現代のトゥインクルシリーズの礎を築いた先人たち。生徒たちにとっては大先輩でありお姉さんである
その偉大なお姉さんたちと時代を超えて共演する祭典、それがDream Festだ
「こうやってのんびりするのも久々だな」
「ここのところDream Festの準備で大忙しでしたからね。トレーナーさん、お疲れさまです」
「フラワーこそ。せっかくのお休みに付き合わせて悪いね」
「とんでもないです!誘ってくれてありがとうございます」
お祭りレースの余韻もひと段落ついた頃、久々の休暇に俺たちは学園外を散策していた
隣で花のような笑顔を綻ばせている少女の名はニシノフラワー。立派なお姉さんに憧れる俺の担当ウマ娘だ
何か特別なことをするでもなく二人で穏やかな時間を過ごしていると、遠くに知った顔ぶれが見えた
「おや、大先輩方だ。一緒に遊びに来てるのかな?」
「お三方はプライベートでも仲が良いと聞いていましたが、本当なんですね……」
「せっかくだし挨拶がてらフラワーを紹介してこよう。すみませーん!」
「えっ?あっ、ちょっとトレーナーさん!」
彼女たちこそ現代のトゥインクルシリーズの礎となった人物。Dream Festの立役者であるレジェンドたちだ
「こんにちは、お三方。今日もご機嫌ですね」
「あら、トレーナーさん!もしかして私達のこと探してました?」
「よく見たまえハイセイコー君。今日はパートナーをお連れのようだ」
「ほほほ……なんと愛らしいこと。ご紹介いただいてもよろしいかしら?」
その身分にそぐわず気さくな方々だが、空いた酒瓶でボーリングをした形跡のある今日は特に上機嫌である
俺は大先輩を前に緊張で固まってるフラワーを肩を叩き、改めて自己紹介を促した
「に、ニシノフラワーです。よろしくお願いします!」
「うん、いいご挨拶!じゃあ改めまして、ハイセイコーです。よろしくね」
「きゃあっ!」(パリーン)
「どうしたフラワー!?」
ハイセイコーが挨拶をした瞬間、フラワーのお姉さん力測定器でもある耳飾りが弾け飛んだ
さもありなん、ハイセイコーのお姉さん力はレジェンドクラス。測定限界を超え自壊するのは火を見るより明らかである
「よろ、し……ぐぅっ……!!」
「大丈夫かフラワー!?」
スピードシンボリが挨拶をした途端、フラワーは全身に重石を乗せられたかのように跪いた
計り知れぬお姉さん力の圧に耐えかねたフラワーは身動き一つとれず、かろうじて呼吸を保っている状態だ
「Hello,ニシノフラワー。セントライトと申します」
「……?トレーナーさん、そこに……誰か居るんですか……?」
「しっかりしろ、フラワー!!」
セントライトの挨拶はもはやフラワーに聞こえていない……いや、認識できていなかった
次元の違う齢圧に触れたフラワーは防衛本能からその感覚を遮断。気付かないことで生き永らえることを選んでいた
このままではいずれフラワーの命に関わる。彼女のトレーナーとして取れる手段は一つしかない
「ぐっ……ダメだ!お腹が減ったー!」
「と……トレーナー、さん……?」
「もう耐えられない!お腹と背中がくっつく!ごはん……ごはんが食べたいいいい!!」
鉛のように重たい体に喝を入れ、きっと早起きして作ってきたであろうお弁当を俺の口に運んでゆく
なんとか腹の虫が納まった頃にはフラワーもお姉さん力に満ち溢れ、普段通り行動出来るようになっていた
「ふぅ……美味しかったよフラワー、ありがとう」
「ふふっ……すごいですね、私よりしっかりしてるかも?」
「ああ、彩りだけでなく栄養価も人間用によく考えられている。大したものだ」
「Indeed. わたくしも一段いただいてもよろしいかしら……」
「あっ、ありがとうございま……セントライトさん!いらっしゃったんですか!?」
その後、俺たちはセントライトさんたちとお弁当をシェアしつつピクニックを続行
フラワーはレジェンドたちとの交流を経てまた少しお姉さん力に磨きをかけるのであった
なお俺はトレーナー寮に帰宅後、「衆目の面前でオギャるのを躊躇うようではトレーナーとして未熟」と先輩トレーナーからお叱りを受けたのは秘密である
トレーナーってやばい奴しかいないのか?