「…………は?」
風が冷たくなり冬の到来を告げる頃、あたしは彼からまったく意識もしていなかった提案を受けていた。
「この前のマイルCSで芝も走れるって実力は示せたわけだし、何よりあの末脚でレコード勝ちだからね。デジタルが欲しいってチームはいっぱいあるんじゃないかな」
そう言うと彼はチーム一覧が載ったトレセン学園の広報誌を取り出す。
「専属よりもチームに所属したほうが併走とかやりやすいし、何より他のウマ娘の観察もしやすいし、デジタルにとっては望ましいと思うんだけど。君の走りならどのチームでもやってけるだろうし」
「ちょちょちょ、ちょっとまってください!どうしたんですか急に!」
「いや、この前の結果とかを見たら上位チームへの移籍も現実的になったしさ、この先を見据えるんだったら考えたほうが………」
「えぇっと………その、やっぱりうるさすぎたでしょうか………?レース前とか、練習中とか他のウマ娘ちゃんを見て興奮してばっかりだったから……」
「……ん?あぁ、チームに行くなら多少控えたほうがいいかもしれないけど…」
「………お休みの日の、聖地巡礼とかも、ご迷惑だったんでしょうか………?」
「いや、そんなことはないけど…」
「何か不快にさせちゃった所があったなら言ってください!オタクっぽい仕草とかもなるべく控えます!言ってくれればなんでも直しますから!」
「だからぁ………見捨てないでぇ………」
「えっ………そんな泣くほど………ごめんごめん、ちょっとタイミングが悪かったか」
「ひぐっ………トレーナーさんは……やっぱり、あたしを移籍させたいんですか………?」
「いや、だって君ほどの結果を出してる子なら新人の僕の専属なんかよりチームに行った方が……」
「そんな建前はいいんです!あたしが聞きたいのは本音の方で…」
「建前もなにも……これが僕の本音だよ」
そう言う彼の顔は、何か隠し事をしているようには見えなかった。そもそもこの人は、そんな本心を隠して接してくるタイプではない。となれば、本気であたしのことを思って移籍を勧めているのか。
「……えぐっ……はぁぁぁぁぁぁ………ッスゥゥゥ………はぁ…」
「え、なんか変なことを言ったかな?」
「あの、トレーナーさん……1つ言っておきたいんですけど、あたしはトレーナーさんと一緒じゃなきゃここまで来れませんでした」
「でも、これからの君のことを考えると…」
「最後まで聞いてください!レースだけじゃなくて、お出かけのときもあたしの趣味に付き合ってくれて……あたしの色んな所を、引くこともなく受け入れてくれて……あまつさえ理解しようと勉強までしてくれて」
「トレーナーとして当然のことだよ」
「あなたにとってはそうかもしれませんが!あたしにとってはそれが嬉しくて……一緒に過ごしてて楽しくて……幸せで……だからこの先も一緒に居たいんです!」
トレーナーさんは豆鉄砲を食らったような顔。やっぱり、分かってなかったんだな。どうしていつもは色んなことに気配りできるのに、自分のことにはこんなにも気が回らないんだろう。
「あぁ……その、なんというか……そこまで信用してくれてるとは思わなかったよ、軽率な提案をしてすまなかった」
……なんか我ながら、めちゃくちゃめんどくさいというか、重いことを言ってるなーとは思う。だけど急にあたしに別れの選択肢を見せる彼だって悪いのだ。私だってまさか彼の存在がこんなにも大きく、深く私の中に入り込んでるなんて気づかなかった。
「………ふぅー……さて、あたしは無事落ち着きを取り戻すことができたわけですが……こんなあたしとはいえ人を泣かしておいてハイ解決、とはなりませんよね?」
「あ、うんそれはもちろん……なにかできることがあればなんでも言ってくれ」
さて、追い詰められた厄介オタクは無敵というか、時にびっくりするほど周りに迷惑をかけてしまうこともありますが。あたしは今まさにさっきのやり取りを経て厄介で無敵なトレーナーさんオタクになろうとしていた。両手を広げて彼を見つめる。
「あ、うん。別にいいけど一体何を……」
きょとんとした顔でこちらを伺う彼に構わずソファに座る彼の膝の上に飛び乗り、向かい合う形で思いきり抱きしめる。身長差のためあたしは彼の胸元に顔を埋める形になる。
「ちょ、デジタル、力強いって……」
「悪かったですね、もうちょっと出るとこ出てれば柔らかかったかもしれませんけど」
「そういう話じゃなくって……」
ともかく、今日1日は離したくないな。そう思った。それに、そこまで拒否されないってことは、この先のことも………
勘違いオタクの良くないところ、出ちゃってるかな。それでも、今日気づいてしまったこの激重感情をそのままにしておくことは、もはやはデジたんには無理な話でして。
「トレーナーさん、その、同志というのは時に血の繋がり以上の関係になり得るわけで………それでも、あたしの同志で居てくれますか?」
「うん。これからも君を支えさせてもらうよ」
絶対に離しませんからね、トレーナーさん。
「痛い痛い痛い!もうちょっと力の加減を……」
「今日ばっかりはあたしの胸の痛みをわかってくれるまで離しませんよ!」
ハロウィンイベント、良かった。
>ともかく、今日1日は離したくないな。そう思った。それに、そこまで拒否されないってことは、この先のことも………
ここ掛かってるけどかわいくていい…
>「うん。これからも君を支えさせてもらうよ」
はい、クソボケ確定
の絵が思い浮かぶ光景
最低だなシンボリルドルフ
>トレセンにはクソボケは治るまで殴れという三冠ウマ娘の言葉がある
最低だなメジロラモーヌ
>>トレセンにはクソボケは治るまで殴れという三冠ウマ娘の言葉がある
>最低だなデアリングタクト
我中国語理解!
愛バの心を組めない奴は蹴られて死んでも仕方ない…的な?
婚姻は何だよ?!
こんなクソボケと結婚できるのはアタシだけですね、の意
但しクソボケ矯正の為であればその限りではない
後でこっそり見に来てデジたんに喜ばれたからって見つからないように見に行くトレーナーはいなかったんだね
移籍した後でも移籍前のトレーナーと親しくするのは移籍先のトレーナーに悪いからな…
引退を決意した