先日、グラスが読んでいた本。夜中、こっそり自分に内緒で読んでいた本!覗き込もうと身を乗り出したがキレたグラスに小突かれどつき回されたおかげで読むことが叶わなかったあの本!!それを邪魔されずに読むなら今しかない!!!
「ベッドの下に隠すなんてベタベタデスよー、グラス」
悪い顔をしながらベッドの下を漁る。状況証拠からして、あれは工ッチな本に違いなかった。一体どんな本をこっそりお楽しみしていたのか。暴いて後でからかってやるデース…!
「あった!」
奥の方に隠されていたそれを、エルは指に引っ掛けると一気に引きずり出した。果たしてそのタイトルとは。
“奥手な殿方も一発差し切り!恋のレースの極意"
「…ケ?」
思ってたのと違った本が出てきて面食らう。見た感じ恋愛指南書のようだが…
「って、これキングのママが書いたやつデース」
「合点がいったデース。あのグラスがこういうの読むなんてね」
大和撫子よろしく、奥ゆかしく慎ましくを好む彼女がこれを購入した理由、大方キングのママの実績に惹かれたのだろう。案外単純デスね。
「ふむ、奥手な殿方…エル達の参考にはならなさそうデース」
エルも自身のトレーナーを好いてはいるが、彼は奥手ではなかった。エルが愛してるといえば向こうも愛してると臆面もなく答えてくれるし、デートに誘えば喜んで付き合ってくれる。とてもオープンな人だった。
「でもまあ、せっかくの鬼の居ぬ間デース。読んで後でからかってやろっと」
悪戯心を疼かせて、本を開く。
──さて、恋する乙女の諸君。奥手な殿方をオトす手っ取り早方法、それは逆ぴょいです。
軽い気持ちで開いたらとんでもない豪速球をぶつけられた。いきなり逆ぴょい勧めてくるとは……
泊まり込みの遠征はウマ娘にとって絶好の逆ぴょいチャンス。邪魔をする警備や寮長はいないのだ。トレーナーの部屋に乗り込んでぴょいを完遂するというケースもよく聞く。グラスのトレーナーさんの貞操が危ない!
……まあ、いいか。どうせ両想いだ。そんなことより。
「逆ぴょいデスか…」
エル自身、逆ぴょいにはあまり興味が湧かなかった。望めば順ぴょいが出来るからというのもある。だが一番の理由は、彼女の性癖に合わないというのが大きい。彼女は激しくされるのが好きだった。しかし。
「でもそれって、アタシの話なんデスよね…」
彼は理解がある。自分の性癖に付き合ってくれる。だが、彼自身のフェチに付き合ったことが無い。たった今、気付いた。
以前、何かの番組でこんなデータを見たことがある。“ウマ娘と付き合う男性の90%は逆ぴょいフェチ(キング母調べ)"
九割もそうなら、自分のトレーナーもそこに含まれる可能性が高いのではないか?性癖のすれ違いにより、破局するカップルも多い。エルとトレーナーさんの将来のためにも、この本から逆ぴょいを学ぶべきではないか。
──早々にコトに及ぶことに難を示す人もいるかもしれません。そこで、この本ではあくまで逆ぴょいは最終手段として、意中の殿方に意識してもらい、向こうから手を出してもらう順ぴょいを目標としてレクチャーしていこうと思います。
いきなりハシゴ外された。ガッデム!人がやる気になった途端に!
いくらでも出来る順ぴょいの手段に興味は無い。どこかに逆ぴょいの手段は載ってないのか?パラパラとページを進めていく。やがて、グラスもまだ読んでないであろうページまで到達した時、その一説は現れた。
──警告!逆ぴょいを忌避する方に向けて。恥ずかしいのは分かります。しかし、すぐ行動に移さなければならない時もあるのです。
これだ!別に忌避はしてないし恥ずかしくもないが、この先に自分の探す答えがあると直感した。期待を込めてページを捲る。
ほんのちょっとのすれ違いから愛を失いそうな時、逆ぴょいは貴方と想い人を繋ぎ止めてくれることでしょう。
今から逆ぴょいを学ぼうという自分が言うのもアレだが、どうしてキングのママはこんなにも逆ぴょい信奉しているのだろうか。本人に聞こうにも面識が無い。代わりにキングに聞いてみようか。
──さて、逆ぴょいをレクチャーしていきますが、皆さんに絶対守ってもらいたいことがあります。それは、必ず相手をその気にさせるということ。私達が目指すのは逆ぴょいであって意中の殿方を無理矢理屈服させることではありません。嫌々ながらするぴょいは必ず関係に軋轢を産みます。嫌よ嫌よも好きのうち、無理矢理という体を持ちながらもその実相手も求めてくるような、愛のある逆ぴょいをしましょう。
どうやら逆ぴょいを信奉してるなりにこだわりがあるらしい。心まで無理矢理屈服させるようなのはダメ、襲われる過程で向こうも同意してくれるぴょい、それがキングのママの掲げる逆ぴょいの在り方らしい。
──何も難しく考える必要はありません。これまで学んだ基礎を守ればいいのです。相手の好む格好や肉体接触で緊張を和らげ、自身の思いの丈は素直に伝える。これさえ出来れば逆ぴょいも可能です。逆ぴょいとは云わば精神的順ぴょい、逆ぴょいと順ぴょいは表裏一体なのです。
だいぶ詭弁入ってない?
──そうは言っても私も未だに逆ぴょいに臨む時は緊張します。でも、あの人の好きな太ももを強調したスリットの深いチャイナ服や超ミニのアメスク風衣装に勇気を貰ってます(笑)
慣れなんて無い。いつでも新鮮な気持ちで臨めるのが逆ぴょいのイイトコですね。
そんなこと聞いてない……
まあコツと効果の程は分かったしいいか。トレーナーさんの好む格好、そんなものは分かりきっている。胸だ。彼は胸星人だ。それだけじゃない。ぴっちりとした身体のラインが出る衣装も好きだ。ここから導き出される答えは……
あれに身を包み、思い切りハグして押し倒してやろう。トレーナーさんが面食らってるところをすかさず耳元で愛の言葉を囁いてやるのだ。
「これでトレーナーさんは、瞬殺!秒殺!エル圧勝デース!」
思い立ったが吉日。こういうのは早い方がいい。
次の日。モンク衣装に身を包んだエルコンドルパサー。勢い良くトレーナー室の扉を開ける。
「うお、ビックリした!……エル?その格好は?」
「トレーナーさん、お覚悟を!」
一気に間合いを詰め、豊満な胸を押し当てるように彼に抱き着く。緊張でドクンドクンと脈打つ心臓の音が聞こえるくらい、ギューッと抱き締める。
「エル…?」
「えへへ、トレーナーさん大好き…」
上目遣いで、渾身のLOVEを伝える!さあ思いの丈はぶつけた!後は押し倒すだ…け…?
「ケ!?あの、ちょっと!?」
好みの格好、豊満な身体によるハグ、そして愛らしい囁き。トレーナーの理性は弾け飛んだ。
「待って、ちょっと、今日は逆ぴょいのつもりで……そんな、トレーナーさんダメっ、そんなっ、あっ…………
?
ケ❤」
エルコンドルパサーの賢さが20上がった!
『真っ向勝負』のヒントLvが4上がった!
エルコンドルパサーの調子は絶好調だ!
『負け癖』になってしまった……
>今から逆ぴょいを学ぼうという自分が言うのもアレだが、どうしてキングのママはこんなにも逆ぴょい信奉しているのだろうか。本人に聞こうにも面識が無い。代わりにキングに聞いてみようか。
😭
泣いてないで貴方も読みなさい
>……まあ、いいか。どうせ両想いだ。そんなことより。
他の子たちは間に合うのか
それどころか面識ないウマ娘にも大人気っぽい
寮長って妨害するのか?
寮から抜け出したり外泊許可貰うときに障害になるから
😭余計なお世話よー!!
この本のおかげでまた険悪になりそうだよ!?