書店にて。グラスワンダーはとある一冊の本に目を奪われていた。
“奥手な殿方も一発差し切り!恋のレースの極意"
著者はキングヘイローの母親。話題書のコーナーに堂々と鎮座するそれを、グラスは思わず手に取った。キングヘイローの母親と言えば現役時代にトレーナーとの恋を成就させたどころか孕み、そのままレースに出走したという伝説を持つウマ娘。そんな過激な彼女が記した本。恐らく効果は絶大だろう。だが。
「大和撫子たる者このような本を頼るわけにはいきませんね…」
信条に則り、元の場所に戻そうとする。しかし、どうしても“奥手な殿方も一発差し切り!"の一文から目が離せない。何故なら彼女のトレーナーも奥手であるから。トレーナーとしての立場を差し引いたとしても超奥手な彼。そんなガツガツしない所をグラスはまた好ましく思っているのだが、大和撫子と奥手男子ではいつまで経っても恋が始まらない。どちらかが変わる必要があるのでは?
悩みに悩んだ末にグラスはこの極意書をカゴに入れた。
コンドルも眠る丑三つ時。グラスはこっそり起き出して、購入した件の本を開いた。彼奴が起きているところでこんな本を読んでいたら絶対からかわれる。そう思って寝静まるのを待った。ドキドキしながら本を開く。
──はじめに。この本を手に取ったということは貴方は恋に悩んでいることでしょう。この本が少しでも貴方の恋路の助けになるように願っています。
何だ、意外と真面目な書き出しではないか。少し安心したような、ガッカリしたような、半々の気持ちでページを捲る。
──さて、恋する乙女の諸君。奥手な殿方をオトす手っ取り早方法、それは逆ぴょいです。
と思ってたらいきなりアクセル踏み込んで来た。ビックリした。
──いきなり逆ぴょいはちょっと…と思う方もいることでしょう。私も娘に『恋ってそう単純なものじゃないでしょう!』と怒られました。私もそう思います(笑)
──早々にコトに及ぶことに難を示す人もいるかもしれません。そこで、この本ではあくまで逆ぴょいは最終手段として、意中の殿方に意識してもらい、向こうから手を出してもらう順ぴょいを目標としてレクチャーしていこうと思います。
結局手段としては残るのか。まあいい。大和撫子たる自分がその最終手段を頼ることは無い。
──では、いよいよお待ちかねの本題です。相手から求めてくるような素敵なウマ娘になってレッツエンジョイうまぴょいライフ。
最後のは聞いてないが意識してもらえる格好をするというのは大事だ。
はて、トレーナーさんの好みとは……彼もまた男性である故、一般レベルでスケベ人間であることはグラスも理解していた。思い出すのは夏合宿、水着を着ていた時のこと。彼の視線は水を吸った水着がぴっちりと張り付いた尻に集まっていた。散々デカケツデースとからかわれてきたこのお尻だが、彼の目を奪ってくれるなら悪い気はしない。しかし、私服でのデートもといさんぽをすることはあっても基本は制服で会うのだ。格好で工夫するのも中々難しい。ここはひとまず保留にしよう。グラスはページを捲った。
自分とトレーナーさんが両想いであるのは当然として、肉体的接触と来たか。手を繋ぐまではやったことはある。しかしそれ以上のこととなると……
「中々恥ずかしいですね…」
──恥ずかしいという方は相手が好きな部位を押し付けてみると良いでしょう。相手が無条件に好きな部分を押し付けるのですから、普通の肉体接触より緊張は緩和されるはず。まあ私は恥ずかしいと思ったことないので普通に押し倒して抱き締めました。
聞いてはいないがなるほど。私の場合は先述のようにお尻か。……はて?お尻を押し付ける体勢とはどんなのだろうか?
グラスにとっては必勝の陣形に思えた。ここまでやれば奥手な彼も観念して私に思いの丈をぶつけてくるに違いない。しかし、念には念を。続きを読もうじゃないか。
──自分なりの接触方法は見つかりましたか?しかし、ここまでやっても靡かない奥手オブ奥手もいるもの。そんな時はこちらが折れることも大切です。耳元で、思いの丈を正直に伝えてみましょう。こちらの好きが伝われば、相手も正直になることでしょう。また、接触したまま行うとより効果的です。私は押し倒したまま『愛してます』やらその他諸々伝えました。
……いい感じではないか?完成した状況に思いを馳せる。
私とトレーナーさんしかいない静かなトレーナー室。夕陽の差し込むそこで、彼をソファに抑え付け跨る私。2人の顔は段々と近付き、やがて耳元でこう囁く。『愛してます』と。
「……って、これ逆ぴょい一歩手前のシチュエーションじゃないですか!!!」
グラスは叫んだ。筆者が逆ぴょいの体験談を織り交ぜてる時点で気付くべきだった。どうやらキングちゃんのお母様は是が非でも恋する乙女に逆ぴょいをさせたいらしい。何なんですかその妙な執念。
「はー、夜更かししてまで無駄な時間を使ってしまいました。逆ぴょいは大和撫子的にNGです。寝ましょう寝ましょう」
「……エル、何故起きているのですか?」
「逆ぴょいがどうたらとか聞こえてきたから……何読んでるんデース?工ッチなやつ!?工ッチなやつデース!?エルにも見せてください!」
「工ッチなやつではありません!工ッチなやつではありません!」
親友を窘めてなだめすかして小突いてどつき回してようやく大人しくなった頃、日の出と共に床についたグラスであったとさ。
グラスワンダーのスタミナが10上がった!
賢さが20上がった!
逆ぴょいへの興味が50上がった!
寝不足気味になってしまった……
し…死んでる…
>好みを見極めることが肝要です。ちなみに私は太ももを強調したスリットの深いチャイナ服を選びました。
お父様はお父様でなかなかいいヘキをしてらっしゃる…
こういうの逐一知る羽目になるんだろうなキング…
>親友を窘めてなだめすかして
うn
>小突いてどつき回してようやく大人しくなった頃
気絶させてますよね?
😭
泣けてきたわね
工ッチなやつ!これ工ッチなやつデース!
イチャイチャし過ぎても高まる
程良くイチャイチャクソボケしましょう
キングの安息の場がどんどん奪われていく…
実質キングの公開処刑では?
少し抜けてる隙のある部分を見せると逆ぴょいゲージが上がるシステム
おい下げるシステムねぇぞ