/03(日)00:02:42
「…ふふ。
えいっ」
戯れるようにきみに覆い被さっても、きみは優しく微笑んでくれる。少しぐらい慌ててくれたほうが可愛げがあって新鮮だけれど、こういうときにきみが照れないのは、もうよくわかっている。
焦ることも躊躇うこともなく、アタシを受け止めるようにそっと包み込んでくれる。そんなわかりきったことが、ひどく嬉しくて仕方ないし。
「きみは不自由も愛せちゃうんだね」
アタシにはないきみの個性を感じるのが、すごく好きだ。好きと思えば我慢できないアタシと違う、慈しむような手付きで優しく抱きしめてくれる度に、きみとアタシが同じではないことが、どれだけ幸せなことなのか実感できる。
「シービーの隣なら喜んで」
だから、アタシのそばにいれば不自由だって心地いいと言い切ってしまえるきみが、とても素敵だと思う。
28: 名無しさん(仮) 2023/09/03(日)00:03:00
「あははっ。きみも変だよね。
でも、それが好き。アタシの見てないものを見てるきみが、好き」
もっときみを知りたい。ずっと一緒にいるのに、まだ足りない。きみと離れて、心からそう思った。
きみがいる幸せに思いを馳せるためなら、離れていた時間にも意味があると思えるほどに。
「だから、ね。おねがい」
でも、だからこそ。
きみが隣にいる今は、きみのことをもっと知りたい。
きみのことを、感じていたい。「もっと。いっぱい抱きしめて。
きみの『愛してる』を、教えて」

29: 名無しさん(仮) 2023/09/03(日)00:03:12
きみの胸に身を委ねて、その腕の中にぴったりと収まる。自分の身体を縛るきみの力を感じると、何故か心が満たされていく。
こうしていると、きみのことがよくわかる。ゆっくりと背中を撫でてくれる、優しくて暖かいきみ。それでもアタシを離したくなくて、ぎゅっとアタシを抱きしめる、いじっぱりでかわいらしいきみ。
「いいのか?抱きしめるって不自由そうだけど」
もうこんなに抱き合っておいたあとでそんなことを言う、ちょっとだけ意地悪なきみ。
「いいの。楽しい不自由もあるって、きみが教えてくれたんでしょう?」
その全部が、心地いい。こんなくだらなくて素敵なやりとりが、ぴったりとアタシの心に嵌っていく。
心地良い不自由もあるだなんて、きみがいなければ、きっと知らなかったよね。明日のアタシがどんなアタシなのかは、アタシにもわからないけれど。
明日もまた次の日も、これからずっと先も。
──きみを好きなアタシで、いられたらいいな。

30: 名無しさん(仮) 2023/09/03(日)00:04:20
おわり
身も心もシービーのものにされたい人生だった
31: 名無しさん(仮) 2023/09/03(日)00:04:37
シービー怪文書は力作が多すぎる
32: 名無しさん(仮) 2023/09/03(日)00:06:36
CBを自分のものにしたら縛り付けちゃう
なのでこっちがCBのものになる
33: 名無しさん(仮) 2023/09/03(日)00:06:56
いい…お互いに不自由を楽しめるようになっちゃったんだ…
38: 名無しさん(仮) 2023/09/03(日)00:11:27
>>33
散々トレーナーを連れ回して遊んだ楽しい一日の〆がトレーナーの腕の中になるんだ…
広い草原とは比べ物にならないくらい窮屈なはずなのにそれが心地いいんだ…
34: 名無しさん(仮) 2023/09/03(日)00:08:15
びっくりするぐらい大作だった
35: 名無しさん(仮) 2023/09/03(日)00:09:05
すき…
36: 名無しさん(仮) 2023/09/03(日)00:09:06
綺麗な雲の形とか見つけてトレーナー室に行くけど誰もいないことを思い出して少し耳を絞りながら窓から空を眺めるトレーナー出張中のシービー
37: 名無しさん(仮) 2023/09/03(日)00:09:29
シービーシナリオは自由で奔放な子が自分に寄り添う存在を受け入れていく様子が良い
40: 名無しさん(仮) 2023/09/03(日)00:17:08
>>37
自分と全然違う人間で自分の見えない角度からものを見てるから自分には気づけなかった予想外のことを教えてくれる
でも自分が大好きな自由の価値も知っていて奔放な自分にも愛想を尽かさない
そういう相手に自分を諦めてほしくないってちっちゃな意地が生まれるのがいいよね
42: 名無しさん(仮) 2023/09/03(日)00:21:16
古今東西あらゆる人間の脳を焼き続けてるとびきり自由で顔のいい女いいよね
43: 名無しさん(仮) 2023/09/03(日)00:23:45
ぎゅっと抱き合ってお互いの体温を感じたりそのまま繋いだ手の指を絡ませあって手遊びをするのが好きだといいと思います
44: 名無しさん(仮) 2023/09/03(日)00:26:29
「ずっとそばにいるよ」って言葉に安心する理由がわかったシービーいいよね
45: 名無しさん(仮) 2023/09/03(日)00:31:23
行きたかった場所が同じだったしトレーナーの方から誘おうとしてくれてたってわかったときにすごくきゅんきゅんしてそう
今まで会えなかったけど心は通じ合ってるってわかっちゃったから
48: 名無しさん(仮) 2023/09/03(日)00:36:32
いつも突然一人旅始めるのにトレーナーが帰ってきた次の日は「一人旅はこの前ずっとしてたから」って穴を埋めるようにトレーナーにくっついてたりするとかわいいと思う
55: 名無しさん(仮) 2023/09/03(日)01:04:25
誰よりも自由を愛する女の「きみのくれる不自由は心地いい」って言葉がどれだけ重いことか
56: 名無しさん(仮) 2023/09/03(日)01:09:30
お互いにお互いの心に触れ合う瞬間が一番心地いいんだよね

-ウマ娘怪文書
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