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2024.10.01-08:01:41

ウマ娘怪文書

【ウマ娘怪文書】私が彼を必要としているのは、私のワガママだ。トレーナーは私のことを常にサポートしていてくれる。私が家業の手伝いと並行してレースも本気なのを、あなたは応援してくれる。

 コメント (0)

1: 名無しさん(仮) 2024/05/30(木)20:48:04
私が彼を必要としているのは、私のワガママだ。
トレーナーは私のことを常にサポートしていてくれる。私が家業の手伝いと並行してレースも本気なのを、あなたは応援してくれる。そのためにトレーニングだって最適なものを組んでくれる。
レースだけじゃない、アイディアが浮かべばさっとメモ帳を渡してくれるし、私がミスをしてもいいようサブプランを考えていてくれる。
それにルックスも好み。背丈も好き。頼れるのにどこかおっちょこちょいなところも可愛くて好き。誠実なところも好き。私一筋なところも大好き。ファッションセンスはまあ、私がコーディネートしてあげればいいわ。
锦上添花、あなたが居れば私はもっと高く跳べる、もっと速く走れる。でもそれって、私にしかメリットがない。あなたには何の得もない。あなたに与えられるものが、私にはない。
1717069684821
2: 名無しさん(仮) 2024/05/30(木)20:48:23
せめて、私のルックスが好みだとか、私のことが好きだとか、そういう私と組む利点があなたにもあればよかった。
双方どちらにもメリットがなければ関係は必ず破綻する。私がビジネスで大切にしていること。
悩ましげに片方の胸を持ち上げてみて、溜息を吐いた。ダイヤくらいあればなぁ。
I know...もし二人が両思いだったら、そんな夢のような現実があれば、今頃こんなうじうじ悩む関係じゃないわよね。
3: 名無しさん(仮) 2024/05/30(木)20:48:42
ふとした拍子に、どうしても考えてしまう。悪い夢。彼はそんな人じゃないと信じてるのに、ネガティブな妄想が止まらない。
『トレーナー、私のことどう思ってる?』
『どうって、教え子としか思ってないよ』
気丈に振る舞って、ショックを顔に隠さないようにする私。もし一歩踏み出した時、彼にこうやって拒絶されたらと思うと、足がすくむ。
『子供は嫌いなんだよね、面倒で』
頑張って大人になるから。私、もっとしっかりするから。
雨音が声をかき消した。気がつけば私は、トリップに浸りながら学園の廊下を歩いていた。嫌な感触の汗が背中を伝う。
4: 名無しさん(仮) 2024/05/30(木)20:49:32
息苦しい。レース直後のような、体に酸素が足りていない時の息苦しさではなく、吸った息がうまく吐き出せないような。
過呼吸というやつなのかもしれない。映画かなにかの見様見真似で、手で口の周りの空間を閉じ込め、そこで呼吸をしてみる。
確か過呼吸の人をビニール袋か何かに息をさせて治してたような……。
私がそうやって苦しそうに座り込んでいるのを見た彼が、青ざめた顔でこちらを見ている。
駆け寄ってくれるんだ……私がどんなに求めてもしてくれなかったくせに。後は覚えているのは、背中と足を抱かれ、彼に運ばれるところまで。
5: 名無しさん(仮) 2024/05/30(木)20:49:59
保健室より近いということでトレーナー室内の仮眠室に運ばれた私は、うつ伏せに寝かされていた。
私はどうやら、よろめきながら自然とトレーナー室に向かっていて、その最中の廊下に座り込んでいたようだった。
「それと、ドラマなんかの真似をして自分の吐いた息を吸うのは危ないからやめようね。こうやってうつ伏せで腹式呼吸をすると10分くらいで回復するから」
「……ありがと」
傍らに座る彼の顔を見ることが出来ない。彼にしっかりしたパートナーだと思ってもらいたかったのに、今の私はただの手のかかる子供。
「…で、過呼吸ってのは激しい運動や強いストレスなんかで起きやすいんだけど、悩みとかがあるなら相談して欲しい」
あなたのことを想って恋煩いしてたなんて、あなたに言えるわけがなかった。
6: 名無しさん(仮) 2024/05/30(木)20:50:18
「また香港に行こうと思うの。今度は前より長く」
嘘じゃない。香港に行ってトレーニングをすることを考えていたのは本当。真実の話に、あなたのことを含まないという嘘をちょっぴり混ぜただけ。
「話すのが遅くなってごめんなさい。私も……行くかどうか結構悩んだの」
だって、もし行くとなってあなたも一緒じゃないなら、このままここであなたと過ごしたいと思ってしまったから。
過呼吸はとっくに治ったのに、こうしてあなたと話しているとドキドキが止まらない。『じゃあお別れだね』なんて言われたら、破裂してしまうかも。
「じゃあ……僕も一緒に連れて行ってくれないかな……ダメじゃなきゃ」
私の左手をそっと握る彼の手は、温かくそして震えていた。
7: 名無しさん(仮) 2024/05/30(木)20:50:40
「今、なんて?」
「あっいやその……香港にまた連れて行って欲しい」
握った手は離さずに、彼は照れくさそうに頭をかいた。
「無問題。けど……いいの?」
かつてのときとは違う、私からの質問。私にあなたへ与えられるメリットが、思いつかないから。
「行きたいに決まってるじゃないか!君が嫌じゃないなら、これからもずっと!クラウンの手助けをしたいんだよ」
ぎゅっと握られた手から、想いが熱として伝わってくる。ああ、なんだ。悩んでいるのは私だけじゃなかったんだ。
8: 名無しさん(仮) 2024/05/30(木)20:50:56
途端に、ふつふつと沸いてくる意地悪な心。あなたの口から言わせたくなってしまった。
「I See.一つ確認させて、あなたは、私のこと……どう思っているの?」
「好きだよ」
いきなり殴りつけられた気分だった。言わせたいとは思ったけど、そう素直に言うことはないじゃない。
「好きに決まってるじゃないか。じゃなきゃこんな申し出なんかしないよ。僕は君のためなら何だってしてあげられるんだから」
「ほ、本当?」
いけないわ、口元の緩みを隠さないと。私は唇をきゅっと結びながら、仰向けのまま体を少し起こして、彼の手を握ったまま傍らに座る彼を見上げる。彼の目はまっすぐとこちらを見つめていた。
9: 名無しさん(仮) 2024/05/30(木)20:51:16
「こういう商談の場では何でも安請け合いしない方がいいのよ!何だってしてあげられるとか言うなら、こうしちゃうんだから!」
焦ってよくわからないことを口走りながら、私は彼の右手を両の手で強く握った。
「全然いいよ、好きに握っちゃって」
まったく気にしてないような素っ頓狂な顔で、彼はこちらにはにかむ。
「じゃあこんなこともしちゃうんだから!」
負けじと私も、彼の腕を引きベッドに引き倒す。彼は私に体重をかけないようベッドに手をつきながら、私に覆いかぶさる形になった。
「こんなんでいいの?」
10: 名無しさん(仮) 2024/05/30(木)20:51:33
「好!言ってくれるじゃない。負けないわよ!」
何故か楽しくなってきた私達は、キャッキャと笑いながらベッドの上でじゃれあった。なんだか最近悩んでばかりで、こんな風に彼と笑いあったのは久しぶりかもしれない。
彼の体を回して体勢を入れ替え、私が上に重なるように乗ると、突然彼は目を逸らしながら顔を赤くした。
「あら、どうしたの?降参かしら?」
「あ…あの…クラウン…」
彼は気まずそうに、目を逸らしながらたどたどしく口を開く。
「当たってるから……」
視線を下ろせば、私の胸が彼の胸板にぎゅっと乗っていた。彼は私の体を意識して、恥じている。私は勝利のような多幸感に包まれた。
11: オワリ 2024/05/30(木)20:51:59
「うふふ、ダメよ。辞めない。さっき約束したわ」
「いや…流石にまずいかも」
彼の言葉を遮るように、顔を近づけると胸が潰れて変形し、その感触に彼は妙なうめき声を出しながら押し黙った。
「だってこれは、双方にメリットがあるって、わかっちゃったもの」
私の言葉に困惑するようにこちらを向き直った彼の唇に、思わずキスをしてしまう。反射的な勢い任せのキスだったが、10秒続けばそれは夢見心地なものに代わり、20秒続けば最早必然だった。
もし、彼が本当に嫌ならもっと拒絶しているはずで、それでも私の手を握って押し返そうとしている彼の抵抗はまったくもって弱々しく、もっとしてほしいと語るに等しいものだからだ。
光る筋を橋のようにかけながら二人の唇が離れると、トレーナーは小さく私の名を呟いた。
悩むことなんかなかった。私と同じくらい、彼も私のことが好きだったんだから。これからは、もっと……。
「我爱你一生一世」
お返しに私も彼の耳元で呟く。意味がわかる頃にはもう遅いかもね。
42: 名無しさん(仮) 2024/05/30(木)21:05:42
>>11
>「我爱你一生一世」
お返しに私も彼の耳元で呟く。意味がわかる頃にはもう遅いかもね。

ここ好き
12: 名無しさん(仮) 2024/05/30(木)20:53:25
オ…オワッた…
13: 名無しさん(仮) 2024/05/30(木)20:54:07
いい…
21: 名無しさん(仮) 2024/05/30(木)20:56:26
(担当として)好きだよ
24: 名無しさん(仮) 2024/05/30(木)20:57:05
クラちゃんは悩み多いよね表に出さないけど
25: 名無しさん(仮) 2024/05/30(木)20:57:32
今更逃れようとするフリをしてももう遅い
27: 名無しさん(仮) 2024/05/30(木)20:58:07
>>25
フリかな?
割と本当に逃れようとしてなかったかな
ウマ娘基準で全然弱いだけで
26: 名無しさん(仮) 2024/05/30(木)20:57:40
トレーナーとしてはめちゃくちゃクラウンから貰うもの貰ってるのに自分は何も上げられなくて公平じゃないって思っちゃうんだ
28: 名無しさん(仮) 2024/05/30(木)20:58:19
普段中等部と思えない完璧さだけど思い詰めるところはまだ学生だなあってなるよね
うおっアクセル踏みすぎ…
29: 名無しさん(仮) 2024/05/30(木)20:58:37
>>28
私頑張って大人になるから…
31: 名無しさん(仮) 2024/05/30(木)20:59:04
あんなに大人びててもクラちゃんも子供なんだよな…
いや一気に進めすぎだろ!
35: 名無しさん(仮) 2024/05/30(木)21:01:28
仮眠室が登場したからハッピーエンドを確信して安心して読んだ
37: 名無しさん(仮) 2024/05/30(木)21:02:58
これがダイヤ並にあればトレーナーを喜ばせるのに活用できたのになあ……
え?私のでも顔赤くなってるの?ふーん…
38: 名無しさん(仮) 2024/05/30(木)21:03:41
クラちゃん悩むほど小さくないだろ!
ダイヤちゃんがデカすぎるのはそう
43: 名無しさん(仮) 2024/05/30(木)21:06:09
過呼吸でビニール袋使うのダメなんだ…

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