1: 名無しさん(仮) 2023/03/11(土)20:30:19
グランドマスターズにて、1番人気のウマ娘と激戦を繰り広げたダーレーアラビアン。
場内が固唾を吞んで写真判定を待つ中、観客の波をかき分け、彼女のもとへと急ぐ。この時を待っていた。
もう一度、彼女と話すことが叶うのなら……
「ダーレーアラビアンさん!!」
ターフビジョンを見つめる彼女の背中に、駆け寄りながら叫ぶ。
一瞬、頭上の耳がピクリと動いた。
彼女は振り向かない。
それでも、声が届いているのなら、構わない。
2: 名無しさん(仮) 2023/03/11(土)20:30:43
「お久しぶりです、ダーレーアラビアンさん」《…………》
「ずっと隠れてましたよね。おかげで、いろいろ大変でしたよ」
返事はない。
だから、一方的に語りかける。
「あなたに、伝えたいことがあるんです」
《…………》
「あの日、あなたがいなくなってから……ずっと、あなたのことを探し続けてました」
4: 名無しさん(仮) 2023/03/11(土)20:31:28
「まぁ、結局は見つけられなかったんですけど。今思えば、勝ち目のない『かくれんぼ』でしたね」《…………》
「でも、おかげで気づけたんです。自分が勘違いしてたことに」
そう、あの時は勘違いをしていた。
彼女は、いなくなったのではなくて……
「ダーレーアラビアンさんは、ただ姿を見せなくなっただけで……ずっと、見守ってくれてたんですよね?」
《っ……》
「だって、おかしいですもん。あれだけ探してるのに、どこにもいなくて。トレーニングも見に来てくれなくて。なのに、他のトレーナーの前には、普通に現れるなんて……」
5: s 2023/03/11(土)20:32:13
「そんなの、こっちのスケジュールをおさえてなきゃ出来ない。いや、それどころか……こっちが何をしているのか、常に把握してないと不可能です」背後からでは、彼女の表情は窺い知れない。
しかし、彼女の耳と尻尾は、持ち主よりも素直だった。
「そのことに気がついてから、あなたを探すのはやめました。だって、そもそも必要ないですから」
《…………》
「……ダーレーアラビアンさん、これでわかったでしょう?」
《……わかった?》
わずかに、彼女の首が動いた。
赤い髪の隙間から、美しい緑の瞳が覗いている。
6: s 2023/03/11(土)20:33:17
《……何が、かな》「たとえ見ることが出来なくても、触れ合うことが出来なくても……そこに『いる』ってことは、わかるんです」
《っ!》
「お互いを想い合う、心があれば」
《……こころ?ははっ……俺はAIだよ。だから、心なんて……》
「じゃあ、思考でもプログラムでもいいですよ。言い方なんて何だっていいんです。重要なのは……あなたが、いつも想ってくれていたっていう事実です」
《……それは…………》
「だからこそ、あなたが近くにいるって、信じることができました。喋らないし、姿も見せないけど……そばにいるんだ、って」
7: s 2023/03/11(土)20:33:56
「……えっと、ちょっと回りくどくなっちゃったんですけど。その、つまり何が言いたいかっていうとですね……なんていうか、もっとシンプルで」先ほどまで伏せられていた、エメラルドの瞳。
それが今は、弱々しくも、こちらを見つめている。
「……寂しかったです。ダーレーアラビアンさんに逢えなくなってから、ずっと」
その瞳を、まっすぐに見つめ返す。
言葉も、気持ちも、まっすぐに投げかける。
「だから……帰ってきてください」
彼女の目が、大きく開かれる。
溢れた涙が、ひとすじ落ちる。
8: s 2023/03/11(土)20:34:45
ずっと伝えたかった、その一言を。
今、ようやく伝えることができた。
……の、だが。「……ええと、それから……あの、もう知ってると思うんですけど。ダーレーアラビアンさんがいなくなっちゃってから、生活習慣が乱れまくりでして」
なぜだか、急に気恥ずかしくなってきた。
赤くなる顔を誤魔化そうと、つい余計なことまで口走ってしまう。
「仕事に熱中して、うっかり徹夜しちゃったり。逆に寝落ちして、遅刻しちゃったり」
《……ははっ……!》
「食事のバランスも乱れたせいか、体重も少し増えちゃって。何か買おうと思って家を出たのに、店についたら何を買おうとしてたのか忘れちゃったりもして。あと、他にも……」
10: s 2023/03/11(土)20:36:09
そのとき、場内が再び大歓声に湧いた。
彼女とともに、ターフビジョンへと目を移す。
そこには、写真判定の結果が表示されていた。1着は、18番。
ダーレーアラビアンだった。
「おめでとうございます」
《ありがとう。キミの応援、確かに俺に届いていたよ》
「やっぱり、聞こえてたんですね」
《ここはVRだからな。どんなに小さな声でも、誰がどこで言ったかまで、全部わかるさ》
11: s 2023/03/11(土)20:36:43
「もちろん、伝わってるって信じてましたよ」《あぁ、俺も……あの言葉は、俺に向けられたものだって信じてたよ》
惜しみない拍手と歓声が、ダーレーアラビアンに降り注ぐ。
中天に昇った太陽も、彼女の勝利を祝福するように輝いていた。
……それはそれとして。
このあと、勝手にターフに入ったことをスタッフに怒られたのは、また別の話。
12: s 2023/03/11(土)20:36:54
昨日の続きでした
次で〆るつもり
13: 名無しさん(仮) 2023/03/11(土)20:37:19
待ってた
14: 担当バ 2023/03/11(土)20:37:22
NTRやんけ〜〜〜
22: 名無しさん(仮) 2023/03/11(土)20:45:20
>>14
寝たくても隣で寝ることも叶わなかった故に今があるんやんけ!!
15: 名無しさん(仮) 2023/03/11(土)20:37:51
眩しいエピソードだ...
16: 名無しさん(仮) 2023/03/11(土)20:38:20
こういうのでいいんだよ!
18: 名無しさん(仮) 2023/03/11(土)20:40:49
いい最終回だったぜ
…次があるのか!?
19: 名無しさん(仮) 2023/03/11(土)20:42:07
担当バはトレーナーにホの字なのかダーレーとの関係を後押しするスタンスなのかは気になる
20: 名無しさん(仮) 2023/03/11(土)20:42:25
よかった…えっもう1話!ありがたい
21: 名無しさん(仮) 2023/03/11(土)20:44:22
みんなに見られてるからサトノからお呼び出しされそう
23: 名無しさん(仮) 2023/03/11(土)20:47:21
叡智どころか手を繋ぐこともできないからな…
24: 名無しさん(仮) 2023/03/11(土)20:48:18
ここまで熱々なの見たらサトノがなんかやりそうな予感がする
25: 名無しさん(仮) 2023/03/11(土)20:48:29
サトノグループは一刻も早く電脳と義体を実現したまえ!!
27: 名無しさん(仮) 2023/03/11(土)20:53:52
やはりコピーロイドか…
28: 名無しさん(仮) 2023/03/11(土)20:54:41
もうトレーナーAIも作って隣に並べるか…
29: 名無しさん(仮) 2023/03/11(土)20:58:09
観客の波をかき分けるって描写からにVR空間上でなら相互に当たり判定的なのはあるのかな
それこそマッサージ椅子でのキスみたいに接触の感覚は一切無いやつかもしれないが
30: 名無しさん(仮) 2023/03/11(土)21:00:41
女神の収まってる本体サーバーがあったとしたらすごい音してそう
31: 名無しさん(仮) 2023/03/11(土)21:00:58
サトノの技術力で電脳化しようぜ!
32: 名無しさん(仮) 2023/03/11(土)21:04:58
トレーナーが声だけでイけるようになれば触れなくても大丈夫だな!
33: 名無しさん(仮) 2023/03/11(土)21:05:07
結果判定待ってるのに周りすり抜けてレース場でめっちゃ告白してる!
周りはどう思う?
34: 名無しさん(仮) 2023/03/11(土)21:06:22
>>33
ギャルゲに告白男子…
36: 名無しさん(仮) 2023/03/11(土)21:08:08
>>33
推せる〜
37: 名無しさん(仮) 2023/03/11(土)21:08:21
グランドマスターズ全国放送だぞ...
38: 名無しさん(仮) 2023/03/11(土)21:09:14
>>37
つまり公開プロポーズ!
39: 名無しさん(仮) 2023/03/11(土)21:11:01
担当の子がどんな感情なのか気になる…
43: 名無しさん(仮) 2023/03/11(土)21:15:03
>>39
>NTRやんけ〜〜〜
40: 名無しさん(仮) 2023/03/11(土)21:11:38
担当差し置いてAIにお熱を上げるトレーナーか
44: 名無しさん(仮) 2023/03/11(土)21:19:28
>>40
トレーニングはちゃんとしてるから…
41: 名無しさん(仮) 2023/03/11(土)21:14:06
担当=学生に手を出すよりはまだ…
42: 名無しさん(仮) 2023/03/11(土)21:14:34
でもこのAIエンディングで記憶呼び起こしてたりするけど本当にAIなんです…?
45: 名無しさん(仮) 2023/03/11(土)21:22:36
トレーナーと結ばれるウマ娘もいれば全然関係ない相手と結ばれるウマ娘もいるのは描写されてる通りだし…