「──この前さ、電車でウオッカとお出かけしたんだけど」
「へぇ。どこまで?」
「キャンプ場の下見。本当はサプライズにしたかったんだけど、ウオッカに見つかって二人で……で、その帰りにさ……寝惚けたウオッカが、肩に寄りかかって来てさ……」
「……ほうほう」
「めっちゃいい匂いがした……ドキっとした……」
「わかるよ……俺も──」
周囲に人気が余りなく、気が知れたもの同士だからこそできるおバカなノリで話す二人。だが、彼らは侮っていた。ウマ娘の聴覚の鋭さは、意識して耳を向ければ然程声が大きくなくても会話の内容は拾えてしまうのである。物陰に隠れて聞き耳を立てている担当二人に気付かず、彼らは赤裸々にお互いの近況を明かしていく。
(なる、ほど──これは、使える)
そして、さらにその背後で聞き耳を立てるウマ娘が一人。彼女こそ、年度代表ウマ娘として選ばれた実力者──シンボリクリスエスである。
(そして──My Darling)
クリスエスは己がトレーナーを信頼し、そして愛している。レースだけではなく、生涯を共にしていきたいと強く願っている。
だが、その想いを口にして伝えたことはない。
トレーナー自身は自分をどう思っているのか──トレーナーとしての立場から、そういった感情は迷惑となるのではないか。
そして日本語は難しい──己の抱く感情を、誤解なく、過不足なく伝えることはできるのか。いや──トレーナー相手にその不安は不要だろうか。
また、懸念点が解消されずに直接想いを伝えるのは対して失礼だとクリスエスは認識している。己が人生を預けてほしいという願いなのだから、それ相応の覚悟をもち、課題をクリアしてから挑むべきだと考えていた。
(だが──彼らの会話から、トレーナーという立場であってもウマ娘をtargetとして認識することは理解した)
(これで──missionに挑むことができる── )
気炎を立ち上らせ、クリスエスは校内を進む。有マ記念を制した時以上の気迫を持って、彼女はトレーナーを探す。
すれ違う生徒たちは自然と道を開ける。恋する乙女を止める術を、彼女達は知らなかった。
腕立て伏せをするトレーナーに、覆い被さるように密着するクリスエス──これが、彼女が学んだ秘策であった。
肩に寄りかかる重みで、ウオッカのトレーナーは担当を強く意識したという。であれば、より強い負荷で、より強く密着すれば──というのが、クリスエスの出した結論である。
トレーナーの鍛錬の手伝いも両立でき、隙のないtacticsだと評価値する。
(──感謝する。ウオッカのトレーナー)
そして、間近で堪能するトレーナーの体温と匂いはクリスエスに多大な多幸感を齎した。だが、missionでこのようなfeelingを覚えても良いのか──脳裏に浮かんだ小さな疑問は、しかしクリスエスを止めるには些細なもの過ぎた。
「9……97!……っ! 9……8……っ!!」
(な、なんで……いきなり……い、いや……! そうか! クリスエスは、俺がまだまだやれると、信頼して……っ!!)
トレーナーもまた、多大な負荷で腕を止めかけたが──クリスエスのことを思えば、力が湧いてくる。
目論見通りに進んだかはともかくとして──クリスエスのことを強く意識したのは、間違いのない事実であった。
(missionの達成に焦りは厳禁──次に、手を出すべきことは──)
「ねえ、聞いた? 遺伝子の匂いの話?」
「お、おぉ……あ、アレな? いい香りがどーたらーってやつ」
ぴたりと、クリスエスは足を止めて耳を声の方へと向ける。次の作戦のヒントを得るべく校内を練り歩いていた彼女は、ウオッカとスカーレットの声を拾うべく立ち止まって意識を集中させる。
「へぇ、知ってるんだ。てっきり鼻血出すかと思ったのに」
「おま、お前なぁ……そりゃアレだけ話題になれば慣れるっての」
「ふーん。で、アンタはどうだったのよ。匂いは」
「そ、そりゃ……相棒の匂いは──って何言わせ──っ!!」
突然として顔を赤くして鼻血を吹き出したウオッカ。クリスエスはハンカチを携えて駆け付けながら──次はコレだ、と確信した。
(遺伝子の相性──smell──)
(伴侶を選ぶにあたって──そのようなsuperstitionに惑わされるつもりはないが──)
クリスエスはトレーナーの匂いが好きだ。その点からすれば問題は解消されている。
だが、トレーナー側はどうだろうか。指摘されたことはないが、自身の体臭についてどう感じているのだろうか。
étiquetteについては気を遣っているが、体臭そのものについてはどうだろうか。
(検証の必要アリ──か)
もし不快に感じるような要素があれば、体臭の改善に努める必要がある。遺伝子学の知見は無いが、嗅覚で感じ取れるレベルなら食生活等で改善は可能だ。
「よし、今日のトレーニングはここまで。お疲れ様、クリスエ──んむっ!?」
速戦即決あるのみ。クリスエスはジャージのジッパーを下ろすと、トレーナーの頭を自身の胸元へと抱き寄せた。
彼の鼻先が胸元へ沈み、生暖かい吐息を少しばかりこそばゆく感じるが、不快には思わない。むしろ心地良い。
「ふ、んむっ!……く、クリスエス!? どうした!?」
「──どう、だろうか。私の、匂いは」
「へ、え……?」
「──不快ならば、教えてほしい。改善に努める」
「い、いや……べ、別にそんなことはないし……むしろ、いい匂いというか……」
「──OK,感謝する。これで課題はclearーされた──」
トレーナーとは長い付き合いで、自分もある程度はトレーナーのことを理解している。気を遣って嘘を付いているかどうかはわかる。得られた回答に上機嫌に耳を動かしながら、クリスエスはグランドを後にした。
浮かれて、トレーナーを抱きかかえたままに。
「……ウオッカ、アレ」
「お、おお……クリスエス先輩、めっちゃ大胆だな……」
「私たちも負けていられないわよ……」
「お、おお……そうだな……って何言わせんだよ!」
そして、その光景をバッチリと後輩たちに見せつけながら──
もう書いてる!
Youがwriteしろ
この書き方だとルー大柴なんだよな…
文法混ぜる感じじゃなくて、特定の単語を母国語でしっかりと確認する感じなんだと思う
勝負服姿でホーム置いてるとデッカ!腰ほっそ!ってなる
いかん…!
の方がそれっぽいんかな…
まさかうつ伏せはないだろうが…
そもそもAIを背中に乗せるとはいったい…
負荷や疲労がダイレクトに伝わるふしぎVR内の話なのでそこに関してはそう変な話ではない
ふしぎVRが変と言われたらそう
正座か胡座じゃないの
どうでも良いけど思い浮かべようと思ったらバイアリーさんじゃなくて東方不敗が出てくる
(──skin shipで、トレーナーの意識を私に向けることは成功した)
(smell──匂いの相性も問題はない)
(これで課題はclear──後は、想いを告げるのみだが──重要なのは、situationか)
スペシャルウィークから譲られたにんじんハンバーグを口にしながら、クリスエスは最後の一手を考える。
好意も、肉体の相性も問題はない。
だが、トレーナーにも立場がある。想いを告げたとて、断られてしまうかもしれない。
「キャーっ!!!」
(──?)
突然、黄色い悲鳴が食堂に響く。
思考を中断して目線をそちらに向ければ、多くの生徒たちが食堂に置かれたテレビの画面に釘付けになっていた。
『……そんなの、できるわけがないだろ……』
(あれは、soap opera──ドラマ、か)
それは生徒たちの間で話題となっているドラマの一場面。立場で隔たれた許されない禁断の恋──そんなキャッチフレーズが有名なドラマのワンシーンだ。どうやら昼の時間帯で再放送されているらしい。
「はぁ……ロマンチックね……」
「駆け落ちってすげーよな……」
ウオッカとスカーレットも生徒たちに混ざって画面に釘付けとなっている。
(成る程──HONNEとTATEMAEというやつか)
クリスエスは確信した。小細工は不要だ、と。
ちょうどタイミング良く食堂に現れたトレーナー。これこそがDestinyだと、背中を押されているのだと、クリスエスは受け取った。
「──トレーナー」
「? どうし──がっ!?」
口元をナプキンで拭い、水を飲み干して口内をリフレッシュすると、クリスエスはトレーナーを押し倒した。
あまりにも自然な動きにトレーナーはなすがままである。
周りのウマ娘たちも、トレーナーの悲鳴でやっとそちらに目線を向けた。
「──嫌なら、跳ね除けて欲しい。拒絶は、力で示せ──」
反射的にトレーナーが突き出した手を、クリスエスは迎えて絡め取る。指の一つ一つを丁寧に、愛おしむように。
「で、出来るわけないだろ……!」
(嗚呼──あの、ワンシーンと同じセリフ──)
繋いだ手からクリスエスに伝わる力は非常に弱い。やはり、トレーナーも自分と同じ気持ちだったのだ。何も遠慮することなどないのだ。HONNEとTATEMAEの壁は今、乗り越えられたのだと、クリスエスは心から理解した。
「──トレーナー。あなたを、愛している──」
「いや、ちょ、んむぅぅぅっ!?」
唇を重ね、こじ開け、たっぷり味わい、蹂躙する。
それは奇しくも背後で映るドラマのワンシーンと良く似たシルエットで──今この瞬間、クリスエスの気持ちは確かに伝わった──
「……そうだな。腹、くくるか……」
──そしてこの日を境に学園中で多くのウマ娘とトレーナーが結ばれ、後に『革命の日』と呼ばれることになるのだが、それはまた別の話である。
>「──嫌なら、跳ね除けて欲しい。拒絶は、力で示せ──」
「で、出来るわけないだろ……!」
日本語って難しい
HONNEとTATEMAEだぞ
なんで俺はこれをHENTAIに空目したんだろう
あの...トレーナーの気持ちは...
嫌なら跳ね除けろって言ったのにそれをdid notだったわけだが
can notじゃねーか
掛かり!
腹括った後はウオッカの方が進展早そう
まあ相棒の胃袋掴めそうだしなウオッカは
胃袋をgrab…?
なるほど――stomach catch――
キング母もそうだそうだと言っています
😭