1: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:01:37
春
3ヶ月に1度、僕はメジロ邸にお邪魔する。僕の担当ウマ娘、メジロブライトと一緒に、彼女のご両親と定期的な面談を行っているのだ。
と言っても、順調に勝ち上がっている彼女については特に憂慮すべきこともなく、もっぱらご両親に学園のことや僕のことを質問攻めにされるのだが、僕はこの時間を楽しく思っていた。
学園では彼女の様子はどうかと伝えると、ご両親はとても嬉しそうだからだ。ついでに僕のことも色々聞かれるのは少々疑問ではあるが……。
この日もそんな面談を終えて、ブライトの部屋で少しのんびりとさせてもらっていた。
3ヶ月に1度、僕はメジロ邸にお邪魔する。僕の担当ウマ娘、メジロブライトと一緒に、彼女のご両親と定期的な面談を行っているのだ。
と言っても、順調に勝ち上がっている彼女については特に憂慮すべきこともなく、もっぱらご両親に学園のことや僕のことを質問攻めにされるのだが、僕はこの時間を楽しく思っていた。
学園では彼女の様子はどうかと伝えると、ご両親はとても嬉しそうだからだ。ついでに僕のことも色々聞かれるのは少々疑問ではあるが……。
この日もそんな面談を終えて、ブライトの部屋で少しのんびりとさせてもらっていた。
2: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:01:51
何気なく彼女の部屋のアンティークを見ていると、目を引いたのは大きなドールハウス。内部は精巧なまでに作り込まれており、まるで指人形サイズの住人がそこで生活しているかのようだ。
暖炉室を見れば、うさぎのフロッキードールが二人、ソファに座っていた。
子供用のおもちゃのフロッキードールなら見たことはあるが、これはCMでもお目にかかったことはない。きっと特注品だな。
「あら〜。アントレヌールくんが気になりまして?」
なんてことを考えていると、いつの間にか部屋に戻ってきたブライトが、背後から覗き込んでいた。
「ごめん勝手に見て。すごい細かいなぁって」
「こちらわたくしの趣味のドールでして。男の子がアントレヌールくん、女の子がエテュディアントちゃんですわ」
暖炉室を見れば、うさぎのフロッキードールが二人、ソファに座っていた。
子供用のおもちゃのフロッキードールなら見たことはあるが、これはCMでもお目にかかったことはない。きっと特注品だな。
「あら〜。アントレヌールくんが気になりまして?」
なんてことを考えていると、いつの間にか部屋に戻ってきたブライトが、背後から覗き込んでいた。
「ごめん勝手に見て。すごい細かいなぁって」
「こちらわたくしの趣味のドールでして。男の子がアントレヌールくん、女の子がエテュディアントちゃんですわ」
3: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:02:01
うさぎのフロッキードル二人は、暖炉前のソファで手を繋ぎながらくつろいでる。
「夫婦なの?」
「いえ、まだなのですが……」
「へえ。でも仲良さそうだよ」
「ええそれはもう〜。でも、鈍感なアントレヌールくんはよく女の子を悲しませてるのですわ」
やはり自分で作ったドールとなると入れ込むのだろうか、思ったよりも複雑な設定が用意されていた。それにしてもアントレヌール君、かわいい顔して罪作りな男だ。
「夫婦なの?」
「いえ、まだなのですが……」
「へえ。でも仲良さそうだよ」
「ええそれはもう〜。でも、鈍感なアントレヌールくんはよく女の子を悲しませてるのですわ」
やはり自分で作ったドールとなると入れ込むのだろうか、思ったよりも複雑な設定が用意されていた。それにしてもアントレヌール君、かわいい顔して罪作りな男だ。
4: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:02:11
夏
日本ダービーを見事勝ち抜いた後の面談は、とても盛り上がった。やはり僕以上に、ご両親は大喜びである。一族の希望にならんとするブライトも誇らしげだ。
この日は学園のことだけでなく、僕との関係のこともよく聞かれた。ブライトの走りには一切関係ないことではあるが、嘘を付く必要もないので正直に話す。
面談が終わり、またもやブライトの部屋で寛がさせてもらう。ドールハウスはまた改装され、夏模様に。アントレヌール君はエテュディアントちゃんに抱き上げられていた。
「トレーナーさま〜」
ブライトが僕の手を握って甘えてくる。僕もドールハウスから視線をブライトに戻し、向き合う。
日本ダービーを見事勝ち抜いた後の面談は、とても盛り上がった。やはり僕以上に、ご両親は大喜びである。一族の希望にならんとするブライトも誇らしげだ。
この日は学園のことだけでなく、僕との関係のこともよく聞かれた。ブライトの走りには一切関係ないことではあるが、嘘を付く必要もないので正直に話す。
面談が終わり、またもやブライトの部屋で寛がさせてもらう。ドールハウスはまた改装され、夏模様に。アントレヌール君はエテュディアントちゃんに抱き上げられていた。
「トレーナーさま〜」
ブライトが僕の手を握って甘えてくる。僕もドールハウスから視線をブライトに戻し、向き合う。
5: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:02:24
「わたくし、欲しいものがありますの〜」
なんだろう、彼女のようなお嬢様でも簡単に手に入らないものだろうか。もしや、三冠ウマ娘の称号だろうか。
「ブライト、それってもしかして」
「ええ……トレーナーさまのご協力なしには手に入らないものなのですわ」
僕の手を両手で握りって祈るブライト。彼女は今、夢に燃えている。ならば僕もそれに応えるべきである。
「わかってる、絶対に君に与えてみせるよ。そのためなら僕は何でも協力する。すべてを捧げるよ」
「まあ〜……嬉しいですわ〜」
険しい顔つきから一転、いつもの和やかな顔に戻るブライト。僕もにっこりと笑みを返す。
なんだろう、彼女のようなお嬢様でも簡単に手に入らないものだろうか。もしや、三冠ウマ娘の称号だろうか。
「ブライト、それってもしかして」
「ええ……トレーナーさまのご協力なしには手に入らないものなのですわ」
僕の手を両手で握りって祈るブライト。彼女は今、夢に燃えている。ならば僕もそれに応えるべきである。
「わかってる、絶対に君に与えてみせるよ。そのためなら僕は何でも協力する。すべてを捧げるよ」
「まあ〜……嬉しいですわ〜」
険しい顔つきから一転、いつもの和やかな顔に戻るブライト。僕もにっこりと笑みを返す。
6: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:02:37
「ところで、アントレヌール君は何をしてるの?」
赤子のように抱かれるアントレヌール君。何故あのような飾り方をしているのかをブライトに訪ねた。
「アントレヌールくんは、悪いことをしましたの。約束を破ったので、その分ああなっていますの」
なにやら昼ドラのような設定の遊び方をしているようであった。
アントレヌール君、安請け合いして女の子を悲しませるものじゃないぞ。
赤子のように抱かれるアントレヌール君。何故あのような飾り方をしているのかをブライトに訪ねた。
「アントレヌールくんは、悪いことをしましたの。約束を破ったので、その分ああなっていますの」
なにやら昼ドラのような設定の遊び方をしているようであった。
アントレヌール君、安請け合いして女の子を悲しませるものじゃないぞ。
7: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:02:50
秋
三冠ウマ娘となったブライトは、今やご両親だけでなく、一族や関係者にも期待の眼差しを向けられるホープだ。
やがて担当トレーナーとしてメジロ邸に出入りする僕は、否が応でも注目を浴びるようになった。
まるでブライトに相応しいトレーナーかどうかと値踏みするような視線に、彼女に恥をかかせまいと僕も意を新たにしていく。
という話をお父様にすると、とても喜んでくれた。隣りにいるブライトも顔を赤くして「よろしくお願いします」と小さく口にした。
三冠ウマ娘となったブライトは、今やご両親だけでなく、一族や関係者にも期待の眼差しを向けられるホープだ。
やがて担当トレーナーとしてメジロ邸に出入りする僕は、否が応でも注目を浴びるようになった。
まるでブライトに相応しいトレーナーかどうかと値踏みするような視線に、彼女に恥をかかせまいと僕も意を新たにしていく。
という話をお父様にすると、とても喜んでくれた。隣りにいるブライトも顔を赤くして「よろしくお願いします」と小さく口にした。
8: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:03:01
「トレーナーさま、わたくし、欲しいものがありますの〜」
なんだろう、彼女のようなお嬢様でも簡単に手に入らないものだろうか。もしや、三冠ウマ娘の称号ではなかったのだろうか。
「ブライト、それってもしかして」
「ええ……トレーナーさまのご協力なしには手に入らないものなのですわ」
僕の手を握り肩に頭を預けるブライト。彼女は今、次なる挑戦に向かって走り出している。ならば僕もそれに応えるべきである。
「わかってる、絶対一緒になろう。そのためなら僕は何でもしてあげよう。君を最高に輝かせて見せる」
「まあ〜……嬉しいですわ〜」
なんだろう、彼女のようなお嬢様でも簡単に手に入らないものだろうか。もしや、三冠ウマ娘の称号ではなかったのだろうか。
「ブライト、それってもしかして」
「ええ……トレーナーさまのご協力なしには手に入らないものなのですわ」
僕の手を握り肩に頭を預けるブライト。彼女は今、次なる挑戦に向かって走り出している。ならば僕もそれに応えるべきである。
「わかってる、絶対一緒になろう。そのためなら僕は何でもしてあげよう。君を最高に輝かせて見せる」
「まあ〜……嬉しいですわ〜」
9: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:03:12
ブライトは、三冠ウマ娘に留まらない。有馬記念を制覇し、新生メジロの輝きになろうとしているのだ。僕はそれを、是非とも叶えてやりたかった。
ドールハウスの中では、タキシードに着替えたアントレヌール君がエテュディアントちゃんと大きな鐘の下で立っていた。
どうやらあちらも正念場らしい。僕は3ヶ月に1度会えるこのうさぎの男の子に、奇妙な友情にも似た親近感を覚えていた。
僕はブライトに有馬を勝たせて夢を叶えさせる。だから君もエテュディアントちゃんを幸せにしてあげるんだぞ、とドール相手に勝手な誓いを立てるのであった。
ドールハウスの中では、タキシードに着替えたアントレヌール君がエテュディアントちゃんと大きな鐘の下で立っていた。
どうやらあちらも正念場らしい。僕は3ヶ月に1度会えるこのうさぎの男の子に、奇妙な友情にも似た親近感を覚えていた。
僕はブライトに有馬を勝たせて夢を叶えさせる。だから君もエテュディアントちゃんを幸せにしてあげるんだぞ、とドール相手に勝手な誓いを立てるのであった。
10: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:03:22
冬
メジロ邸で行われたブライトの有馬祝勝記念パーティーでは、僕はブライトのお父様たちと別室で飲んでいた。
感極まったのか酔いが回ったのか、お父様は何度も僕の手を握り「君になら任せられる」「末永くよろしくお願いします」と頭を下げ、その度に僕の方こそ恐縮してどうしたものやらと頭を下げた。
話が盛り上がりすぎてついつい遅くなってしまい、今夜はこちらに泊めて頂くこととなった僕は、使用人さんに連れられ寝室に案内された。
案内された部屋の照明をつけると、大きなベッドが用意された落ち着いた雰囲気の客間であった。ベッドの脇にある机には常夜灯が温かく灯り、窓からは月明かりが差し込んでいる。
そしてテーブルの上には、見慣れたドールハウスが。
メジロ邸で行われたブライトの有馬祝勝記念パーティーでは、僕はブライトのお父様たちと別室で飲んでいた。
感極まったのか酔いが回ったのか、お父様は何度も僕の手を握り「君になら任せられる」「末永くよろしくお願いします」と頭を下げ、その度に僕の方こそ恐縮してどうしたものやらと頭を下げた。
話が盛り上がりすぎてついつい遅くなってしまい、今夜はこちらに泊めて頂くこととなった僕は、使用人さんに連れられ寝室に案内された。
案内された部屋の照明をつけると、大きなベッドが用意された落ち着いた雰囲気の客間であった。ベッドの脇にある机には常夜灯が温かく灯り、窓からは月明かりが差し込んでいる。
そしてテーブルの上には、見慣れたドールハウスが。
11: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:03:32
ドールハウスではベッドの上にアントレヌール君が仰向けに寝ており、その上にエテュディアントちゃんが座り込んでいる。
「また悪いことしたのかい?」
僕も浮かれすぎたのか、つい返事もないドールに話しかけてしまった。いけないな、ブライトが勝ったことに舞い上がっている。
ノックがしたのは、ジャケットをハンガーにかけ、ネクタイを外してシャツのボタンを開けていた時だ。こんな遅くに誰だろうかと思いながらも、何も怪しむこともなく、どうぞと声をかけた。
入ってきたのはブライトだった。緑のレースのネグリジェに身を包み、頬を染めて部屋に入ってくる。
レースが透けてくっきりと彼女の身体つきを映していることに気がつくと、そちらを見ないように視線を上げ、彼女の目を見た。こんな格好で出歩いたりは普通しないものだろうが、やはり上流家庭の子は違うのだろうか。
「また悪いことしたのかい?」
僕も浮かれすぎたのか、つい返事もないドールに話しかけてしまった。いけないな、ブライトが勝ったことに舞い上がっている。
ノックがしたのは、ジャケットをハンガーにかけ、ネクタイを外してシャツのボタンを開けていた時だ。こんな遅くに誰だろうかと思いながらも、何も怪しむこともなく、どうぞと声をかけた。
入ってきたのはブライトだった。緑のレースのネグリジェに身を包み、頬を染めて部屋に入ってくる。
レースが透けてくっきりと彼女の身体つきを映していることに気がつくと、そちらを見ないように視線を上げ、彼女の目を見た。こんな格好で出歩いたりは普通しないものだろうが、やはり上流家庭の子は違うのだろうか。
12: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:03:42
「トレーナーさま〜」
後手に部屋の鍵をかけると部屋の照明を消し、ブライトはおずおずとこちらに歩み寄ってくる。
「わたくし、ずっとずぅっと、この日をお待ちしておりましたの〜」
一言話す度にブライトが一歩詰めてくる。僕はどうすればいいのかわからず、立ち止まって彼女の先の言葉を待つばかりだ。
「メジロ家の光になって、ようやく受け取れる準備が整いましたの」
ついには僕の目と鼻の先まで近づいた彼女は、僕の胸にぴったりと寄り添って甘えてくる。バランスを崩さないようその場に踏みとどまりながら、彼女を抱き留めようとするもネグリジェのことを思い出し、両手が宙を泳ぐ。
後手に部屋の鍵をかけると部屋の照明を消し、ブライトはおずおずとこちらに歩み寄ってくる。
「わたくし、ずっとずぅっと、この日をお待ちしておりましたの〜」
一言話す度にブライトが一歩詰めてくる。僕はどうすればいいのかわからず、立ち止まって彼女の先の言葉を待つばかりだ。
「メジロ家の光になって、ようやく受け取れる準備が整いましたの」
ついには僕の目と鼻の先まで近づいた彼女は、僕の胸にぴったりと寄り添って甘えてくる。バランスを崩さないようその場に踏みとどまりながら、彼女を抱き留めようとするもネグリジェのことを思い出し、両手が宙を泳ぐ。
13: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:03:52
「トレーナーさまは、わたくしのことをどう…思ってらっしゃるのかしら」
胸にぴったりと頬と耳を当てて擦り付け甘える彼女。きっと跳ね上がる心音まで聞き取られていることだろう。
質問の意図がわからない時は、変に見栄を張らず素直に答えることが僕の処世術だ。
「どうって、そりゃ誇りだよ。君は新生メジロの希望だ、光だ」
胸板に撓垂れ掛かる彼女の尻尾が、ぴくんと跳ねた。
「僕は君の夢をサポート出来たことを嬉しく思っている。僕の人生をかけて、君を支えたいと思っているよ」
そこまで言ったところで、ブライトがこちらに体重をかけてきた。ぐいぐいと押し込むように両手で僕を押している。
胸にぴったりと頬と耳を当てて擦り付け甘える彼女。きっと跳ね上がる心音まで聞き取られていることだろう。
質問の意図がわからない時は、変に見栄を張らず素直に答えることが僕の処世術だ。
「どうって、そりゃ誇りだよ。君は新生メジロの希望だ、光だ」
胸板に撓垂れ掛かる彼女の尻尾が、ぴくんと跳ねた。
「僕は君の夢をサポート出来たことを嬉しく思っている。僕の人生をかけて、君を支えたいと思っているよ」
そこまで言ったところで、ブライトがこちらに体重をかけてきた。ぐいぐいと押し込むように両手で僕を押している。
14: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:04:02
ぐいぐい力を込めてこちらに寄り掛かる彼女にじりじりと後退させられ、ついにはベッドに足をかけて後ろにバランスを崩す。
咄嗟に怪我をさせないよう彼女の肩を掴んでしまう。そのせいで彼女を引き倒す形になり、僕はベッドの上でブライトを腰の上に乗せ仰向けに倒れ込んだ。
「では、頑張ったわたくしに、約束のものを…くださいまし〜」
「約束……?何を…?」
「いけませんわー。忘れたフリなんかして。お父様も応援して下さったのでしょう?」
そう、約束。忘れたわけではない。僕はブライトが欲しいものを手にするため、何を捧げてでも協力すると誓ったのだ。
「忘れたわけじゃなくて…欲しいものって有馬の一着じゃなく?」
ブライトはきょとんとした表情を見せ、やがてにっこりと破顔した。そして人差し指を僕の鼻の頭に乗せる。
咄嗟に怪我をさせないよう彼女の肩を掴んでしまう。そのせいで彼女を引き倒す形になり、僕はベッドの上でブライトを腰の上に乗せ仰向けに倒れ込んだ。
「では、頑張ったわたくしに、約束のものを…くださいまし〜」
「約束……?何を…?」
「いけませんわー。忘れたフリなんかして。お父様も応援して下さったのでしょう?」
そう、約束。忘れたわけではない。僕はブライトが欲しいものを手にするため、何を捧げてでも協力すると誓ったのだ。
「忘れたわけじゃなくて…欲しいものって有馬の一着じゃなく?」
ブライトはきょとんとした表情を見せ、やがてにっこりと破顔した。そして人差し指を僕の鼻の頭に乗せる。
15: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:04:12
「一着は、トレーナーさまと勝ち取りたいもの。トレーナーさまにおねだりするものではございませんわ」
そう言うと、軽く僕の頬に口をつけるブライト。ここに来てようやく、察しの悪い僕にも何が起きようとしているのか理解することが出来たのだ。
気がつけば彼女に伸し掛かられる格好になっており、両手は恋人繋ぎでベッドに押し付けられている。腰の上に跨る彼女は樹齢100年の大木のようにビクともしない。
彼女の体重は把握している。決して彼女が重いわけではない。むしろ同年代よりも軽いくらいだ。彼女がビクともしないのは、その体幹、そして意思の強さ。
こうなると僕の出来ることと言えば、空いている口で説得するしかないのだが、困ったことにここまで来る道を自分で塞いでしまっていた。
そう言うと、軽く僕の頬に口をつけるブライト。ここに来てようやく、察しの悪い僕にも何が起きようとしているのか理解することが出来たのだ。
気がつけば彼女に伸し掛かられる格好になっており、両手は恋人繋ぎでベッドに押し付けられている。腰の上に跨る彼女は樹齢100年の大木のようにビクともしない。
彼女の体重は把握している。決して彼女が重いわけではない。むしろ同年代よりも軽いくらいだ。彼女がビクともしないのは、その体幹、そして意思の強さ。
こうなると僕の出来ることと言えば、空いている口で説得するしかないのだが、困ったことにここまで来る道を自分で塞いでしまっていた。
16: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:04:24
「ブライト…聞いてほしいんだけど…」
「まあ、今日はどのような言い訳をするのでしょうか、悪い子ですわ〜」
からかうように笑顔を見せるブライト。常夜灯に照らされる彼女の笑みは美しかった。一方僕はこの場を切り抜ける方法をぐるぐると思案している。
思えばブライトは昔から意思を表明していた。察しの悪い僕が安請け合いを繰り返して彼女の心を弄んだのだ。そしてお父様は僕を見定めていた。さっきのことだって、その話をしてくれていたのだ。
そもそも嫌なら彼女を突っぱねれば良いはずなのに、何故こんなにも苦しいのか。何故こんなにも必死になって彼女を傷つけない方法を探しているのか、そんなものはわかっている。
「ごめん、僕嫌じゃないっていうか、君が好きだからさ、良い言葉が思い浮かばなかった」
「まあ、今日はどのような言い訳をするのでしょうか、悪い子ですわ〜」
からかうように笑顔を見せるブライト。常夜灯に照らされる彼女の笑みは美しかった。一方僕はこの場を切り抜ける方法をぐるぐると思案している。
思えばブライトは昔から意思を表明していた。察しの悪い僕が安請け合いを繰り返して彼女の心を弄んだのだ。そしてお父様は僕を見定めていた。さっきのことだって、その話をしてくれていたのだ。
そもそも嫌なら彼女を突っぱねれば良いはずなのに、何故こんなにも苦しいのか。何故こんなにも必死になって彼女を傷つけない方法を探しているのか、そんなものはわかっている。
「ごめん、僕嫌じゃないっていうか、君が好きだからさ、良い言葉が思い浮かばなかった」
17: オワリ 2024/05/22(水)21:04:36
はっとしたように目を細めると、ブライトはそのまま顔を下ろした。長い彼女の髪が、僕の視界を遮る。
唇が重なる。ぎゅうっと両の手が握りしめられる。もぞもぞと密着した体が揺れる。
「ぷはっ」
酸欠になりかけたブライトが顔を上げると、月光が彼女のネグリジェをキラキラとライトアップする。その美しさに、僕は息を呑んだ。
ちらりとテーブルのドールハウスを見る。相変わらずアントレヌール君がエテュディアントちゃんに押し倒されているままだ。
でもようやく理解した。アントレヌール君は怒られているのではなく、彼女を祝福していたのだ。横を向く僕の首を、柔らかな手がブライトの瞳を見るように戻した。
唇が重なる。ぎゅうっと両の手が握りしめられる。もぞもぞと密着した体が揺れる。
「ぷはっ」
酸欠になりかけたブライトが顔を上げると、月光が彼女のネグリジェをキラキラとライトアップする。その美しさに、僕は息を呑んだ。
ちらりとテーブルのドールハウスを見る。相変わらずアントレヌール君がエテュディアントちゃんに押し倒されているままだ。
でもようやく理解した。アントレヌール君は怒られているのではなく、彼女を祝福していたのだ。横を向く僕の首を、柔らかな手がブライトの瞳を見るように戻した。
18: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:06:08
鴨がネギを背負ってきたどころか出汁まで丁寧にアク取りまでしてきてるやつ
27: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:11:47
>>6
>アントレヌール君、安請け合いして女の子を悲しませるものじゃないぞ。
お前だよ
>アントレヌール君、安請け合いして女の子を悲しませるものじゃないぞ。
お前だよ
21: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:08:33
誤解だけど結果的に正解だったやつ
おめでた
おめでた
22: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:08:43
ブライトは着実に詰めてくるな…
23: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:10:52
ご両親気が早すぎじゃない?
ブライト任せられる奴なんてそうそういないからしょうがないけど
ブライト任せられる奴なんてそうそういないからしょうがないけど
25: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:11:10
>>23
一年ヒアリングしてました…
一年ヒアリングしてました…
24: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:10:57
知ってた!!!!!!
26: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:11:31
アントレヌールくんはなんなの…
28: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:12:18
まあでもブライトだとこう時間はかかるにしても連れてきた時点で正解みたいな感じあるし…
33: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:13:44
まてまだ春天で盾を手にして
34: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:14:12
お父様からしてもどこぞの知らんやつよりは知ってる身内判定じゃないか?
35: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:14:31
こんな優良でブライトを受け入れてくれる人他にいねえ
任せた!
任せた!
36: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:14:45
何がダメってトレーナーも嫌じゃないってかむしろ好きなのがもうどうしようもないよね
38: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:15:13
というかお父様からしたら結婚の話ちゃんとしてる認識なのでは?
39: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:16:16
>>37
エテュディアントは?
エテュディアントは?
37: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:15:10
>トレーナー(とれーなー)のフランス語
アントレヌール
entraîneur
なるほど…
アントレヌール
entraîneur
なるほど…
40: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:16:58
>学生・生徒(がくせい・せいと)のフランス語
エテュディアン
étudiant
エテュディアン
étudiant
41: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:17:13
これもう一度頭から読んだら…
ご両親どころかじろじろ見てる親族すらそういうものだとして見てたんじゃ…
ご両親どころかじろじろ見てる親族すらそういうものだとして見てたんじゃ…
43: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:17:43
>>学生・生徒(がくせい・せいと)のフランス語
>エテュディアン
>étudiant
トをつけることで女性形になるんですね
>エテュディアン
>étudiant
トをつけることで女性形になるんですね
46: オワリ 2024/05/22(水)21:18:46
オワリ
47: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:18:55
ブライトは一度決めたら曲げないから…
49: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:19:34
ここで断ったら人間じゃねえよ
53: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:20:38
オワリじゃねえ
ここから始まるんだ
ここから始まるんだ
55: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:21:14
>>53
この人のいっつもこんなのばっか!
この人のいっつもこんなのばっか!
59: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:23:10
トレーナーとしての関係よりも長い関係が始まるわけだからな…
60: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:23:11
そのうちドールハウスに新しいドールが増えるのはまだ早いか
63: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:24:40
ブライトはアントレヌール君を使って抗議していたの?
65: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:25:46
>>63
予告とか意気込みじゃない?
予告とか意気込みじゃない?
67: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:26:35
一緒になろうはおかしいだろうがよ…
68: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:27:14
>>67
3冠ウマ娘に甘んじず有馬一着目指してるんだな!わかった一緒になろう!
3冠ウマ娘に甘んじず有馬一着目指してるんだな!わかった一緒になろう!
71: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:28:03
>>68
言葉にして伝えろ
言葉にして伝えろ
72: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:28:53
>>71
そのためなら僕はなんでもしてあげよう!君を最高に輝かせてみせる!
そのためなら僕はなんでもしてあげよう!君を最高に輝かせてみせる!
73: 名無しさん(仮) 2024/05/22(水)21:29:23
レースに真摯だしメジロの希望にもなるしトレーナーにもトレーナーがほしいとおねだりする
欲張りブライト
欲張りブライト